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遊撃隊編

初陣 12

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 新たに降下してきた遊軍によって生き残っていた敵兵はEXT イクストから降ろされ拘束されていった。
 連行される敵兵の一人がこちらを見ながら何やら騒いでいるようだ……おっと、コールメッセージ!?

『貴様、魔女人形を操る異教徒め!! 我は貴様を許さない……多くの同胞を殺めた憎き異教徒め』

 どうやらカスタム機に乗っていたパイロットっぽいな……ボディースーツが一般兵に比べるとゴージャスな感じなので指揮官か? 肩まで伸ばした青髪に神経質そうで真面目な切れ長の目をしたイケメンだ。

「お前らの言うの言葉が理解出来ないようだから、もう一回言ってやる。命が大事なら教会で神様にでも祈ってろ。やられて文句を言うくらいなら戦場ここに来るな」

『おのれ、度重なる暴言、我を侮辱するその口を引き裂いてやりたい……我は誓う、貴様を地の果てまで追い詰めて裁きを下すと。異教徒よ名を名乗れ!!』

 全然こっちの話聞いていないよな? 相手をするのも面倒だが、こいつはこの後どうなるんだ? ……副隊長に確認してみよう。

『敵兵の処遇か? 捕虜として牢屋にぶち込んでから敵本国から来る交渉の後、多大なイクシアと引き換えに捕虜返還される事になるだろう。特に使徒という指揮官クラスは早めに解放される』

 ……って事はこいつとまた顔を合わせる可能性があるのか? それは面倒くさそうだ。いや、ただ戦うだけならなんて事は無いが、こいつはSOFで言うなりきりロールプレイタイプを対応する面倒くささがある。積極的に話しかけてくるけど全然話が通じない奴。

『貴様、聞こえないのか!! まさか怖じ気づいたのではある無いな!?』

「だまれ狂信者!! お前のような奴が何度来ようとは負けない!!」

『ん? 貴様なんか話し方が変わっていないか?』

「……気のせいだ。僕の名は!! お前達の崇めている偽りの神である邪神を殺す男だ!!」

『貴様!! 恐れ多くも我が神を邪神などと抜かしたな!! 我が神聖銀河帝国の威信にかけて必ず裁きを下してやる!! 覚悟しておけ!!』

「それはこちらのセリフだ!! 言っておくが、このEXT イクストは僕の得意な機体では無いからな、今回は手加減してやったが次はそうはいかないぞ……僕はお前達のような狂信者が何人来ようと負けない!! いつでもお前達の挑戦を受けてやる!! 命が惜しくなければ僕に挑んでくれば良い!!」

『その言葉忘れるな、異教徒アーサーよ!! 我は神聖エルスタリア銀河帝国の使徒ゼルファだ!! この名をしかと心に……おいこら、引っ張るな、まだ話しが……おのれ、ゆるさ……』

 偉そうな奴は味方に引きずられていった……いつでもお前の挑戦を受けようが。まぁ、例のカスタム機がいくら強かろうと、あんな機体性能に頼った戦い方なら装備の揃ったアーサーは負けないだろう……たぶん。

『エイジ……あなた……』

「~♪」

 アイリが何か言おうとするが、俺達の元に1機の『ヴォルトナイト』がやってきた。

『何やら僕の名前が聞こえたようだが? 僕は君が落としたEXT イクストに一切手を出さず、自力で空中の敵を撃ち落とした。エイジ……君の力など僕には必要なかったよ……それでも何か僕に言いたい事があるのか?』

 アーサーだった……こいつは地獄耳なのか? さて、何と説明するかな?

「それは何よりだな。いや、敵の指揮官……ゼルファとか言う奴が地上から見事な射撃で味方を倒していた奴の名前をどうしても知りたいと言われてな。あまりにも熱心に聞いてきたから……すまん、勝手にお前の名前を教えてしまった」

「そうか、勝手に僕の名を敵に漏らしたのか……どうやらこれで僕の力が敵に知られてしまったようだな。まぁ、いいさ、いくら巧妙に隠そうが遅かれ早かれ結果は同じだったはず。どんな相手が来ようと僕は敵の挑戦を受けてやるまでだ。
 エイジ、君も僕より少し多くの敵を倒したからと言って驕る事が無いようにな」

 満更でも無さそうなアーサー……勝利に浮かれているせいかチョロいぜ。うん、これならきっとアーサーとゼルファだっけ? がしても矛盾は無さそうで安心した。アーサーはご機嫌な状態でアイリに話しかけるが、いつも通り塩対応されて持ち場に戻って行った。

『エイジ……あなた……』

「~♪」

 アーサーを追っ払った後にアイリが何か言いたそうだったが、きっと気のせいだ。おっと、敵の収容も終わったようで帰還のためにプルートも地上に降りてきた。さぁ、おそらに帰ろうか?



