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幸せになりたいだけなのに
私達の心に刺さり続けている
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どうしても、好きな人が居た。
その人は王子様系のイケメンで、お姫様みたいって言われ続けてきた私に相応しい人だった。
スポーツ万能で、頭も良くて学年で一番。
でも恋人が居るみたいで、誰から告白されてもいつもそう言って振ってた。
一体誰なんだろうか。
誰も彼の恋人を知らないし、見たこともなかった。
告白を振るための嘘なのかなって思った時もあったけど、クラスの男子との会話で本当に居るのだろうって嫌でも分かってしまった。
どんな子なのかは濁すけど、余程楽しかったのかデートの内容とかはよく細かく話していたから。
でもその恋人がどんな奴だとしても、私の方が彼に相応しい。
私は彼の尾行を続け、そして【恋人】の正体を知った。
油断していたのか、人通りの少ない空き教室で手を繋ぎながらキスをしていたから。
私はその【相手】を見て悲鳴を上げそうになった。
だって相手は男………しかも彼のような美しい人ならまだしも、同じクラスのブス陰キャ野郎だったから。
嘘でしょ、気持ちが悪い。
何の罰ゲームなの?
間違ってる、間違ってる、間違ってる!
嬉しそうに笑う陰キャの顔がきっしょい。
彼が嫌がってるって分かってないんだろうか。
もし彼が嫌がっていないとするなら、それはきっと彼が勘違いしているからだろう。
私は教えてあげようと思った。
邪魔をするんじゃない。
教えてあげるんだ。
正しいお付き合いは、男女だけなんだよって。
やったことなんて簡単だ。
グイグイいく訳じゃなくて、控えめにアピールしただけ。
そうしたらやっぱり彼もおかしいと思ったのか、徐々に徐々に私に靡いてくれて最終的に私の方を選んでくれた。
別れ話はちゃんとしてくれるか分からなかったから、私は彼に許可を貰って隠れて聞くことにした。
きっと泣き喚いて縋るんだろうと思うと、ざまぁみろって思った。
ずっと彼を汚してた報いだと。
『そっかぁ………なんか、ごめんね。ずっと苦しめてて。』
でもアイツは、ブスな顔を更に歪ませて静かにそう言った。
そうだよ、彼を苦しめてたんだよ。
お前みたいなブスに無駄に時間を取られたんだから、ちゃんと誠心誠意謝罪してよね。
そう思うけどなんでだろう、スッと一筋流れる涙を見ていたら胸がズキズキと痛んだ。
『今まで、ありがとうございました。』
深々と頭を下げて、アイツは去って行った。
恨み事も嫌味も無い、純粋な感謝。
結局、私と彼はそのまま順調にお付き合いを続けて、無事結婚となった。
今では子供が二人居る。
でも内心が順当かと言われたら、それは違うと答えるだろう。
アイツの言った謝罪が、感謝が、私達の心にずっと棘みたいに刺さり続けたままなのだ。
私にとって、彼と別れたらアイツに負けたような気がして。
彼にとっては多分、別の理由で。
私達は別れることが出来なかった。
例えどれだけ、心が冷めきっていたとしても。
私達はずっと二人で居なくてはならないんだと、互いに思ってしまっているから。
その人は王子様系のイケメンで、お姫様みたいって言われ続けてきた私に相応しい人だった。
スポーツ万能で、頭も良くて学年で一番。
でも恋人が居るみたいで、誰から告白されてもいつもそう言って振ってた。
一体誰なんだろうか。
誰も彼の恋人を知らないし、見たこともなかった。
告白を振るための嘘なのかなって思った時もあったけど、クラスの男子との会話で本当に居るのだろうって嫌でも分かってしまった。
どんな子なのかは濁すけど、余程楽しかったのかデートの内容とかはよく細かく話していたから。
でもその恋人がどんな奴だとしても、私の方が彼に相応しい。
私は彼の尾行を続け、そして【恋人】の正体を知った。
油断していたのか、人通りの少ない空き教室で手を繋ぎながらキスをしていたから。
私はその【相手】を見て悲鳴を上げそうになった。
だって相手は男………しかも彼のような美しい人ならまだしも、同じクラスのブス陰キャ野郎だったから。
嘘でしょ、気持ちが悪い。
何の罰ゲームなの?
間違ってる、間違ってる、間違ってる!
嬉しそうに笑う陰キャの顔がきっしょい。
彼が嫌がってるって分かってないんだろうか。
もし彼が嫌がっていないとするなら、それはきっと彼が勘違いしているからだろう。
私は教えてあげようと思った。
邪魔をするんじゃない。
教えてあげるんだ。
正しいお付き合いは、男女だけなんだよって。
やったことなんて簡単だ。
グイグイいく訳じゃなくて、控えめにアピールしただけ。
そうしたらやっぱり彼もおかしいと思ったのか、徐々に徐々に私に靡いてくれて最終的に私の方を選んでくれた。
別れ話はちゃんとしてくれるか分からなかったから、私は彼に許可を貰って隠れて聞くことにした。
きっと泣き喚いて縋るんだろうと思うと、ざまぁみろって思った。
ずっと彼を汚してた報いだと。
『そっかぁ………なんか、ごめんね。ずっと苦しめてて。』
でもアイツは、ブスな顔を更に歪ませて静かにそう言った。
そうだよ、彼を苦しめてたんだよ。
お前みたいなブスに無駄に時間を取られたんだから、ちゃんと誠心誠意謝罪してよね。
そう思うけどなんでだろう、スッと一筋流れる涙を見ていたら胸がズキズキと痛んだ。
『今まで、ありがとうございました。』
深々と頭を下げて、アイツは去って行った。
恨み事も嫌味も無い、純粋な感謝。
結局、私と彼はそのまま順調にお付き合いを続けて、無事結婚となった。
今では子供が二人居る。
でも内心が順当かと言われたら、それは違うと答えるだろう。
アイツの言った謝罪が、感謝が、私達の心にずっと棘みたいに刺さり続けたままなのだ。
私にとって、彼と別れたらアイツに負けたような気がして。
彼にとっては多分、別の理由で。
私達は別れることが出来なかった。
例えどれだけ、心が冷めきっていたとしても。
私達はずっと二人で居なくてはならないんだと、互いに思ってしまっているから。
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