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遊撃隊編
遭遇 01
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設定された時間になったためアラームが起動した。目を覚まして身体を起こすと、そこはまだ慣れない『ウェヌスⅣ』内に割り振られた俺の部屋で……ベッドの端で寝ていた。起き上がった俺の身体から布団がめくれると裸の上半身が、いや下半身も何も着けていないようだ……なんでだ?
するとベッドルームの扉が開くと銀髪の美しいエルフの少女が入ってくる。
「エイジ? おはよう、やっと起きた……ずいぶん時間をギリギリに設定していたのね」
「アイリ? おはよう? わざわざ起こしに来てくれたのか?」
「ええ、昨日はお互いに疲れていたし、アラーム設定していない可能性もあったから」
アイリは目を逸らしながら細長い耳を手で弄ぶ……心なしか頬が赤らんでいるような気がする。
「あまり時間にゆとりが無いんだから早く服を着て準備しないといけないわ」
「あぁ……わかった」
う~む、昨日の事を覚えていないぞ……打ち上げでボディモニタリングアプリの設定どうしていたっけ?
確かチーム全員が「せっかくだから今日は思いっきり酔っ払ってしまおう!」って身体に影響ない範囲で一番上限に設定したのは覚えている……そして途中から記憶が無い。
「なぁ、アイリ、昨日の夜……「エイジ、私は一度部屋に戻るから遅れないで来るのよ」」
アイリは慌てて部屋を出て行ってしまった。昨日の夜いったい何があったんだ……布団をめくってシーツを確認しても、既にリフレッシュされているせいか何かの痕跡を見つける事が出来なかった。
「なぁ、ガット、昨日の事を覚えているか?」
「ああ、その日の寝床を廊下に決めた事は覚えているぜ……だが、どうしてそう決めたのは忘れた」
「ガット~それは何も覚えていないって言うんだよ……ボクもどうやって部屋に帰ったか覚えてないけどね」
「ほら、静かにしなさい」
どうやらチームメンバーも昨日の夜は記憶が飛ぶくらい飲んでしまったようだ。艦内に売っているアルコール系エフェクトは歴戦の兵士御用達の強~い物だったらしい。ボディモニタリングアプリが睡眠に入った時点で正常に戻してくれているので、体調の悪さを持ち越している人はいなかったが、昨日のメンツに同じ記憶が飛んでしまった奴は多そうだ。
そして現在はブリーフィングルームで昨日の結果報告などが行われているのだが、自部隊の事はともかく他部隊の報告などは退屈極まりない……こんな所でボーッとしている暇があったらファクトリーの進捗を確認しておこう。
ファクトリーで出来る事は衣・食・住と戦いに必要な兵器を足した4分野があり、それぞれを研究、開発、製造の3項目を行う事によって技術力が上がっていった。
SOFでは兵器の技術以外を育てても強くなる事においてはあまり意味が無く遊び要素としての側面が大きかった。
エンジョイ勢がそれらを積極的に上げていて、様々な見た目の衣服、惑星上に購入した土地へ建てる家、ゲーム上でも味覚を楽しめる食べ物など、戦い以外を楽しむ要素を楽しめるのがあり、それも魅力のひとつであった。
ゲームではレベルやスキル熟練度などは全てマスクデータとなっていて、何をどの位育成すればレベルが上がるという指標がなかった。
ゲーム中でファクトリーのランクはAだった時……当時はかなり苦労してようやくEXT 製造が出来るレベルになったのだが、そこから先が何を研究しようが開発しようが全く上がらなくなってしまった……俺以外にも多くのプレイヤーがランクAで停滞しており「プレイヤーの持てるランクはAが最高なのでは?」とすら思われていたくらいだった。
