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「じゃあ、お迎え行ってくるね。」
「ああ。ミリ、気を付けて。ディクセル、ミリを困らせるなよ。」
「うるせぇ、バーカ」

俺はディクセル様と二人で、リオンを迎えに行くことにした。
リオンの秘密全てを漏らすつもりはないが、ディクセル様自身もリオンのお父さんなんだよ。保護者なんだよって説明したい。
俺の所為で失った時間をちょっとでも取り戻して欲しいから、俺はこの機会に是非ともディクセル様もお祭りをリオンと楽しんで欲しかったのだ。
ただ、もしもダメだった時は、ディクセル様には諦めてもらう。
親族じゃないし。

「職場内に託児所があるなんて、案外しっかりした職場なんだな。」

道中、何気ない話をぽつぽつと話しているとディクセル様がそう言った。
そうなの?
思わず首を傾げると、街や村だと子供を預ける所は無いらしい。
だから共働きやシングルは少ないらしい。
………俺、本気で恵まれてるんだな。

「ミリとリオンがちゃんとした環境の中で過ごせてて良かった。」

ディクセル様がそう言って微笑んで、少し遠慮がちに俺の指に指を絡めた。
多分、手を繋ぎたいけど人通りの多い場所だから俺に気を遣ってるんだと思う。
何だかそれが寂しくて、俺は指を少し振り払うような仕草をしてからディクセル様の手をしっかりと握った。

「ミリ。」
「俺、もう決めたんです。我慢しない、我慢させないって。」

その覚悟が、もしかしたらとんでもない代償を孕むかもしれない。
けどもう、行動しない所為で悲しませたり後悔したりしたくない。
だからこれはその最初の一歩。
人前で、大好きな人と手を繋いで歩く。

「だから、ディクセル様も俺の手を離さないで。」

なんて。
ディクセル様からしてみれば、手を離したのは俺の方なんだろうけど。
でももう俺の方から握ったんだから、離さないで欲しい。

「離さないよ。二人の手は、絶対に離さない。」

ぎゅっと、少しだけ力が強くなる。
俺とは違う、力強い大きな手だ。
ディクセル様が本気出したら、俺の手潰れちゃいそう。

「でも、来週には王都に帰っちゃうんでしょう………?」

少し拗ねたような口調で試してみる。
あ、嫌な奴だな俺。
やるだけやって後悔していたら、ちょっと信じられない言葉が聞こえてきた。

「帰らないが?騎士団辞めたし。」
「はい?」

え?
え?どういうこと?
辞めたってなんで、いつ?

「まぁ元から辞めるつもりだったけど、ミリの居場所分かった以上は王都に居る必要無いだろ。」
「ちょっと良く分からない。」

どこが分からない?と言わんばかりの顔をされたけど、正直一から十まで分からない。
元から辞めるつもりの意味も分からないし、俺の居場所が分かったから王都に居る必要ないって、何??
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