□□□ 独立遊撃艦隊旗艦『クライシスヒーロー』ブリッジ:クールガイ □□□



 ふっ、どうやら事がクールに運んだようだな。新たに目覚めた覚醒者は誰一人欠ける事無く無事に帰還した。

「報告は以上ですわ。艦長の読み通り作戦は成功……内通者も捉えましたわ」

「ふん、憎たらしいほどアンタの思い通りに事が進んだわね」

 SOF時代からの仲間であり、今は部下である二人から改めて作戦の成功の報告を受ける。

「おっと、思い通りではないさ……何人か犠牲が出る可能性を覚悟していた。だが結果は俺の予想以上のパーフェクトかつクールにフィニッシュを迎える事が出来たと言っておこう」

 今回の覚醒者はかなり優秀な人材が揃っている。覚醒させた甲斐があったというものだ……中には俺の10年前のEXT イクスト技術を上回る者さえいるらしい。

「なにニヤついてんのよ……右も左も分からない新人を連れてくる情報まで流して。大事な人材を囮にして失敗したらどうするつもりだったのよ」

 む、クールなポーカーフェイスかつ顔はサングラスで隠しているはずなのだがな……長年の付き合いでバレてしまったようだ。

「ふっ、万が一の時のために3パターンのプランを用意してあった……もっとも、ひとつも使う必要が無かったがな」

「さすがクールですわね……そして、その新人の中に20機以上撃墜したとんでもない子がいましたわ」

「おいおい、そいつはクールすぎるな……もしかしてそのおとこは『フェイタルウィッチ』で出撃したニュービーか?」

「あら? チェックされていたんですのね……その通りですわ。しかも相手の上級指揮官まで撃墜していますわ。初陣でこんな戦果を上げられる人は過去にあなたくらいでしたわね」

 やはりそうか……データから出来る奴だとは思っていたが初陣でそこまでとは……やるな、クールだぜ。

「部隊長から報告が上がってるわ……ファミリアにステルスと光学迷彩を施して見えない誘導兵器インビジブルファミリアと呼称していたらしいわよ。
 しかも、40機以上をわざわざ地上に落として他の新人にプレゼントしたらしいわ……本当にとんでもない話ね」

「ふっ、そいつはとびきりクールな話だな。そうやって自分だけでは無く戦友ともと一緒に自分を高める奴は将来とんでもなくグレートなおとことなるだろう」

「あなたが好きそうな人ですわね……でも残念ながら改造したファミリアは他の戦場では使えそうもありません。イクシアが豊富な今作戦のフィールドだから本来よりも飛距離向上、速度向上、威力向上、短期充填射撃など可能だっただけで、通常の戦場では……むしろ通常より能力が落ちてしまい、とてもでは無いですが使い物になりませんわ」

「だが、逆に言えばイクシアが豊富な場所では十分に使える兵器という事だ。これは明らかに戦場に合わせて兵器改造しているな……本人に確認してその気があるのならパテントを与えよう」

「でもあんなに癖のあるEXT イクストを使いこなせるパイロットなんているかしら?」

「ふっ、EXT イクストに乗らずとも基地防衛用の兵器として活用出来るさ……ニュービーと一緒で発想の転換だ」

 何にしても面白いぜ……これからあのおとこが何をやってくれるか楽しみにしておこう。こういう奴からはどんどん新しい発想が生まれてくる事だろう……グレートだぜ。

「それはともかく、新生銀河帝国との交渉は頼みますわね」

「おいおい、そいつはNGだ……俺に交渉事は向いていない」

「そうよね、アンタ誰にだってその喋り方変えないものね……総司令官相手でも口調を変えなかった時はどうしようかと思ったわ」

「ふっ、これが俺のポリシーだからな」

「得意そうな顔をしないでください。艦長として避けられない必要な事ですわ……カンペは私が用意致しますから」

「こいつはそんな物を用意しても、喋り方は変わらないけどね」

 やれやれ、面倒事が片付いたと思ったのだが、もっともヘヴィな面倒事はこれかららしい……



□□□ ヴィーナス級護衛戦艦『ウェヌスⅣ』居住区:エイジ □□□



「やれやれ、俺だけ呼び出しとか参ったぜ……もうみんな始めているんだろうな」

 任務終了後、船に帰還した俺達は初陣からの生還祝いのパーティーを開く事にしたのだが、俺は隊長室に呼び出された。
 派手にやってしまったので、色々説明する必要があったのだ。まぁ、殆どはお褒めの言葉だった訳だが、事前に説明はしろと釘を刺されてしまった……前向きに善処します。

 さて、既に始まっていると思うけど急いで会場に向かわないと……マップを開いて目的のルームを確認してダッシュ!! 目的地にたどり着いて自動扉が開くと……

「「「「「いよっ!! 待ってましたエース!!」」」」」

 パパパーン!! と派手な音が鳴った……クラッカーか?

「エイジ、今日は助かったぜ」「凄かったよなぁ、あの戦いは」「エイジくんのお陰で1機撃墜出来たよー」「敵指揮官と一騎打ちとかどこの主人公だよ」

 皆が駆け寄ってくると一斉に話しかけてくる……戸惑っていると、いつもの仲間がやって来た。

「みんなあなたを……エイジを待っていたのよ。あなたと一緒じゃないとってね」

「そうそう、どう考えても今日の主役はエイジ、お前だよ」

「も~おそいよ~ ボクお腹ペコペコだよ~」

「お前達……悪かったな、隊長達のありがたーいお言葉を頂いていたんだよ」

 どうやら俺を待っていてくれたようだ……SOFでも似たようなパーティーはあったけれど、今はアバターを通さないで直接俺を見てくれている事に不覚にも感動してしまった。

「エイジ、さぁ、乾杯を頼むぜ」

 ガットが俺に飲み物の入ったコップ……多分アルコールのエフェクトがあるやつ……を渡してくる。俺はそれを掲げると……

「わかった、それじゃあ……皆が無事に初陣を終え帰還できた事を祝して……」

「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」



 ……こうして俺達は無事に初陣を終えたのだった。


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