ある時、俺はとあるEXT のパーツがRPGパートのキャンペーンパートで手に入る事を知り、そのクエストで必要だった兵器以外の物を作るためにファクトリーで研究、開発、製造をした事があった。
ファクトリーのランクがある程度高いと特化した分野以外の開発、研究、製造に相乗効果が得られ、他のプレイヤーに比べるとEXT 戦で稼ぎまくった有り余るイクシアを惜しみなく使える状況だった俺は気まぐれに衣食住の技術が高い他プレイヤーに任せずに自分で作成を試みた。
そして依頼達成に必要な衣食住のレベルを上げた時にあっさりファクトリーのランクがSに上がった。細かい条件が何かあるのかもしれないが、俺はそれを再現しようと全ての分野にイクシアを惜しみなくつぎ込んで満遍なく技術を育てている最中なのだ。
その甲斐あったのか現在のファクトリーランクはBまで上がっている……ゲームの時よりもだいぶ進行度が早い。EXT 開発が出来るまであと少し……だがアークキャリバーを作るにはまだまだ足りない。もっともっとイクシアはもちろん素材が必要だ。
製造した物はどんどん仲間内に提供している……ガットは特に食べ物が好評だ。何故か大勢に人気のものよりもややマニアックな物が好きなようだ。
「おおおおっ、俺の好きなスナック菓子パリンキーが完全再現されている……いったいどうやってこの美味しさを再現してる!?」
「おしえてあげないよ……とでも言えば良いのか?」
アイリとフレーナはチョコレートが好きだ……やはり女の子という事だな。
「ボクはパッキーが好きだよ~! エイジ、パッキーゲームしよう……はむ」
俺に向かってフレーナの口から突き出されたチョコでコーティングされた細いスナックをアイリが無言で折った。
そのフレーナは自分の好きなブランドの服を依頼してきた。絵がうまかったのでそれを元に作成してみたのだ……あのボンキュッボンのボディデータを惜しげも無く提供してきたのには焦った。
「うふふ~ こうふんした?」
「ガット」
「おう!」
フレーナはガットにげんこつグリグリされた。それはともかく、後日服を渡すと感激していた。
「ここでラビアンローズが着れるなんてボク感動だよ~」
「あぁ、細部までしっかりと書かれていたからな……俺なんてEXTのフィギュアを作ろうとしたが、結構覚えていないパーツがあってションボリな結果になったぜ」
アイリは意外にもレトロオーディオが欲しかったらしい。この世界なら直接脳内で高音質の音楽を聴けるのに、わざわざ小型……と言っても大昔に使われていた通信機スマートフォン並に大きい……オーディオプレイヤーWalkGuyを依頼してきた。いちいち脳内コンピュータのストレージからプレイーヤーにデータを移して、これまた一緒に製造した大きいヘッドホンで聴いているのだ。
「わからないかしら? 直接自分の鼓膜を通して音楽の世界に触れるのが良いんじゃない……未だにアーティストのリアルライブが開催されるのって、そう言う事なのよ」
「確かに……もう実際のEXT じゃないと満足できないもんな、俺は」
「俺は剣道の竹刀と防具を作って貰ったぜ」
「ガット~いったい誰と戦うつもりなの?」
……残念ながら剣道仲間は見つからなかったようだ。
これらはもちろん余程の田舎惑星でも無ければ依頼して作れるはずなのだが、独立艦隊内では無駄な娯楽要素は充実していないらしい。
あまり際限なく頼まれるのは嫌なので人数は限定しているが、仲が良くなった奴にはチームメンバー以外にもこっそり提供を始め、着々と技術を磨いているのだ……もちろん必要素材とイクシアは貰っている。
「……エイジ、ちょっとエイジ」
「ん?」
ファクトリーの進捗確認中、アイリに声をかけられ現実に意識を戻すと……げっ、何故か俺のバストアップショットが大きく立体映像で表示されている……しかもこれリアルタイムか!? これは何て羞恥プレイだ!!
