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遊撃隊編

初陣 11

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『一体どうなっているんだ!!』『くそっ、異教徒どもめ!!』『いない、敵はどこにもいないぞ!!』

 敵も混乱しているのかオープンチャンネルで会話がダダ漏れとなっている……普段は頭で意識して個人、グループ指定して会話するのだが、焦って混乱するとオープンになってしまう事がある。
 ロボットアニメみたいで臨場感があるとゲームでは敢えてそういう仕様だったはずだが、驚きな事に現実でもそのままだった。
 この機能はオフに出来るはずなのだが、平常時であれば利便性がある為、誰もオフにしないのだ。

 いったいどこから攻撃されているのか分からない……そんな状況に敵は少しでも攻撃が当たりにくいよう回避に専念している。そのかげ地上への攻撃が少なくなり味方にゆとりが出てきたようだ。おっと、頑張って回避しているようだが……無駄だ。

「俺がこの場にいた不運を嘆くんだな」

 その空を飛ぶ敵EXT イクストを上下左右から4本の細い光の線……レーザーが貫き爆発した。

 左右の腕にライフルを構え地上を狙う敵EXT イクストの頭から身体の下までレーザーが貫通、その光が前方へスライドしてゆき身体が半分に切り裂かれながら爆発する。

 一列に編隊を組んでいた敵EXT イクスト達は左右斜めから2本のレーザーがその全てを貫き、息を合わせて爆発していった。

 当然、敵は『フェイタルウィッチ』の遠隔誘導兵器『フェイタルファミリア』の事を知っているだろう。だが、敵を一気に貫けるような高出力のレーザーを発射するエネルギーを溜める為に、その場に静止しなければならない。
 ファミリアはレーダーにも映るしロックオン可能なので、その状態なら簡単に撃ち落とす事ができるのだ。しかも無限に撃てるゲームとは違って現実のファミリアは有限……全て破壊されればもう使えない。
 また、エネルギーを充填しなければ絶えず動いて攻撃が出来るのだが、今度は逆に威力不足で多少の被弾ではEXTを撃墜できない。つまり一般的には『フェイタルウィッチ』はそれほど驚異のEXT イクストと思われてはいのだ。

 ……だが不思議な事に俺の使っているファミリアは特注品……どこにも見えずレーダーにも映らない。そして一撃で爆散するほどの威力で攻撃を放ってくる。

『敵の新兵器が戦場に投入されたのか!?』と、相手は恐れおののいているかもしれない。

「既存の技術を創意工夫して使っているだけなんだけれどな」

 敵には見えない驚異の誘導兵器『インビジブルファミリア』を使い次々と目標を撃墜してゆく。

 俺は事前に『フェイタルファミリア』へ戦闘機に使われるステルスと光学迷彩技術を施していた。ファクトリーのレベルもそれなりに上がってきたから、こんな兵器の改造も出来るようになっているんだよ。ちなみにこんな事はSOFゲームでは出来なかった……オリジナル兵器の爆誕って奴だな。いろいろ試しにやってみるものだぜ。

 これによって俺のファミリアはレーダーには映らず視界にも入りにくい。あとはゆっくりとエネルギーを溜めて敵を攻撃するだけだ。

『うわ!! 使徒様!! おた、おたすけ……ぐああああっ!!』

 ……ならばこの新しいファミリアなら誰でも強くなれるか? と言われると、やっぱり腕次第だ。

 オートモードだとAIの自動攻撃で通常攻撃か溜め攻撃の二択……オート制御だと動きも単調で簡単に破壊されてしまう。マニュアルモードだと思考制御で動かすのだが、これがもの凄く難しい。まともに動かせるようになるまで相当の訓練が必要だ。ちなみに視界をファミリアに移せるのだが、これをやると本体の操作がお座なりなる……俺は練習したから大丈夫だけどな。
 そして強力なレーザーを発射するための充填中は更に制御が難しい。敵が動きを先読みする技能は必須。集中力が落ちると充填もキャンセルされる厳しい仕様、その状態でファミリアを動かすのは至難の業と言えるだろう……まぁ、俺はめちゃめちゃ練習してできるようになったけどな。

