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第十九章 領主様は悪役令嬢!?
109本目
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「一体この騒ぎは何なの!? こんな騒ぎを起こすあなた達は誰!?」
門前の我々によく通る綺麗な声が投げ掛けられた。声の方を向くとそこには美しい緑の髪と同じ色の瞳を持つ少女がいた。おそらく彼女が新たにこの地を治める領主となったアーリャ様だろう。彼女の周りには護衛と思わしき人間もいる……ん、なんで男の子が二人いるんだ?
「あの娘が領主だ」「本当に子供が!?」「嘘じゃ無かったんだな」
村人達が次々と貴族に対して無礼な口の利き方をしている。たしかに村に住んでいるなら身分の高い貴族様と会話する機会は無いだろう。きっと彼等には口の利き方ひとつで自分の命が無くなるなんて夢にも思っていないだろう。ああ、どうか事前に言われていたとおり今回の騒動に関しての村人の態度が不問になるという約束が守られますように。
「あの小娘のせいで前の領主様がいなくなって俺達が苦しむはめになったんだ」
先導していた若者が無礼を重ねるようにアーリャ様を指さした。
「あの小娘のせいで!!」「私の子供が病気で苦しんでいるのもあの娘のせい!?」「子供が領主なんて出来るはず無い!!」
村人達は若者に続くように騒ぎ立てている。
「お黙りなさい!! 前領主は王国に牙を剥いたのです……そして領主の役割を放棄して隣国へ亡命しました」
「ぼ、ぼうめい? って何だ?」「難しい事言って誤魔化そうとしてるだろ」「子供のくせに!!」
「俺達は王国の事なんて話してない、お前が前領主を追い出したから俺達がひもじい思いをしているんだ!!」
私は頭を抱えたくなった。アーリャ様の言っている意味を村人達は理解していない。今この場にいるのは村が滅ぼされた時に働きに出る前の子供だった者達だ。村の仕事を覚えながら村の外の勉強も少しずつしていくはずだった……しかし彼等にはその機会が与えられなかった。
そんな彼等を誰が責められようか……しかし本来なら貴族様方はそんな事情などは察しもせずに我らを処断する事も出来るはずだ。だのにアーリャ様はそれをせずにチャンスを与えてくれている。私は何としても村人が無事に生き残れるよう導かなくては。
「本当だ、前領主様は我々を守る役割を捨てて隣の国に逃げてしまった」
「村長!? 本当なのか?」「話が違うじゃないの」「え? つまりはどういう事だ?」
「騙されているんだ!! 村長は新領主に騙されているんだ!!」
「そうだ! 新領主が前の領主様を追い出そうと悪さをしたんだ、だから俺達の生活が悪くなったんだ!!」
先導している若者が大きな声で私の言葉を否定する。どうにも言葉で人を誘導するのが得意なようだ。
「生活が悪くなったと言いますが、着任してから難民に対する配給量は大幅に上がっているはずです。以前がどうかは置いておいてそれでもわたしが責められるいわれがあるんですか?」
「そうなのか?」「そうだっけ?」「お肉が増えた気はするけど足りないわよ」
その様子を見たアーリャ様はため息をつきながら……
「そもそもわたしの用意している食料を食べておきながらその相手に文句を言うのっておかしいでしょう?」
「「「「「うぐっ」」」」」
……わかりやすい言い返しに村人達は言葉を失ってしまった。
このまま大人しく事が収まれば……
「口車に乗るな!! 俺達を助ける気があるのならどうして門の……街の中に入れてくれないんだ!!」
「そ、そうだな」「そうだ!! 俺達を待ちに入れろ!!」「もう魔物に怯える生活は嫌よ!!」
「今あなた達全員を受け入れる準備は出来ていません。前領主は何もしていませんでしたので今わたしは急いでそれをしているところです。いま街の中に入ったところで住む場所も働き口も何もないのですよ!?」