『とぼけた顔をしているが、こいつが初陣でありながらベテラン勢を差し置いてトップの戦果を上げた男だ』
「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーっっっ!!!」」」」」」」」」」
くっ、油断して恥かいた!! ガットもフレーナも肩をふるわせて笑いを堪えている。なんかアーサーがすっげー睨んでる……代われるなら代わって欲しいぜ。
しばらく各隊の戦果の発表の後に俺達覚醒者の制限が解除された事が伝えられた。オンラインエリアなら自由に情報取得や買い物、仮想現実の利用など、この世界に住む人々が出来る事は可能となった。
『ギャラクシーアーク』に関する軍情報も一般兵より高いランクの情報にアクセス可能らしい。
更に嬉しい事に、過去ブレインストレージに保存していたデータやアプリも検閲で許可された物は使用出来との事だ。
その日の夜、俺はあるアプリを立ち上げた。すると俺の視界にメイド服に両耳をシニョンキャップで隠した猫が現れた。その名もAI『ネコネジコ』。見た目はデフォルメされていないリアルなアメリカンショートヘアで銀と黒の虎縞。
『ダーリンお久しぶりなんだニョ! ネジコ寂しかったニョ!』
過去に存在した様々な特徴のマスコットキャラからチョイスされる膨大な……声、主人の呼び方、喋り方など……億を超えるパターンで作成することが出来るらしいのだが、特にこだわりが無かった俺はデフォルトにしたらランダムでコレになった。誰かに見られる訳でも無く、変更するのが面倒なのでそのままになっている。
ちなみにボイスは数世紀もの大昔から続いている……西暦2000年以前を題材にした作品……アニメ番組『みにまるかちゃん』の声でお馴染みのAI声優『SUJIKO』だ。
「ネジコ、今の俺の置かれている状況は分かるか?」
『わかるニョ、ゲームだと思っていた世界が現実だったんだニョ』
「それが分かれば問題ない、今まで通りファクトリーのタスク管理を頼む……優先順序はテキストデータを保存してあるから確認しておいてくれ」
『ダーリンたらイケずだニョ、もっと色々お話しする事があると思うんだニョ』
「あぁ、お前にはいつも助けられている。これからもよろしく頼むぜ」
『ああ~ん、効率重視で簡潔な所もダーリンの魅力だニョ』
ネジコがくねくね悶えている。このアプリは会話を繰り返すと特有の性格に育っていくらしいのだが、俺と必要最低限の会話しかしていないにもかかわらず、このネジコはやたらと話が脱線したり世間話をしたがるのだ……解せぬ。
「オンラインで情報収集……実用的な物以外も俺が興味を持ちそうな事をピックアップしておいてくれ」
『ダーリン了解だニョ、お任せだニョ』
実はこのアプリは滅茶苦茶役に立つ。SOF内では外部AIに命令を実行させる事は出来ないしそれはEXT 操作でも同じだ。つまり勝手にファクトリーのタスクを実行する事も出来ないし、EXT 戦で俺がAの武器を使うと同時にネジコがBの武器を実行する……なんて事は本来できないのだ。
ゲーム内でタスクを実行出来るようなアプリはチートに該当して速攻でアカウント凍結されていた。
だが、ネジコに実行させる事は出来なくとも、ネジコから俺の意識にタスク実行を呼びかけさせて無意識にそれを行う事が出来る事を発見したのだ……もちろんこれは戦闘でも利用可能だ。
今後はファクトリーのタスクをネジコの助けを借りて無駄なく実行する事が出来るのだ。お陰で俺の計画もだいぶ楽になる事だろう……検閲でOK出した人に感謝だな。
______________________________________
ちなみにアイリがお願いしたデジタルオーディオはソニーの『NW-WM1ZM2』ヘッドホンは『MDR-Z1R』をモデルにしています。
ヒロは触った事も無いですがかなり凄いらしいです……ほしい。
フラグシップは無理でも最近出た『NW-ZX707』あたりを貯金して買おうか検討中です。
イヤホンは元々『XBA-Z5』を使っているのでバランスは良さそうですが、そうするとリケーブルも欲しいのでやっぱり貯金ですね。
あとネジコはあれです、モンハンのアイルーのイメージで良いです。
面白かったらぜひ【お気に入りに追加】や【感想】をよろしくお願いします。
それを励みにより一層、頑張ります。
するとベッドルームの扉が開くと銀髪の美しいエルフの少女が入ってくる。
「エイジ? おはよう、やっと起きた……ずいぶん時間をギリギリに設定していたのね」
「アイリ? おはよう? わざわざ起こしに来てくれたのか?」
「ええ、昨日はお互いに疲れていたし、アラーム設定していない可能性もあったから」
アイリは目を逸らしながら細長い耳を手で弄ぶ……心なしか頬が赤らんでいるような気がする。
「あまり時間にゆとりが無いんだから早く服を着て準備しないといけないわ」
「あぁ……わかった」
う~む、昨日の事を覚えていないぞ……打ち上げでボディモニタリングアプリの設定どうしていたっけ?
