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最終話

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決戦は金曜日、とはまた違うけれども。
兎に角俺にとって多分人生で一度きりの大事な金曜日が来た。
朝からちょっとしたケチは付いたけれど、これ以上は何もない事を祈ろう。
それにしても、コウジはいつ何をするつもりなのだろうか。
何を以て、俺を落としたとなるのだろうか。
そもそも俺から告白的なのをした方が良いのでは?
だって、チョロいと言われようが俺はちゃんとコウジが好きだ。
例えコウジにからかわれていただけだとしても、仕方ないと飲み込める位には好きだ。

「今日は最初から一緒にお昼食えるな。誠也のお母さんに感謝しなきゃ。」

ニコニコとコウジは笑う。
俺も母さんみたいに美味しい料理を作れるようになれば、こんな風に笑ってくれるだろうか。
月曜日からちゃんと、料理習ったり手伝ったりしよう。
コウジが俺を甘やかしてくれてる分、俺もいっぱい返したい。

「俺も一緒にお昼食えるの嬉しい。」

取り敢えず、素直に気持ちを伝えることから始めてみよう。
俺の方から横を歩くコウジの手を繋いでみる。
ちょっと緊張するけど、不思議と怖くはない。
ホモだのなんだのと嫌悪の対象になるだろうとは簡単に予測できるけれど、コウジが受け入れてくれるならば何も気にする必要はないとすら思える。

「手、繋いで大丈夫?」
「平気!てか寧ろ俺が繋ぎたい!」

でもコウジはもしかしたら違うかもしれないと思って恐る恐る聞いてみたら、結構食い気味に肯定されたからホッとした。
コウジと手を繋ぐのは好きだ。
手を繋ぐだけじゃなくて、コウジに触れてもらえるとすごく落ち着く。
時折俺の唇を撫でるコウジの指が、実は一番大好きだった。
………やっぱり、俺から告白しよう。
多分、コウジが思っているよりも俺はコウジのことが好きだから。

「コウジ、今日お昼食ったら時間ちょうだい。」
「ん?良いよ。俺の時間は誠也の物だし誠也の為にしか使わないけど。」

決めた。
お昼食ったら告白しよう。
ないとは思うし思いたいけど、もしも振られた時に気まずい思いをしながら飯を食うのは嫌だから。
………大丈夫、だよな。
コウジは俺の彼氏になってくれるよな。

「誠也どうした?」

手を繋ぎながらピッタリと寄り添うと、コウジが心配そうな顔で俺の顔を覗き込みながら唇を撫でてくれた。
カサカサで、なんの面白味もない唇だろうに。
手入れとかした方が良いのか?
でもそうしたらコウジの手がベタベタになったりしないかな。

「俺、コウジの手がベタベタになるの嫌だ」
「ん?何の話??」

話の前後が分からないコウジが不思議そうな顔をしているが、俺の中では話は終わっているのでコウジに頭を押し付けて話を切りあげるアピールをした。
通じるかは分からないけれど。

「どうしよう………誠也が可愛い………!」
「ねぇ、お二人さんさぁ………イチャつくのは良いけどとっとと教室行かない?ヨッシーなんてとっくに行っちゃったけど。」

どうやら通じてないらしいが、それでもコウジが教室行こうかと促してくれたので通じたという事にして素直について行く。
ガヤガヤと騒がしい校内の生徒たちは、最近手を繋いで帰ってたことが理由か特にコチラを見ることもなく各々の教室に向かっていく。
全員が全員、こういう態度を取ってくれる訳じゃないだろう。
コウジに振られた女子の中には、俺を恨んでる子も居る筈だ。
でも俺は、その感情も受け止めようと思った。
中学の頃みたいに理不尽にただ耐えて、独りで勝手に絶望するんじゃなくてコウジと話し合いながらきちんと向き合っていこうと思った。
女子達にとって、俺はコウジを横取りした身の程知らずだろうから。

「コウジ。」
「ん?どうした?」

甘い声。
優しい顔。
俺の好きな人。
身の程なんて死ぬ程分かってる。
本当はコウジに相応しくないし、近付くべきじゃないっていうのも分かってる。

「呼んだだけ。」
「ん"っ!可愛い!!」
「ねぇー、早く行こうよー………」

でも、コウジが俺に手を伸ばしてくれたんだ。
だからその手を取る権利は、俺にあるってことだろう?
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