身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく

かかし

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違う学校なのが苦しい。
誠也に会いたい。
同じ学校だったら誠也に会えるのに。
きっとそうしていたら俺だって誠也の恋人になれたのに………

鬱々とした気持ちのまま学校へと向かう。
中学の頃から何かと絡んでくる奴らが俺に話し掛けてくるが、邪魔で仕方ない。
女達の甲高い媚びる声も、男達の距離感の近さも―――

「………え?」
「咲仁、どうしたの?」

俺の家から駅に行くには、誠也の家の前を通らなくてはならない。
もう誠也は行っている時間だろうからとますます沈んだ気持ちな俺の目の前に、信じられない光景が広がっていた。

誠也の母親から優しく背中を押され楽しそうに誠也の家から出る、誠也とアイツ………

まさか誠也の家に泊まったのか?
なんで!?
俺は誠也の両親からも関わることを許されてないのに!
どうして、どうしてアイツばっかり!
誠也からも受け入れられて、誠也の両親からも受け入れられて!

「誠也!」

堪らず誠也を呼ぶ。
誠也だって俺の傍に居たい筈なのに、アイツが邪魔をする。
いつもいつも!
嗚呼、アイツが邪魔で邪魔で仕方ない!
俺の方に来たいだろうに、アイツが邪魔してるから誠也は動けないでいるんだ!
どうやって誠也の両親に取り入ったのかは知らないが、正気に戻してあげないと!

「あっれー?ヤッスーとマッキーじゃん!おっはよー!」

誠也に向かって手を伸ばそうとした瞬間、のんびりとしたわざとらしい声が聞こえた。
ゆっくりと視線をそっちに向ければ、そこに居たのは誠也に近付く地味眼鏡と、ひどく整った顔立ちをした男が。

「え?てかマッキー最寄り駅ここだっけ?」

整った顔立ちをした男はそう言いながら俺達を追い越すとアイツの背中を押しながら先へと進んだ。
………しまった、誠也も連れて行かれてしまう!

「康田と蒔田おはよう。親御さん公認だったんだな。」

焦る俺を他所に地味眼鏡も普通に誠也に話し掛けながら歩くものだから、俺のために止まってくれていた誠也も釣られて歩き出してしまう。

「ねぇ咲仁待ってよぉ!」

慌てて追いかけようと思ったら、気持ち悪い甘ったれた女から腕を掴まれて足が止まる。
その間に誠也もアイツも朝の雑踏に紛れてしまって、目的地は分かっているといえども人目があり過ぎて動けなくなってしまった………。

「さっきのって康田か?アイツまだ咲仁の周りチョロチョロしてんのか?」
「………は?どういう意味だ?」

なんで誠也が俺の周りをチョロチョロしてるって表現になるんだ?
しかもまるで、それに対して俺が嫌がってるみたいなニュアンス。
ギリギリと心臓が軋む。
嫌な予感がした。

「だってアイツ地味陰キャのクセに身の程弁えず咲仁の周りうろついてだろ?」
「咲仁だって鬱陶しいだろうから、分からせてやったの!」

名前も知らない男と女がニヤニヤと笑う。
意味が全く分からない。
俺が誠也の傍に居たくて必死だった時に、何をしたって?

「お………お前らのせいか!」
「咲仁?」
「えっ?なにどうしたの?」

なんで誠也が俺の傍を離れたのかずっと分からなかった。
でも漸く分かった。
コイツらが変な勘違いをしたせいで、俺はコイツらごと誠也から捨てられたのだと!

「お前らなんてどうだっていいんだよ!俺は誠也と一緒に居たかった!誠也さえ居ればそれで良かったのに!」
「な………何言って………」

俺に伸ばそうとするその手を振り払う。
俺の顔しか見てないクセに、偉そうにするな。
俺のことをステータスとしか思ってないクセに、誠也を傷付けるなんて!

「俺が孤立しようがどうだっていいけど、誠也を傷付けたこと、絶対に許さねぇから!」

こんな奴らのせいで!
身の程を弁えないコイツらのせいで!
あんな奴に、誠也を奪われる羽目に………
悔し涙が止まらない。
こんな奴らのせいで、誠也を失うことになるなんて………
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