確かチーム全員が「せっかくだから今日は思いっきり酔っ払ってしまおう!」って身体に影響ない範囲で一番上限に設定したのは覚えている……そして途中から記憶が無い。
「なぁ、アイリ、昨日の夜……「エイジ、私は一度部屋に戻るから遅れないで来るのよ」」
アイリは慌てて部屋を出て行ってしまった。昨日の夜いったい何があったんだ……布団をめくってシーツを確認しても、既にリフレッシュされているせいか何かの痕跡を見つける事が出来なかった。
「なぁ、ガット、昨日の事を覚えているか?」
「ああ、その日の寝床を廊下に決めた事は覚えているぜ……だが、どうしてそう決めたのは忘れた」
「ガット~それは何も覚えていないって言うんだよ……ボクもどうやって部屋に帰ったか覚えてないけどね」
「ほら、静かにしなさい」
どうやらチームメンバーも昨日の夜は記憶が飛ぶくらい飲んでしまったようだ。艦内に売っているアルコール系エフェクトは歴戦の兵士御用達の強~い物だったらしい。ボディモニタリングアプリが睡眠に入った時点で正常に戻してくれているので、体調の悪さを持ち越している人はいなかったが、昨日のメンツに同じ記憶が飛んでしまった奴は多そうだ。
そして現在はブリーフィングルームで昨日の結果報告などが行われているのだが、自部隊の事はともかく他部隊の報告などは退屈極まりない……こんな所でボーッとしている暇があったらファクトリーの進捗を確認しておこう。
ファクトリーで出来る事は衣・食・住と戦いに必要な兵器を足した4分野があり、それぞれを研究、開発、製造の3項目を行う事によって技術力が上がっていった。
SOFでは兵器の技術以外を育てても強くなる事においてはあまり意味が無く遊び要素としての側面が大きかった。
エンジョイ勢がそれらを積極的に上げていて、様々な見た目の衣服、惑星上に購入した土地へ建てる家、ゲーム上でも味覚を楽しめる食べ物など、戦い以外を楽しむ要素を楽しめるのがあり、それも魅力のひとつであった。
ゲームではレベルやスキル熟練度などは全てマスクデータとなっていて、何をどの位育成すればレベルが上がるという指標がなかった。
ゲーム中でファクトリーのランクはAだった時……当時はかなり苦労してようやくEXT 製造が出来るレベルになったのだが、そこから先が何を研究しようが開発しようが全く上がらなくなってしまった……俺以外にも多くのプレイヤーがランクAで停滞しており「プレイヤーの持てるランクはAが最高なのでは?」とすら思われていたくらいだった。
ある時、俺はとあるEXT のパーツがRPGパートのキャンペーンパートで手に入る事を知り、そのクエストで必要だった兵器以外の物を作るためにファクトリーで研究、開発、製造をした事があった。
ファクトリーのランクがある程度高いと特化した分野以外の開発、研究、製造に相乗効果が得られ、他のプレイヤーに比べるとEXT 戦で稼ぎまくった有り余るイクシアを惜しみなく使える状況だった俺は気まぐれに衣食住の技術が高い他プレイヤーに任せずに自分で作成を試みた。
そして依頼達成に必要な衣食住のレベルを上げた時にあっさりファクトリーのランクがSに上がった。細かい条件が何かあるのかもしれないが、俺はそれを再現しようと全ての分野にイクシアを惜しみなくつぎ込んで満遍なく技術を育てている最中なのだ。