『あいつだ!! あの異教徒の魔女人形だ!!』『おのれ!! 同志のかたき!!』

 今現在、戦場に『フェイタルウィッチ』は俺しかいない。そろそろ冷静になった敵が俺の存在に気付いたようで、何としてでも倒そうと敵の『エンジェリヲ』達が殺到してくる……おいおい、そんなにわかりやすく飛んできたら駄目だろう。

『エイジ、敵さん犠牲覚悟で突っ込んでくるぞ!!』

「問題ない、そんなに俺と戦いたいのなら受けて立とう」

 チームのメンバーがしっかり敵の攻撃を防いでくれているが、ここはこの『フェイタルウィッチ』の恐ろしさを教えてやる。

『ちょっと~!? エイジ~!?』

『もう、こうなったら無駄よ』

 俺はバーニアを噴射するとふんわり空へ飛んだ。敵が5体一気に槍を構えて襲ってくるが、全員同時に上下から現れた光の鉄格子にぶつかって爆散していった。

「まぁ、そんなわかりやすい特攻はするだけで簡単に当たるぜ……ランカーならこんな迂闊な事はしない」

 俺は溜まったイクシアを確認する……これだけ溜まれば十分か。そのまま全員にコールメッセージを送った。

「みんな、よく耐えてくれた。これから敵を手当たり次第落とすからきっちり仕留めてくれ。喜べ、ボーナスステージだぞ」

 俺は『インビジブルファミリア』を一気に展開させる。今度の攻撃は敵EXTの翼やバーニアを狙い撃った。
 次々と地上に墜落していく『エンジェリヲン』達はまるで堕天使といった所だろうか?
 ほとんどの機体が地に落ち……

『ひゃっはー!! 今までの仕返しだ!!』『よくもやってくれたわねー!!』『君が泣くまで殴るのを止めない!!』『イクシアいただきーーー!!』『さすがエース、やる事が半端ないぜ!!』

 地上で耐え抜いた仲間達は一斉に天使に襲い掛かる……もはやどちらが悪役か分からない。『フェイタルウィッチ』はどちらかというと空中機動は得意なEXT イクストに入るため、俺は空から皆の様子を確認している……そこに足を破損した副隊長のEXT イクストが片足を庇うように歩いてやって来た。

『よくやってくれたエイジ……まさかここまでとは思わなかったぞ』

「副隊長、ご無事で何よりです……これも副隊長がこの場所に皆を導いてくれたお陰です」

『お前なら何とでも出来ただろうが……そういう事にしておこう……む!?』

 その途端に俺目掛けて光が押し寄せてくる。会話中も気を緩めていなかった俺は操縦桿を軽く動かし、機体を移動させた。端から見るとふんわり躱したように見えるだろう。
 元いた場所を極太の光が走り抜け、続けて光の散弾が襲い来る……俺の視界が集中モードに切り替わると、自分に直撃する弾丸だけファミリアのレーザーで防ぐ。

『貴様が我が同胞を……命を奪ったのか?』

 敵の翼を持った天使のEXT イクスト。先程、副隊長を攻撃していたカスタム機か。今の攻撃も手にしている筒の長いライフルからだったのだろう。

「ここは戦場だ……命が大事ならでもしてろよ」

『黙れ異教徒め!! 我が怒りを受けるが良い!!』

『気をつけろエイジ、そいつのEXT イクスト性能は桁違いだぞ!!』

 会話のキャッチボールをする気が無い敵のカスタム機がロングライフルをこちらに向け発射してくる。更に翼を展開するとそれが光り輝き、大量の光の散弾がこちらへ向かってきた。

 再び集中した俺の視界が真っ暗になり、敵、味方のEXT イクストだけではなく飛んでくるビームまで鮮明に見えた……ゲーム時代からここぞという場面でよくこの状態になった。

 両腕を振り上げると元の場所をビームが通り抜ける。敵がライフルをそのまま横にスライドさせようとするのが見えたので、機体をクルッと回転させながら……迫り来る光の散弾を……杖を振って移動する。すると杖の先から光の軌道が現れ敵の攻撃を全て防いだ。
『フェイタルウィッチ』の白兵戦武器は当たれば強いが射程極小で性能最悪だ……が、光の軌跡が防御にも使える為、防御兵器として見ると悪くない。

 アイリいわく、俺が『フェイタルウィッチ』で回避すると、まるで妖精が舞踏会でダンスをしているようだと言っていた。

 さしずめ天使の誘いを優雅なダンスでつれなく断る魔女か?

