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第十章 謎の手紙

39本目

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「お嬢宛てに手紙が届いていますよ」

「え、手紙?」

 今日も日課の『光合成』をしている時にマリナが一枚の封筒を渡してきた。

 この世界ではわたしの作った紙はもちろん、たとえ質の悪い紙も高級品。手紙を……しかも封筒で送るような人は裕福な人と決まっている。
 そしてこの世界には郵便局なんてないから手紙は自分で届ける、人に頼んで届けてもらう訳なんだけど、余所の街へ手紙を届けるなら行商人にお願いしたり、緊急なら冒険者に頼んだりとさまざまな方法になる。

「差出人は書かれていないね」

 前世のように表が宛名と住所で裏に差出人のようにルールが決まっているわけでは無いんだけど、届いた封筒にはわたし宛とだけ書かれていた。

 今日はドランもケニーも冒険者ギルドの依頼のためここには来ていない。とりあえず周りを気にする必要が無いのでそのまま封筒を開いて手紙を読んでみる。

「……え?」

 手紙の内容はわたしに直接会って話をしたいという事と、日時と場所の指定……そして差出人に『あなたと同じ転生者』と書かれていた。

 他の転生者がいる可能性を考えないわけでは無かった。

 わたしにまーくんがいるんだから他にも転生した人がいたっておかしくないし、それにわたしはちょっと……あ、ちょっとじゃないね、だいぶ派手に動いていると思う。
 同じ転生者から見ればすぐにその存在を見つける事が出来るだろう……それが目的なんだけど、見つけて欲しい人に見つけて貰えず、名を名乗らない転生者に見つけて貰っても嬉しくないよ。

「友好的な人なら詳しく前世の情報を一緒に書けば良いのに、そうしないってことは後ろめたい事でもあるのかも?」

 もちろん、相手わたしが転生者じゃないかも知れないから詳しく書かなかったって線もあるけど、わたしの派手な動きを見てそんな考えはないかな? 何より場所の指定が人気なのない場所と来てるし。

 まいったよ~同じ転生者が見つかった事を素直に喜ぶよりも警戒しちゃってる。わたしってこんなに疑り深い性格だったっけ? それはともかくどうするべきか?

「でも答えは決めているんだ……会わないって選択肢はないよ」

 手紙の出し方からあまり友好的な印象を感じないけど、向こうはこちらを知っているのにわたしは相手の事を知らないのは怖い気がする……もしも放っておいて変な事になっても嫌だしね。

 問題はどうやって会うかだよね?

 一人で会うのが怖いから誰かを連れて行くにしても転生の話を聞かれたくはないし。もしも相手が実は友好的に接しようとした場合に誰かを連れて行くといらぬ警戒を与えるかもだし……最悪はウーちゃんもいるから何とか出来るけど、そうすると今度は手加減が出来ないし。

「ま、いっか、いつもみたいにドランとケニーを連れていこう」

 人に知られたくないからギルドは通さないで二人に来て貰おう。理由を話さなくても二人は付いてきてくれると思うし。

 そうと決まればやれる事をやっておかなくちゃ。わたしはマリナを呼び出すと、いくつかの用事をお願いした。


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 数日後、わたし達は馬車で郊外農業エリアの小麦倉庫の前までやって来た。少し離れた場所に馬車が一台止まっている。わたしは倉庫を確認すると、マリナ達を馬車に待機させて中に入っていった……相手はわたし一人で来るように指定しているからだ。

 半分空いていた大きな扉を潜って倉庫に入ると、中はがらんとしている……普段使われていなかったのか埃っぽい匂いが鼻をついた。しばらく進むと倉庫の奥に30歳くらいの男性、10歳くらいの女の子が立っていた。

「ようこそお越し下さいましたアーリャさん」

 男性がわたしの姿を見ると笑顔で挨拶をしてきた……女の子も笑顔でこちらを見ている。

「こんにちわ、名無しさん……一人でというお話では無かったんですか?」

「これは、失礼しました。私はあなたのお父上と同じ商人のバロウと申します。こちらが娘のキャレルです。娘も子供でなので問題ないと思いました……そして娘には

「キャレルです」

「……そうですか。時間もありませんし、いったいどういうご用件なんですか?」

「おや、大分警戒をされていらっしゃいますね」

 意外そうな顔でこちらを見てくる。

「それはご自身で分かっているのでは?」

「これは手厳しい……何分私と同じ立場なのか確証が持てなかったので、このような方法になってしまったのは申し訳無いです」



 ……それじゃ相手は一体何が目的なのか確認してみましょうか?
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