17 / 74
二ヶ月目
自覚、あんのかよ。
しおりを挟む
一ヶ月は思ったよりも早く経過した。
大きく変わったことといえば、部屋には行かないとはいえ康介を住んでるアパートまで送るようになったことと、そこまで送る前に駅じゃなくて人気の無い公園の駐車場に停めるようになったこと位か。
何の為に?
決まってる。
「んっ、耀司く、ん」
思いっきりイチャつくためだ。
今日も今日とて駐車場に停めて座席を倒してキスをする。
別に手を出す訳じゃない。
カーセックスは車壊れそうで嫌だし、そもそもお試しだっつーのに手を出したら軽い奴って見られる可能性が高い。
そうなったら折角のお試しが台無しになるだろうから、手を出したくねぇ訳じゃないが手は出さないと決めている。
とはいえスキンシップは取りたいので、こうして夜な夜な車の中でキスをしたり手を繋いだりとガキくせぇスキンシップで誤魔化すことにしている。
「よーじくん、おこってる?」
散々唇を食まれ、舌を甘噛され………息も絶え絶えで涙目になっている康介が、ゆっくりと身体を離した俺の頬をゆっくりと撫でた。
思わずムッと眉根を寄せてしまうのは、仕方ないことだろう。
別にこの甘やかな雰囲気を邪魔されたからじゃない。
「自覚、あんのかよ。」
「うん。ごめんね、僕が仕事遅いから待たせちゃったもんね。」
康介が俺の首に腕を回し、ぐっと引き寄せた。
その力の流れに逆らうことなく康介に抱き着けば、まるで子供をあやすようなゆっくりとした動作で俺の後頭部を優しく撫でてくれる。
きもちいい、けど。
「………さみしかった。」
康介の首元に擦り寄りながら、素直に言葉を口にする。
ここまで自分自身がダメになるとは思わなかった。
けれど康介は俺がどれだけ寄りかかっても拒絶せずに受け入れてくれる。
だったら康介はその責任を取るべきだ。
「うん、寂しい思いさせてごめんね。」
「ん。」
俺達は会社の中では相変わらず【今まで関わったことのない同期】の顔をする。
視線が交わっても、自然と逸らし会話一つしない。
それが【今までの俺達】だから、そこを貫き通さなければ隠せないからだ。
だからこそ、このトータル二時間にも満たない時間がどれ程貴重なことか。
「僕ね、今日言ってみたんだ。」
「………なにを?」
「勝手に仕事追加して来ようとした先輩に、僕の仕事じゃないから置かないでくださいって。」
康介の言葉に、俺は思わず顔を上げる。
穏やかに微笑んでいる康介だが、会社では大人しく窓際に居るような康介が逆らったとなると、雰囲気が悪くなったりイジメに発展したりとかしないのか?
大丈夫なのか?
「そんな顔しないでよー。」
「どんな顔だよ。」
「心配でたまらないって顔。」
けらけらと笑いながら、康介が俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜるが、心配するに決まっている。
ただでさえ、康介の居る場所は所謂【島流し】先だから、ピリついた奴か楽することしか考えてない無能ばかりが集まっている場所だ。
そんな中で一番下っ端の康介が逆らうことで起こりうるリスクはデカい。
「大丈夫だよ。遅く帰って寂しがりやで甘えたの恋人を悲しませたくないんですって言っておいたから。」
何が大丈夫なのかが分からない。
けれども康介が楽しそうなことが、何よりも恋人だと言ってもらえたことが嬉しくてたまらない。
「俺のことかよ。」
「君以外に誰が居るの?」
照れくさくて生意気な口を叩けば、康介が俺の額にキスをしながらそう言った。
お試し期間中なのは、ちゃんと分かっているし覚えている。
それでも康介がちゃんと【恋人】だと公言したのだから、康介の今の恋人は正真正銘俺だ。
「明日はもうちょい早く終わりそうか?」
「君程優秀じゃないけどね。なるべく早く終わらせるよ。」
じゃれつくように顎に甘噛すれば、楽しそうに康介が笑ってそう言った。
二人きりならこうしたスキンシップがOKになるのだから、尚更なるべく早く終わらせて欲しい。
………残業すんなよ、という大前提はもう諦めた。
「今週も、デートする?」
「する。」
デートはする。
当たり前だろ。
康介の予定が入ってない限りは俺のために空けてもらう。
「即答だねー。お家デートする?お外行く?」
「家。………と、ちょっと外。レンタル屋行ってセール品漁ろうぜ。」
この間入ってた広告で、近所の個人経営のレンタルDVD屋がレンタル落ち品の処分セールを週末に開催するという報せがあった。
俺が時々行くレンタル屋で、レンタル落ち品だから物によっては商品状態がめちゃくちゃ酷いものもあれば、かなり品質も良いやつもあって軽い運試し感覚で時折漁りに行く場所だ。
懐かしい作品もあったりするから、どうせなら一緒に漁りたい。
「なにそれ楽しそう!」
「楽しいぞ。クソみたいなやつ引いたりするけどな。」
そんなクソみたいなやつを康介は引き当てそうだなと思ったし、でもきっと俺達二人なら、そんなクソみたいなDVDの裏面だけで、ゲラゲラと笑っていられるんだろうなとも思った。
大きく変わったことといえば、部屋には行かないとはいえ康介を住んでるアパートまで送るようになったことと、そこまで送る前に駅じゃなくて人気の無い公園の駐車場に停めるようになったこと位か。
何の為に?