「おいおい、危ないじゃないか……そんな危ない武器は……ボッシュートだ」

 敵のカスタム機が両手で構えていた長いライフルに斜め左右から2本の光線が貫くと、それは爆発を起こした。敵は爆発する直前に手を離して腕の損傷は回避したようだ。

『貴様!! よくも我が天使の武器を……』

「やり返されたくなかったら相手を殴っちゃ駄目だって子供の頃に習わなかったのか?」

『我を愚弄するとは……許さんぞ』

「いちいち話しの通じない奴だ!!」

 敵は背中に付いていた長い槍を手に取ると両手に構えてこちらに突っ込んでくる。俺はすかさず『インビジブルファミリア』で攻撃する。

「おおっ!?」

 敵はこちらの攻撃タイミングを読んでいたのか、身体に翼を纏わせてファミリアの攻撃を防いだ。レーザーは翼に当たると明後日の方向へ飛んでいった。

「イクシアフィールドか!?」

 その名の通りイクシアを防御エネルギーに変換、イクシア自体を相殺、もしくは反射して攻撃を防ぐ兵器だ。このカスタム気は出力が高いから反射まで出来るのだろう。

 そして、その兵器の名は略してI・フィー……いや、安易に略すのは止めておこう。

『貴様の攻撃など効かぬわ……異教徒の魔女人形め!! このまま処刑してくれる!!』

 敵のカスタムEXT イクストの勢いが増すと敵の体が光に包まれる。これはギリギリ回避だとダメージを喰らいそうだ。

 俺は急いでDSから『ナイトシールド改』を取り出すとランスチャージを受け止める。機体が勢いに押されて行く。

『なんだと!? 貴様、そんなものをどこから出した!?』

「お前の神様は聞けば何でも教えてくれるのか?」

『ほざけ! このまま盾ごと打ち砕いてくれる!!』

 敵の翼が展開されてバーニアが噴射されると、俺のEXT イクストを押す力がグンと増した。こちらも全力で押し返しているのだが、押される勢いが全く衰えない……パワーから何まであちらが上のようだ。『ナイトシールド改』の耐久値がガリガリ削られてゆく。

「くっ、このままだと盾が持たない!? ……なんてな」

 『フェイタルウィッチ』のカボチャ帽子からとっておきの兵器『ハイ・フェイタルファミリア』が飛び出すと、それは敵の背中に回り込み充填後に太めのレーザーが翼の隙間を狙って発射された。

『貴様!! 背中を狙うとは卑怯な!! ぐあああっ!!』

「さっきから何でもかんでも文句言うな……遅れてきた反抗期か?」

 敵の背中が爆発すると、ゆっくりと地上へ落ちていった……本来上位EXT イクスト用のファミリアを使ったのに完全破壊出来ないとは、相手のカスタム機はかなりの高性能だったようだ。
 ……とはいえかなりのイクシアが手に入っているから倒した扱いになったようだ……ごちそうさまでした。

 地上の敵は味方がお掃除してくれている。みんなもイクシアが沢山手に入って良い事ずくめだな。

『僕は!! エイジの!! 手なんか借りない……喰らえ!!』

 アーサーが敵から奪った『イクシアライフル』で、まだ空を飛んでいる敵を一気に3機も撃ち落とす。おお、射撃うまいな。でもそのライフルも俺が敵を撃ち落とさないと使えなかったんだぞ……まぁ、野暮な事は言うまい。

『おーい、エイジー!!』

『ほんとう……エイジは最高ね』

『やっほ~!!』

 もちろんチームの皆も無事だ。他より多めに敵を落としておいたので処理が大変だったかもと思ったけれど全部きっちり倒しているようだ。

 空を見上げると新たな輸送戦艦が……味方の増援が降下してくる。これで敵も投降するだろうか……でも狂信者とかだとわからないな。

「これで戦闘ステージ終了クリアかな?」




 ……雲の切れ目からまぶしい光が降り注いできた。



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ちなみにファミリアの形はクリオネ型となっており、空を舞う天使のような愛らしさと同時に、攻撃時頭が縦に裂け、そこからレーザーが放たれるという凶悪な姿を併せ持つ使い魔なのです。
イメージは本物の動画を見てもらうと分かるでしょう。


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