20年掛けて地味子に報われない恋をし続けたイケメンの話

かかし

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―――初めて見た時、何だこの地味なチビと思った。

目に少しかかる程に長い前髪に、ひょろひょろの身体。
同じ学年のどの女子よりも真っ白で、だからって可愛げがある訳じゃない。
いじめられる程の目障りさじゃないが、居ても居なくても変わらない。
そんなアイツだったが、妙に目に付いたのは俺の幼馴染の所為でもある。

幼馴染は俺の親が務めてる会社の社長の息子で、俺は仲良くするように言われていた。
デブでブスでコミュ障のクセに偉そうで、俺は正直幼馴染が大嫌いだった。
俺は当時から自分の顔の良さもコミュ力の高さも自覚してたから、なんでこんな奴と一緒に居なきゃいけないんだってずっと思ってた。

小学校四年の頃だったか。
幼馴染が惚れてた子を俺の彼女にしてみたら幼馴染はすごくショック受けてて、俺は腹を抱えて笑いたくなるくらいに楽しかったから以降は幼馴染の好みの子を見付けたらわざとらしく優しくしたりして俺に惚れさせて遊んでいた。

そんな時、たまたまあの子と幼馴染が話しているのを見掛けた。

あの子に関して、俺は正直全く興味が無かった。
愛想も無いし、チビガリだし、そもそも俺も幼馴染も一度も同じクラスになったことがないから声を掛ける価値もない。
そう思っていたのに、あの子と幼馴染は図書室の隅っこ、一番目立たない場所で楽しそうに生き物辞典を開きながらヒソヒソと話していた。

「………カモノハシは、鳥じゃないの?」
「違うんだってさ。でも変な生き物だよなー。」

幼馴染はいつも偉そうで不遜な態度ばかりしていたのに、あの子と一緒に居る時は年相応の顔で話をしていた。
あの子もあの子で、楽しそうに笑っていた。
あの子が、幼馴染の新しい好きな子なんだろうか。
他人に免疫無さそうだし、直ぐに惚れそうだなと内心おかしくなった。
チョロくて楽しくないかもだけど、楽しそうな幼馴染がムカつくから良いかと次の日俺はあの子に話し掛けた。
仲良くしようよと。

「………え?なんで?」
「………は?」

だというのに、あの子から言われたのはそんな言葉だった。
なんでって、なんだよ。
思わず固まる俺に、話はもう終わったと思ったのかあの子はその場から立ち去ろうとしていた。
ちょっと待ってと腕を軽く掴んで、それでも優しくそう呼び止めればめちゃくちゃ不快そうな顔をされた。

「なに?」
「いや、ほら、アイツとは仲良くしてるだろう?僕達幼馴染なんだ。だから僕とも仲良くして欲しいなって思って………」

言葉を重ねれば重ねる程、あの子は不快そうに眉根を寄せていく。
どうして?
どうしてそんな顔をするの?
存在が不快だと言わんばかりの、そんな顔をされた事なんて今まで一度もなかったからどうしたらいいのか分からなくなる。
アイツとは楽しそうにしてるのに、なんで?

「アホくさ。私は君と仲良くしたくないから。」

腕を振り払い、律儀にバイバイと手を振ってあの子はその場を後にした。
残された俺の虚しさたるや!
悔しくて悔しくて仕方なかった。
俺はその憤りのまま、次の日あの子とアイツは付き合ってると噂を流した。
小学生の噂は、広がるのが早い。
クラスメイト達のからかいの声に、俺をコケにしたあの子が辛い目に遭えばいいと思った。

ぞ、友よ!」
「ああ?うおっ!」

しかしあの子は何を思ったのか、わざわざ別のクラスから嬉々として俺と幼馴染が居るクラス駆け寄ると、まるで舞台俳優のように仰々しくそう叫びながら幼馴染に抱き着いた。
俺も他の子達も、何が起きたのか一瞬理解出来なかった。
あの子を泣かすつもりだったのに、どうして。

「図書室でしか話し掛けられないの面倒だったんだよね。嬉しいね、友よ。」
「嬉しくねぇよ。お前が四六時中付き纏ってきてうるさいから時間制限付けてたのに………」

誰だ、いらんこと言った奴。
ぶつくさと、それでもされるがままの幼馴染の言葉を聞いて、俺はやり方を間違えたと思った。
恐らく、付き合ってる訳ではないがあの子はこの噂を逆手にとって幼馴染と堂々と過ごすつもりなのだろう。
腹立ちのまま、俺はギュッと握り拳を作った。

「………っ!」

その瞬間をまるで分かっていたかのように、一瞬だけ憎悪の表情を浮かべたあの子と目が合った。
あ、これは幼馴染が下手なからかわれ方しない為の行動でもあるのかと、気付いた時には遅かった。
あの子は次の授業があるからと去って行き、なんだ噂は本当だったのかとつまらないと言わんばかりにその場に居た全員が納得して静かになった。
あの子の勢いがあまりにも凄かったから、誰もそれ以上幼馴染に何も聞かなかった。
俺はただ、あの子に口実を与えそれ以上に恨まれただけに終わった。

そこからずっと、二人は一緒に居る。
あの子が仰々しく話し掛けては幼馴染が嫌がり、そして身を寄せあって何かを楽しそうに話す。
それがいつもの光景となっていた。
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