その甲斐あったのか現在のファクトリーランクはBまで上がっている……ゲームの時よりもだいぶ進行度が早い。EXT 開発が出来るまであと少し……だがアークキャリバーを作るにはまだまだ足りない。もっともっとイクシアはもちろん素材が必要だ。
製造した物はどんどん仲間内に提供している……ガットは特に食べ物が好評だ。何故か大勢に人気のものよりもややマニアックな物が好きなようだ。
「おおおおっ、俺の好きなスナック菓子パリンキーが完全再現されている……いったいどうやってこの美味しさを再現してる!?」
「おしえてあげないよ……とでも言えば良いのか?」
アイリとフレーナはチョコレートが好きだ……やはり女の子という事だな。
「ボクはパッキーが好きだよ~! エイジ、パッキーゲームしよう……はむ」
俺に向かってフレーナの口から突き出されたチョコでコーティングされた細いスナックをアイリが無言で折った。
そのフレーナは自分の好きなブランドの服を依頼してきた。絵がうまかったのでそれを元に作成してみたのだ……あのボンキュッボンのボディデータを惜しげも無く提供してきたのには焦った。
「うふふ~ こうふんした?」
「ガット」
「おう!」
フレーナはガットにげんこつグリグリされた。それはともかく、後日服を渡すと感激していた。
「ここでラビアンローズが着れるなんてボク感動だよ~」
「あぁ、細部までしっかりと書かれていたからな……俺なんてEXTのフィギュアを作ろうとしたが、結構覚えていないパーツがあってションボリな結果になったぜ」
アイリは意外にもレトロオーディオが欲しかったらしい。この世界なら直接脳内で高音質の音楽を聴けるのに、わざわざ小型……と言っても大昔に使われていた通信機スマートフォン並に大きい……オーディオプレイヤーWalkGuyを依頼してきた。いちいち脳内コンピュータのストレージからプレイーヤーにデータを移して、これまた一緒に製造した大きいヘッドホンで聴いているのだ。
「わからないかしら? 直接自分の鼓膜を通して音楽の世界に触れるのが良いんじゃない……未だにアーティストのリアルライブが開催されるのって、そう言う事なのよ」
「確かに……もう実際のEXT じゃないと満足できないもんな、俺は」
「俺は剣道の竹刀と防具を作って貰ったぜ」
「ガット~いったい誰と戦うつもりなの?」
……残念ながら剣道仲間は見つからなかったようだ。
これらはもちろん余程の田舎惑星でも無ければ依頼して作れるはずなのだが、独立艦隊内では無駄な娯楽要素は充実していないらしい。
あまり際限なく頼まれるのは嫌なので人数は限定しているが、仲が良くなった奴にはチームメンバー以外にもこっそり提供を始め、着々と技術を磨いているのだ……もちろん必要素材とイクシアは貰っている。
「……エイジ、ちょっとエイジ」
「ん?」
ファクトリーの進捗確認中、アイリに声をかけられ現実に意識を戻すと……げっ、何故か俺のバストアップショットが大きく立体映像で表示されている……しかもこれリアルタイムか!? これは何て羞恥プレイだ!!