「誤魔化すな!! そんな事口ではなんとも言える。そう言いながらお前は俺達よりも美味いものを沢山食べているんだろう!!」
「そうだ!! ずるいぞ!!」「私達にもパンを寄越しなさい!!」「そんな綺麗な服を着て贅沢しやがって!!」
いかん、村人達の声の量が上がり今にもアーリャ様に向かわんとする勢いだ。
「子供の領主なんて信用出来るか!!」「子供は家に帰れ!!」「俺達はご立派な約束事よりも食べ物が……パンが必要なんだ!!」「私達のパンをちょうだいよ!!」
「こらお前達!! 領主様に向かってなんたる無礼な!!」
アーリャ様の側にいた側近らしき男が声を上げる。だが感情に火の付いた村人達は勢いを緩めない。
「お黙りなさい!!」
緑色の鳥の羽のような扇を広げるとアーリャ様は声を張った。不思議とその声はよく通って皆も声を止めたようだ。
「物事の順序が分からない方達だこと……わたしが行っている事は全てあなた達領民が飢えないようにするために必要な事なのにそれも分からないなんて」
「なんだと!!」「子供が偉そうに!!」「私達は今食べ物が必要なのよ!!」「そうだ、食い物を寄越せ!!」「パンを寄越せ!!」
一度収まった声もアーリャ様の挑発するような物言いに再び再燃する。
「食べ物だパンだの騒がしいですね……パンが無ければお菓子を食べれば良いじゃないですか」
「「「「「んなっ!?」」」」」
「わたしは逃げも隠れもしないわ……さぁ、付いていらっしゃい」
アーリャ様は村人達を挑発すると門の中へ入っていった。その門はアーリャ様が通った後にゆっくりと開いていった。
「よし、あの生意気な子供の領主に思い知らせてやれ!!」
「「「「「おおおーーーーーーーっっっ!!」」」」」
先頭に立っていた若者に先導されて村人達はその門を潜り屋敷の中へなだれ込んでいく。こうなってはわたしに止める事は出来ない……一体どうなってしまうのだろう?
……しかし、その心配も屋敷の広場の光景を見て霧散してしまった。
門前の我々によく通る綺麗な声が投げ掛けられた。声の方を向くとそこには美しい緑の髪と同じ色の瞳を持つ少女がいた。おそらく彼女が新たにこの地を治める領主となったアーリャ様だろう。彼女の周りには護衛と思わしき人間もいる……ん、なんで男の子が二人いるんだ?
「あの娘が領主だ」「本当に子供が!?」「嘘じゃ無かったんだな」
村人達が次々と貴族に対して無礼な口の利き方をしている。たしかに村に住んでいるなら身分の高い貴族様と会話する機会は無いだろう。きっと彼等には口の利き方ひとつで自分の命が無くなるなんて夢にも思っていないだろう。ああ、どうか事前に言われていたとおり今回の騒動に関しての村人の態度が不問になるという約束が守られますように。
「あの小娘のせいで前の領主様がいなくなって俺達が苦しむはめになったんだ」
先導していた若者が無礼を重ねるようにアーリャ様を指さした。
「あの小娘のせいで!!」「私の子供が病気で苦しんでいるのもあの娘のせい!?」「子供が領主なんて出来るはず無い!!」
村人達は若者に続くように騒ぎ立てている。
「お黙りなさい!! 前領主は王国に牙を剥いたのです……そして領主の役割を放棄して隣国へ亡命しました」
「ぼ、ぼうめい? って何だ?」「難しい事言って誤魔化そうとしてるだろ」「子供のくせに!!」
「俺達は王国の事なんて話してない、お前が前領主を追い出したから俺達がひもじい思いをしているんだ!!」
私は頭を抱えたくなった。アーリャ様の言っている意味を村人達は理解していない。今この場にいるのは村が滅ぼされた時に働きに出る前の子供だった者達だ。村の仕事を覚えながら村の外の勉強も少しずつしていくはずだった……しかし彼等にはその機会が与えられなかった。
