上 下
75 / 78

57

しおりを挟む
ミニ祭りは、正直楽しい所かめちゃくちゃ興奮した。

ディクセル様から、本物のお祭りに行く時は目が離せないなと苦笑される位には親子ではしゃぎ倒した。
なんなら兄さんと三人ではしゃいでいたから、多分、フィニス様も大変だったと思う。
リオンもシュリくんもふわふわの雲みたいな飴を一緒に食べて、輪投げで遊んではしゃいで、そうして疲れたからかお昼過ぎた頃には二人共ウトウトと船をこぎ出していた。
可愛い。

「もう帰ろうか。」
「そうだな。リオン、完全に落ちてるし。」

眠りの小山へと漕ぎだした船は、どうやら無事に到着したらしい。
さっきまでちょっとねぐずり気味だったけれど、もう全身の力をディクセル様に預けてしまっている。
重そうだなと思うけど、つい最近まで騎士をやっていたディクセル様にとっては重りにもならないらしい。

「オルフェも帰るよ。」
「………最後にイカ焼き食べたい。」
「………両手にいっぱい持ってるだろ?」

ふと後ろを見れば、両手にいっぱい食べ物が入った袋を持った兄さんをフィニス様が宥めていた。
兄さんはかなり食べるんだけど、一体どこに入るんだろうかと疑問に思う位に食べる。
あの両手いっぱいの食べ物だって、ぺろりと食べた後に晩ご飯も食べるんだろうなぁ………。
屋敷に居た時はそんな風じゃなさそうに見えたんだけどなぁ。

「お願い、先輩………。イカ焼きだけ………」

うるうると目を潤ませて、キュッと服の袖を指で控えめに掴んで。
それだけ見るとめちゃくちゃ美人で可愛いのに、強請ってる物がイカ焼きって………。
しかも絶対イカ焼きついでに隣にあるパニーニも狙ってる筈。
チラチラ見てるもん。

「………晩ご飯、食べれるのか?」
「食べれる。だからパニーニも。」
「ダメ。イカ焼きだけ。それかパニーニだけ。」
「どっちも。」

お願いっとこてんと首を傾げる。
おーおー、自分の魅力と胃袋を分かってらっしゃる。
甘やかしたいという気持ちと、兄さんの胃袋を気遣いたいという気持ちで板挟みになってらっしゃるのか、フィニス様は頭を抱えている。

「恥ずかしい程にがめついな、あのぶりっ子。ミリ、先輩に押し付けて任せて置いて帰ろう。」
「いやいやいや。一緒に帰りましょうよ。」

どうせあの攻防も直ぐ終わる。
そう思った俺の予想通り、無事勝利した兄さんがイカ焼きとパニーニが増えてパンパンになった袋をぶら下げてほくほくとした顔でこっちに向かって来ている。
その後ろには眉間を揉みながら財布を鞄に仕舞っているフィニス様が。

「待たせたな。」
「偉そうに言ってんじゃねぇぞ、ブス。」
「語彙力の少ないクソガキがピーピー喚くな。お前はひよこか?ああ、精神年齢赤ちゃんだもんな。」

おーお、ご機嫌だからお口が絶好調だ。
兄さんとディクセル様は、よく口喧嘩をしている。
最初はびっくりしたし怖かったから止めてたけど、この二人のコミュニケーションなんだよってフィニス様が言ってたから今はもうリオンの前でやらないならイイやって思うことにした。
マジで教育に悪いから、リオンが起きてる時は止めてね。

「ねー、もう帰るよ。」
「ほら、家でゆっくり食べるよ。」

一応ディクセル様がリオンを抱えているからセーブしているみたいだけど、段々と声が大きくなっている気もする。
リオンを起こしてしまう前に、とっとと家に帰ろう。
俺達の、家に。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

兄が届けてくれたのは

くすのき伶
BL
海の見える宿にやってきたハル(29)。そこでタカ(31)という男と出会います。タカは、ある目的があってこの地にやってきました。 話が進むにつれ分かってくるハルとタカの意外な共通点、そしてハルの兄が届けてくれたもの。それは、決して良いものだけではありませんでした。 ハルの過去や兄の過去、複雑な人間関係や感情が良くも悪くも絡み合います。 ハルのいまの苦しみに影響を与えていること、そしてハルの兄が遺したものとタカに見せたもの。 ハルは知らなかった真実を次々と知り、そしてハルとタカは互いに苦しみもがきます。己の複雑な感情に押しつぶされそうにもなります。 でも、そこには確かな愛がちゃんと存在しています。 ----------- シリアスで重めの人間ドラマですが、霊能など不思議な要素も含まれます。メインの2人はともに社会人です。 BLとしていますが、前半はラブ要素ゼロです。この先も現時点ではキスや抱擁はあっても過激な描写を描く予定はありません。家族や女性(元カノ)も登場します。 人間の複雑な関係や心情を書きたいと思ってます。 ここまで読んでくださりありがとうございます。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

騎士は魔石に跪く

叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。 魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...