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「アレ?ミリくん、どうしたの?」
「すいません、今日ちょっと手続きしたいことが幾つかあって………」
「そなの?受付しようか。おっ、リオンくんも一緒かー。おいでー。」
「シュリくんのおとうさん!こんにちはー!」
お昼ご飯を食べて役場に来た時は、ピーク時間を過ぎていたからいつもよりは静かだった。
お昼休みを取ってる職員も何人か居たので、それもあるのかもしれない。
そんな中、丁度お昼が終わったらしい上司がわざわざ出て来てカウンターで対応してくれることになった。
リオンに向かって手を広げてるけど、リオンは昨日今日とパパにベッタリなので行く雰囲気すらない。
残念ね。
「で、えーっと………今日はアレかな?リオンくんのお父さんの手続き関連?」
「話が早くて助かります。」
昨日奥様と会ったから、やはり上司にもディクセル様の話は耳に入っているんだろう。
上司は少し困ったような顔をしながらディクセル様を見つめると、改めて俺達を席に案内してくれた。
………てか、何も言われないってことはやっぱり上司も俺がリオンを産んだんだと思われてただろうか?
「この街に転居する予定でして、その手続きをしたいのですが………」
「えっ!?本当ですか!?良かったー!」
ディクセル様の言葉に、上司は大袈裟な程に喜んだ。
え?何で?
確かにこの街に移住したがる冒険者の人達も一般人も少ないけど、そこまで喜ぶことじゃなくない?
「いやー、逆にミリくんが王都に行っちゃうとかだったらどうしようかと思ってたんですよ。うちの戦力的にも勿論そうなんですけど、息子がリオンくんのこと大好きなもので。あ、ギルドカードお預かりしても良いですか?」
「ああ、そういうことですか。いや、自分もこれから先はミリの傍に居たかったので………騎士は時間が無いですし、急な出張が多いもので。どうぞ。」
「あー、なるほど。本当、助かりますよ。昨日はうちの妻が失礼な態度取ったようで、もうダメかと思いまして………本当に申し訳ありませんでした。ありがとうございます。」
「いえいえ、此方こそ失礼な態度を取ってしまい申し訳ないです。自分も不甲斐ない夫なもので、奥様には痛いところ突かれてしまって
つい………」
二人共世間話に花を咲かせつつ、手元はしっかりと作業をしているんだから凄い。
俺も多少出来るようにはなったけど、上司程じゃない。
恥ずかしいから中々言えてないけど、俺はこの人を仕事の面では尊敬していた。
「夫と言ってもまだ婚姻届出せてなくて、今日このまま提出しても?」
「構いませんよ。ミリくん、今日IDカード持って来てる?」
「はい。元々そのつもりだったので。」
俺は鞄からIDカードを取り出して上司に渡した。
IDカードは冒険者やギルド関係者以外の身分証明書だ。
基本的な仕組みはギルドカードと同じだけど、ギルドカードの方が保有情報や権利が多い………らしい。
実はその辺はまだ勉強中で良く分かってなかったりする。
「良いねぇ、新婚さんだねぇ。」
俺からIDカードを受け取りながら、上司がニコニコとそう言って笑った。
新婚………さん………
その言葉が一度右から左にすり抜けて、それからまた戻って来る。
新婚さん!婚姻届!結婚!!!
「あ、ディクセル様!」
「ん?どうした、ミリ。」
慌ててディクセル様の袖を引いて、ひっそりと耳打ちの体制になる。
自分的には大事で、凄く大変な事態だと思った。
婚姻届を出す。
つまり俺はディクセル様の奥さんになった!