決まってる。
「んっ、耀司く、ん」
思いっきりイチャつくためだ。
今日も今日とて駐車場に停めて座席を倒してキスをする。
別に手を出す訳じゃない。
カーセックスは車壊れそうで嫌だし、そもそもお試しだっつーのに手を出したら軽い奴って見られる可能性が高い。
そうなったら折角のお試しが台無しになるだろうから、手を出したくねぇ訳じゃないが手は出さないと決めている。
とはいえスキンシップは取りたいので、こうして夜な夜な車の中でキスをしたり手を繋いだりとガキくせぇスキンシップで誤魔化すことにしている。
「よーじくん、おこってる?」
散々唇を食まれ、舌を甘噛され………息も絶え絶えで涙目になっている康介が、ゆっくりと身体を離した俺の頬をゆっくりと撫でた。
思わずムッと眉根を寄せてしまうのは、仕方ないことだろう。
別にこの甘やかな雰囲気を邪魔されたからじゃない。
「自覚、あんのかよ。」
「うん。ごめんね、僕が仕事遅いから待たせちゃったもんね。」
康介が俺の首に腕を回し、ぐっと引き寄せた。
その力の流れに逆らうことなく康介に抱き着けば、まるで子供をあやすようなゆっくりとした動作で俺の後頭部を優しく撫でてくれる。
きもちいい、けど。
「………さみしかった。」
康介の首元に擦り寄りながら、素直に言葉を口にする。
ここまで自分自身がダメになるとは思わなかった。
けれど康介は俺がどれだけ寄りかかっても拒絶せずに受け入れてくれる。
だったら康介はその責任を取るべきだ。
「うん、寂しい思いさせてごめんね。」
「ん。」
俺達は会社の中では相変わらず【今まで関わったことのない同期】の顔をする。
視線が交わっても、自然と逸らし会話一つしない。
それが【今までの俺達】だから、そこを貫き通さなければ隠せないからだ。
だからこそ、このトータル二時間にも満たない時間がどれ程貴重なことか。
「僕ね、今日言ってみたんだ。」
「………なにを?」
「勝手に仕事追加して来ようとした先輩に、僕の仕事じゃないから置かないでくださいって。」
康介の言葉に、俺は思わず顔を上げる。
穏やかに微笑んでいる康介だが、会社では大人しく窓際に居るような康介が逆らったとなると、雰囲気が悪くなったりイジメに発展したりとかしないのか?
大丈夫なのか?
「そんな顔しないでよー。」
「どんな顔だよ。」
「心配でたまらないって顔。」
けらけらと笑いながら、康介が俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜるが、心配するに決まっている。
ただでさえ、康介の居る場所は所謂【島流し】先だから、ピリついた奴か楽することしか考えてない無能ばかりが集まっている場所だ。
そんな中で一番下っ端の康介が逆らうことで起こりうるリスクはデカい。
「大丈夫だよ。遅く帰って寂しがりやで甘えたの恋人を悲しませたくないんですって言っておいたから。」
何が大丈夫なのかが分からない。
けれども康介が楽しそうなことが、何よりも恋人だと言ってもらえたことが嬉しくてたまらない。
「俺のことかよ。」
「君以外に誰が居るの?」
照れくさくて生意気な口を叩けば、康介が俺の額にキスをしながらそう言った。
お試し期間中なのは、ちゃんと分かっているし覚えている。
それでも康介がちゃんと【恋人】だと公言したのだから、康介の今の恋人は正真正銘俺だ。
「明日はもうちょい早く終わりそうか?」
「君程優秀じゃないけどね。なるべく早く終わらせるよ。」
じゃれつくように顎に甘噛すれば、楽しそうに康介が笑ってそう言った。
二人きりならこうしたスキンシップがOKになるのだから、尚更なるべく早く終わらせて欲しい。
………残業すんなよ、という大前提はもう諦めた。
「今週も、デートする?」
「する。」
デートはする。
当たり前だろ。
康介の予定が入ってない限りは俺のために空けてもらう。
「即答だねー。お家デートする?お外行く?」
「家。………と、ちょっと外。レンタル屋行ってセール品漁ろうぜ。」
この間入ってた広告で、近所の個人経営のレンタルDVD屋がレンタル落ち品の処分セールを週末に開催するという報せがあった。
俺が時々行くレンタル屋で、レンタル落ち品だから物によっては商品状態がめちゃくちゃ酷いものもあれば、かなり品質も良いやつもあって軽い運試し感覚で時折漁りに行く場所だ。
懐かしい作品もあったりするから、どうせなら一緒に漁りたい。
「なにそれ楽しそう!」
「楽しいぞ。クソみたいなやつ引いたりするけどな。」
そんなクソみたいなやつを康介は引き当てそうだなと思ったし、でもきっと俺達二人なら、そんなクソみたいなDVDの裏面だけで、ゲラゲラと笑っていられるんだろうなとも思った。
11
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま


傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる