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「どこに行きます?」

取り敢えずあまり喫茶店で騒ぐのも迷惑になるからと、俺達は移動することにした。
とはいえどこに行くのか、それが問題だ。
正直、この街みたいなダンジョン街は観光には向かない。
何故ならダンジョンを攻略する冒険者の人達相手の商売しかしてないからだ。
施設にしても、商店にしても。
大きなダンジョン街とかは、また違うんだろうけど。

「ミリの家。」
「えっ、まぁ………片付けてるから大丈夫ですけど………兄さん達は?」

店を出た途端ディクセル様に手を繋がれてちょっとビックリしたけど、一応、多分、恋人同士ってやつなので嬉しかったりもする。
兄さん達も繋げば良いのに。
俺よりも大きくてごつごつとした手。
剣ダコってやつかな、掌が俺よりもザラザラしてて面白い。

「私も着いて行く。二人きりにさせられるか。」
「オルフェ………まぁ、俺も着いて行くよ。荷物置かせてもらいたいし。」

そうだ!荷物!
ずっと持たせたままだ!
慌ててディクセル様やフィニス様の手元を見れば、やはり長期滞在になるから多めの荷物を持っていた。
フィニス様に至っては兄さんの分と合わせて持っている。
兄さんが持たないんじゃなくて、フィニス様が兄さんに持たせたがらないからだ。

「気付かずすいません!部屋は片付けてるので………!」
「ごめんね、ありがとう。」

ここから俺の家は歩いて5分くらい。
その間荷物を持たせ続けるのは申し訳ないなと思うけど、鍛えてるから大丈夫だとディクセル様は微笑んだ。
うぅ………申し訳ないけど、お言葉に甘えよう。

道中、俺達はディクセル様が気になっていることに答えていくことにした。
兄さんとフィニス様はリオンを知っているけど、ディクセル様は何も知らない。
やっぱり気になっているみたいで、色々と聞いてくれた。

どんな見た目なのか
何が好きなのか
どんな子なのか

見た目に関しては俺に似ているという話を聞いたら何故かすごく喜んでくれて、どんな子なのかって所で兄さんが自慢をしたら結構怒ってた。
なんでこうもお互いがお互いに喧嘩売るんだろうか………?
ちょっと呆れた気持ちでディクセル様を見上げたら、同じタイミングでディクセル様が俺を見てくれた。
………なんか、すごく恥ずかしいけど、嬉しい。

「ほらほら皆、着いたよ。」

あまりの恥ずかしさに俯く俺に、呆れたようなフィニス様の声が聞こえた。
自分の家なのに、通り過ぎる所だった!
慌てて鍵を開けて、三人を中に招き入れる。
………かなり気合入れて掃除したけど、大丈夫かな?

「ここが、ミリの家………」
「嗅ぐなクソガキ。変態臭いぞ。」
「喧嘩しない。そういえばミリ、リオンは?お家でお留守番かと思ったんだが。」

一旦リビングに案内して一時的に荷物を降ろしてもらっていると、フィニス様がそう聞いてきたので簡単に事情を話す。
事情って言っても、職場の厚意で預かってもらってるだけだし。

「じゃあお迎えの時間まで、ミリとゆっくり話したい。」

今まで話せなかったこと、話したかったこと。
聞きたかったこと、聞けなかったこと。
二年分のそれを、一度に全部じゃなくてゆっくりと。

「うん、俺もお話したい。荷解き手伝わせて。荷解きしながら、お話しよう。」

兄さん達もゆっくりして欲しいし。
荷解きゆっくりして、お茶淹れて、ゆっくりとお話ししよう。
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