「………ふはっ、そうだな。」
「え?なになに?何面白いこと言ったの?ミリくん。」
俺的には世紀の大発見レベルだったのに、そうじゃなかったらしい。
因みに俺のこの謎の慌てっぷりと、必死に笑いをこらえるディクセル様の姿はかなりの長期間、上司の鉄板ネタと化すのはまた別のお話だ。
「すいません、今日ちょっと手続きしたいことが幾つかあって………」
「そなの?受付しようか。おっ、リオンくんも一緒かー。おいでー。」
「シュリくんのおとうさん!こんにちはー!」
お昼ご飯を食べて役場に来た時は、ピーク時間を過ぎていたからいつもよりは静かだった。
お昼休みを取ってる職員も何人か居たので、それもあるのかもしれない。
そんな中、丁度お昼が終わったらしい上司がわざわざ出て来てカウンターで対応してくれることになった。
リオンに向かって手を広げてるけど、リオンは昨日今日とパパにベッタリなので行く雰囲気すらない。
残念ね。
「で、えーっと………今日はアレかな?リオンくんのお父さんの手続き関連?」
「話が早くて助かります。」
昨日奥様と会ったから、やはり上司にもディクセル様の話は耳に入っているんだろう。
上司は少し困ったような顔をしながらディクセル様を見つめると、改めて俺達を席に案内してくれた。
………てか、何も言われないってことはやっぱり上司も俺がリオンを産んだんだと思われてただろうか?
「この街に転居する予定でして、その手続きをしたいのですが………」
「えっ!?本当ですか!?良かったー!」
ディクセル様の言葉に、上司は大袈裟な程に喜んだ。
え?何で?
確かにこの街に移住したがる冒険者の人達も一般人も少ないけど、そこまで喜ぶことじゃなくない?
「いやー、逆にミリくんが王都に行っちゃうとかだったらどうしようかと思ってたんですよ。うちの戦力的にも勿論そうなんですけど、息子がリオンくんのこと大好きなもので。あ、ギルドカードお預かりしても良いですか?」
「ああ、そういうことですか。いや、自分もこれから先はミリの傍に居たかったので………騎士は時間が無いですし、急な出張が多いもので。どうぞ。」
「あー、なるほど。本当、助かりますよ。昨日はうちの妻が失礼な態度取ったようで、もうダメかと思いまして………本当に申し訳ありませんでした。ありがとうございます。」
「いえいえ、此方こそ失礼な態度を取ってしまい申し訳ないです。自分も不甲斐ない夫なもので、奥様には痛いところ突かれてしまって
つい………」
二人共世間話に花を咲かせつつ、手元はしっかりと作業をしているんだから凄い。
俺も多少出来るようにはなったけど、上司程じゃない。
恥ずかしいから中々言えてないけど、俺はこの人を仕事の面では尊敬していた。
「夫と言ってもまだ婚姻届出せてなくて、今日このまま提出しても?」
「構いませんよ。ミリくん、今日IDカード持って来てる?」
「はい。元々そのつもりだったので。」
俺は鞄からIDカードを取り出して上司に渡した。
IDカードは冒険者やギルド関係者以外の身分証明書だ。
基本的な仕組みはギルドカードと同じだけど、ギルドカードの方が保有情報や権利が多い………らしい。
実はその辺はまだ勉強中で良く分かってなかったりする。
「良いねぇ、新婚さんだねぇ。」
俺からIDカードを受け取りながら、上司がニコニコとそう言って笑った。
新婚………さん………
その言葉が一度右から左にすり抜けて、それからまた戻って来る。
新婚さん!婚姻届!結婚!!!
「あ、ディクセル様!」
「ん?どうした、ミリ。」
慌ててディクセル様の袖を引いて、ひっそりと耳打ちの体制になる。
自分的には大事で、凄く大変な事態だと思った。
婚姻届を出す。
つまり俺はディクセル様の奥さんになった!
「………ふはっ、そうだな。」
「え?なになに?何面白いこと言ったの?ミリくん。」
俺的には世紀の大発見レベルだったのに、そうじゃなかったらしい。
因みに俺のこの謎の慌てっぷりと、必死に笑いをこらえるディクセル様の姿はかなりの長期間、上司の鉄板ネタと化すのはまた別のお話だ。
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