ウソツキは権利だけは欲する

かかし

文字の大きさ
上 下
50 / 74
お試し期間終了

毎日、たくさん、ずっと。

しおりを挟む
「………さて、本番するか。」
「だね………思った以上に時間掛かったし、疲れたけど頑張ろ!」

秋元と課長を無事に見送って、俺と康介は二人揃って伸びをする。
今からするのは荷造りだ。
俺と康介、二人一緒に住むために。

「康介。」
「んー?」

気持ち良さそうに伸びをしたままの康介を呼んで、軽く触れるだけのキスをする。
子供の戯れみたいなそれに、嬉しそうに笑ってくれるからたまらない。
もっと見たい。
毎日、たくさん、ずっと。

「家電、テレビデオだけで良かったんだよな?先に運ぶな。」
「うん、お願い!僕その間に食器詰めてるね。」

殆ど家具が無い部屋で、康介が唯一どうしても持って行きたいと熱望したのは劇場限定やチケット限定のグッズ達と………テレビデオだった。
分かる。俺も持って行きたい。
そこまで………というか、全く広くない部屋を予め考慮していたからだろう、肝心なグッズ達もそう多くない上にカトラリーとかタンブラーとかそういう実用的なものが多く、荷造りも今日一日で終わりそうではある。
まぁ、逆に捨てる家電とか家具とかの処分が大変になるだろうけど。

「あ、でも階段気を付けてね。てかそこまでは一緒に運ぼうか?」
「いや、この大きさなら大丈夫だろ。」

試しにコンセントを抜いて抱えてみるけど、ブラウン管テレビ特有の重さは確かにあるものの、ふらついたり踏ん張れなかったりする位じゃない。
本格的に抱え直して、扉だけ開けてもらう。
そこそこ重さがある分、逆に安定して持てるな。
まぁ、階段がクソボロいから下りるまでは全く油断できんが。

「………っしょと。」

流石に開けっ放しの車に積んだ頃にはだいぶ腰に違和感が出たが。
慎重に下り過ぎたか。
けど下手に揺らして中身に影響させんのも嫌だし、大見得を切った以上コケたら洒落にならんしな。

「さて、手伝いに行くか。」

テレビデオという(俺達的には)貴重品を積み込んでしまったので面倒だが扉を閉めて施錠もしっかりする。
これを失うのはマジ凹む。
つか思ったよりもテレビデオがそう大きくなかったから、予想以上に詰め込めそうだな。
元々、余ってた一部屋を康介のプライベートルームにする予定だったし、いっそ捨てる予定だった家電ごと全部持って行くか?
飲み物とかお菓子とかもその部屋に置いてても良いし。

「なぁ、康介ー!」
「あ、おかえりなさい。どうしたの?」

良いことを思い付いたという衝動のまま、軽やかに階段を上り康介の部屋に転がり込む。
早速提案して褒めてもらおう。
いっぱい頭撫でてもらおう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...