そんな彼等を誰が責められようか……しかし本来なら貴族様方はそんな事情などは察しもせずに我らを処断する事も出来るはずだ。だのにアーリャ様はそれをせずにチャンスを与えてくれている。私は何としても村人が無事に生き残れるよう導かなくては。
「本当だ、前領主様は我々を守る役割を捨てて隣の国に逃げてしまった」
「村長!? 本当なのか?」「話が違うじゃないの」「え? つまりはどういう事だ?」
「騙されているんだ!! 村長は新領主に騙されているんだ!!」
「そうだ! 新領主が前の領主様を追い出そうと悪さをしたんだ、だから俺達の生活が悪くなったんだ!!」
先導している若者が大きな声で私の言葉を否定する。どうにも言葉で人を誘導するのが得意なようだ。
「生活が悪くなったと言いますが、着任してから難民に対する配給量は大幅に上がっているはずです。以前がどうかは置いておいてそれでもわたしが責められるいわれがあるんですか?」
「そうなのか?」「そうだっけ?」「お肉が増えた気はするけど足りないわよ」
その様子を見たアーリャ様はため息をつきながら……
「そもそもわたしの用意している食料を食べておきながらその相手に文句を言うのっておかしいでしょう?」
「「「「「うぐっ」」」」」
……わかりやすい言い返しに村人達は言葉を失ってしまった。
このまま大人しく事が収まれば……
「口車に乗るな!! 俺達を助ける気があるのならどうして門の……街の中に入れてくれないんだ!!」
「そ、そうだな」「そうだ!! 俺達を待ちに入れろ!!」「もう魔物に怯える生活は嫌よ!!」
「今あなた達全員を受け入れる準備は出来ていません。前領主は何もしていませんでしたので今わたしは急いでそれをしているところです。いま街の中に入ったところで住む場所も働き口も何もないのですよ!?」
「誤魔化すな!! そんな事口ではなんとも言える。そう言いながらお前は俺達よりも美味いものを沢山食べているんだろう!!」
「そうだ!! ずるいぞ!!」「私達にもパンを寄越しなさい!!」「そんな綺麗な服を着て贅沢しやがって!!」
いかん、村人達の声の量が上がり今にもアーリャ様に向かわんとする勢いだ。
「子供の領主なんて信用出来るか!!」「子供は家に帰れ!!」「俺達はご立派な約束事よりも食べ物が……パンが必要なんだ!!」「私達のパンをちょうだいよ!!」
「こらお前達!! 領主様に向かってなんたる無礼な!!」
アーリャ様の側にいた側近らしき男が声を上げる。だが感情に火の付いた村人達は勢いを緩めない。
「お黙りなさい!!」
緑色の鳥の羽のような扇を広げるとアーリャ様は声を張った。不思議とその声はよく通って皆も声を止めたようだ。
「物事の順序が分からない方達だこと……わたしが行っている事は全てあなた達領民が飢えないようにするために必要な事なのにそれも分からないなんて」
「なんだと!!」「子供が偉そうに!!」「私達は今食べ物が必要なのよ!!」「そうだ、食い物を寄越せ!!」「パンを寄越せ!!」
一度収まった声もアーリャ様の挑発するような物言いに再び再燃する。
「食べ物だパンだの騒がしいですね……パンが無ければお菓子を食べれば良いじゃないですか」
「「「「「んなっ!?」」」」」
「わたしは逃げも隠れもしないわ……さぁ、付いていらっしゃい」
アーリャ様は村人達を挑発すると門の中へ入っていった。その門はアーリャ様が通った後にゆっくりと開いていった。
「よし、あの生意気な子供の領主に思い知らせてやれ!!」
「「「「「おおおーーーーーーーっっっ!!」」」」」
先頭に立っていた若者に先導されて村人達はその門を潜り屋敷の中へなだれ込んでいく。こうなってはわたしに止める事は出来ない……一体どうなってしまうのだろう?
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