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アレから荷解きする前にずっとキスしてたから、ちょっと唇が腫れぼったくなってヒリヒリする。
それはディクセル様も同じみたいでちょっと痛そうに唇を舐めていて、それが何だか面白くて思わず笑ってしまった。

「楽しそうだな。」
「うん、楽しい。」

頬にキスをされたから俺も仕返ししようと思ったけど、生憎と背が届かなかった。
ちょっと悔しい。
逞しい身体に高い背、美しい顔立ち。
こうして特徴を並べると、俺なんかとてもお近づきになれないような人。

「ミリが楽しいと、俺も楽しい。他人がどう思おうがそんなの関係無いと思っていたが………」

ディクセル様がそう言って、俺の腰を抱き寄せる。
まるで大樹のように太くて頼り甲斐のある腕。
この腕が俺とリオンだけのモノになるなんて、未だに信じられない。

「ミリには、笑っていて欲しいと思う。いや、違うな………俺が幸せにしたいと思うんだ。」

まだ見ぬ俺の子も、とディクセル様はそう言った。
そうだ、ディクセル様はまだ、リオンに会ってない。
ずっとずっと、俺の都合で離れ離れになっていた親子。
早く会わせてあげたい………。

「幸せに、させて欲しい。」
「して。俺も、リオンも。俺も、ディクセル様とリオンを幸せにしたい。」

幸せにして欲しいし、幸せにしたい。
愛して欲しいし、それ以上に愛したい。
こんな気持ちがあるなんて、知らなかった。

「ミリ!」
「ぶみっ!」

俺の言葉に感極まったとばかりに、ディクセル様は思いっきり俺を抱き締めた。
シャツ越しでも厚くて硬い胸板に思いっきりぶつかった所為で、変な声が出てしまった。
ディクセル様は、気になってないみたいだけど。

「愛してるんだ!」
「うん、俺も………俺も、愛してるんです。」

俺はずっと気付かなかったけど、ディクセル様はずっと愛をくれた。
それに少しでも、お返し出来たら良いなと思う。
まずは素直になろう。
ディクセル様だけは、疑うことなく信じよう。

「リオンも愛してあげてくださいね。」
「ああ。ミリと俺の子なんだ、愛さない筈がないよ。」

自信満々に言われて、なんだかおかしくなってしまう。
何がそんなに怖かったのか、分からなくなってしまった。
もっとちゃんと話を聞けば良かった。
もっとちゃんと、話せば良かった。
そうしたらきっとリオンが生まれた時から、祝福してくれたことだろう。
兄さんとフィニス様のように。

「あー、早く会いたいな………流石にお迎えに着いて行くのは無理だろう?」
「うーん、多分。………あ!」

お迎えという言葉で思い出した!
お祭り、どうしよう!
出来ればリオンと楽しんで欲しいけど、親族は二名まで。
しかもディクセル様を親族だと言い張るのはかなり無理がある………。
いや、でも………。

「ディクセル様、やっぱり、一緒にお迎え行きませんか?」
「………良いのか?」

もしかしたら、リオンの大事なモノを失わせることになるかもしれない。
でもそもそもの話、隠し続けることは無理なんだとはずっと思ってた。
純粋な人間とは違う。
その違いは、今は少なくともいずれ大きな歪みになるかもしれない。
そうなる前に―――

「どうしようもなくなったら、俺とリオンを連れて行ってくれますか?」
「え?ミリとリオンを合意の上で誘拐して良いのか?やった!ここより広い一軒家買おうな。」

弾むような声色で言われたけど、違うからね。
合意の上の誘拐って、何?
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