『とぼけた顔をしているが、こいつが初陣でありながらベテラン勢を差し置いてトップの戦果を上げた男だ』
「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーっっっ!!!」」」」」」」」」」
くっ、油断して恥かいた!! ガットもフレーナも肩をふるわせて笑いを堪えている。なんかアーサーがすっげー睨んでる……代われるなら代わって欲しいぜ。
しばらく各隊の戦果の発表の後に俺達覚醒者の制限が解除された事が伝えられた。オンラインエリアなら自由に情報取得や買い物、仮想現実の利用など、この世界に住む人々が出来る事は可能となった。
『ギャラクシーアーク』に関する軍情報も一般兵より高いランクの情報にアクセス可能らしい。
更に嬉しい事に、過去ブレインストレージに保存していたデータやアプリも検閲で許可された物は使用出来との事だ。
その日の夜、俺はあるアプリを立ち上げた。すると俺の視界にメイド服に両耳をシニョンキャップで隠した猫が現れた。その名もAI『ネコネジコ』。見た目はデフォルメされていないリアルなアメリカンショートヘアで銀と黒の虎縞。
『ダーリンお久しぶりなんだニョ! ネジコ寂しかったニョ!』
過去に存在した様々な特徴のマスコットキャラからチョイスされる膨大な……声、主人の呼び方、喋り方など……億を超えるパターンで作成することが出来るらしいのだが、特にこだわりが無かった俺はデフォルトにしたらランダムでコレになった。誰かに見られる訳でも無く、変更するのが面倒なのでそのままになっている。
ちなみにボイスは数世紀もの大昔から続いている……西暦2000年以前を題材にした作品……アニメ番組『みにまるかちゃん』の声でお馴染みのAI声優『SUJIKO』だ。
「ネジコ、今の俺の置かれている状況は分かるか?」
『わかるニョ、ゲームだと思っていた世界が現実だったんだニョ』
「それが分かれば問題ない、今まで通りファクトリーのタスク管理を頼む……優先順序はテキストデータを保存してあるから確認しておいてくれ」
『ダーリンたらイケずだニョ、もっと色々お話しする事があると思うんだニョ』
「あぁ、お前にはいつも助けられている。これからもよろしく頼むぜ」
『ああ~ん、効率重視で簡潔な所もダーリンの魅力だニョ』
ネジコがくねくね悶えている。このアプリは会話を繰り返すと特有の性格に育っていくらしいのだが、俺と必要最低限の会話しかしていないにもかかわらず、このネジコはやたらと話が脱線したり世間話をしたがるのだ……解せぬ。
「オンラインで情報収集……実用的な物以外も俺が興味を持ちそうな事をピックアップしておいてくれ」
『ダーリン了解だニョ、お任せだニョ』
実はこのアプリは滅茶苦茶役に立つ。SOF内では外部AIに命令を実行させる事は出来ないしそれはEXT 操作でも同じだ。つまり勝手にファクトリーのタスクを実行する事も出来ないし、EXT 戦で俺がAの武器を使うと同時にネジコがBの武器を実行する……なんて事は本来できないのだ。
ゲーム内でタスクを実行出来るようなアプリはチートに該当して速攻でアカウント凍結されていた。
だが、ネジコに実行させる事は出来なくとも、ネジコから俺の意識にタスク実行を呼びかけさせて無意識にそれを行う事が出来る事を発見したのだ……もちろんこれは戦闘でも利用可能だ。
今後はファクトリーのタスクをネジコの助けを借りて無駄なく実行する事が出来るのだ。お陰で俺の計画もだいぶ楽になる事だろう……検閲でOK出した人に感謝だな。
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ちなみにアイリがお願いしたデジタルオーディオはソニーの『NW-WM1ZM2』ヘッドホンは『MDR-Z1R』をモデルにしています。
ヒロは触った事も無いですがかなり凄いらしいです……ほしい。
フラグシップは無理でも最近出た『NW-ZX707』あたりを貯金して買おうか検討中です。
イヤホンは元々『XBA-Z5』を使っているのでバランスは良さそうですが、そうするとリケーブルも欲しいのでやっぱり貯金ですね。
あとネジコはあれです、モンハンのアイルーのイメージで良いです。
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それを励みにより一層、頑張ります。
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