身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく

かかし

文字の大きさ
上 下
18 / 24
幕間

しおりを挟む
―――きっと誠也は脅されている。

俺は誠也を守る為に、毎日誠也をつけた。
朝はどうやらアイツは居ないようだったから、誠也には悪いけど何かあった時にすぐに駆けつけられるように朝の見守りは辞めた。
夕方の体力を万全な状態にする為だ。

アイツは今まで誠也と関わってなかったクセに、何故かあの日から当たり前のように誠也の隣に居た。
誠也も誠也で、駅を出た後は何故かアイツと手を繋いで歩いていた。
時には寄り添うように、楽しそうに笑いながら歩いている。

どうして?
そこは俺の場所だろう?

俺は下心を抱いていたから捨てられたのに、どう見たって誠也に下心を抱いてるソイツは何で傍に居ることを許されているんだ?
手を繋いで、寄り添って歩けるんだ?
時折アイツの家に行って数時間は出て来ない誠也に発狂しそうになる。
何をしてるの?
そんなチャラそうな奴、誠也には相応しくないのに!

『なぁ、コウジ』
『ん?』
『ちょっと、寄り道して帰りたい。』

それなのに、誠也はアイツを誘うようなことを言い出してしまう!
後ろから聞いてるだけだから、二人がどんな表情をしているのかは分からない。
それでも誠也の聞いたことないような甘えたような声で、想像はつく。
思わず駆け寄ろうとして、けれども今出て行くのはまだ得策ではないと我に返る。
その瞬間アイツが振り返ってこちらを見てきたのでバレたかと思ったが、そうではなかったらしい。
また再び誠也の方を向いて、歩き始めた。

気付かれてしまっては見守れない。
俺は仕方なく二人からもう少しだけ距離をとる事にした。
でもそうなると話していることが聞こえない。
アイツが誠也を脅している証拠を取って誠也を守らないといけないのに………。

そう思っていると、アイツは誠也の手をグイグイと引っ張ると歩く速度を早めだした。
急な出来事に、やっぱりアイツは暴力を振るうつもりなんだと確信した。
誠也を守らなくては。
俺は走って二人の後を追った。
二人がどこに行こうとしているのかは分からなかったが、凡その検討はつく。
この辺りで二人きりになれるのは、近所にある公園だ。
そこへ急ぐと案の定、二人はそこに居てそして―――

『好きだよ、誠也。今日はまだ友達として居るけど、明日から本気出すから覚悟して。』

キスを、していた。
誠也はゲイが嫌いで、だから俺は―――
そう信じていたものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
アイツの背中で誠也がどんな表情をしているのかは見えないけれど、それでも縋るように袖を掴む指で分かってしまう。
誠也は、アイツを受け入れていると!

なんで!?どうして!?

立ち上がったと思ったら、今度は指を絡ませ合って手を繋ぐ。
さっきまでとは違う。
恋人繋ぎで!

『誠也!お前何してるんだ!』

なんで俺はダメで、ソイツは良いんだ!?
男も大丈夫なら、俺で良かった筈だろう!?
俺はそんな思いで誠也に詰め寄ろうとしたが、アイツが庇うように抱き締めて俺を誠也の視線から隠した。
そこは俺の場所なのに!

『お前が何してんだ………駅からずっと尾行してたろ………』

アイツは今日だけではなく今までの見守りも気付いていたらしい。
ストーカーだと鼻で笑いやがった。
お前みたいなのが誠也に襲いかかる可能性があるから、否、そもそもお前が誠也を奪うから!

『幼馴染だからって誠也を束縛して良いわけじゃないし、そもそもお前誠也の好意に胡座かいてただけで何の努力もしてねぇだろ。』
『………で?誠也は俺の恋人だけど。』

いちいち癪に障る言い方でアイツは俺を煽ってくる。
俺は努力した。
誠也に離れて欲しくなくて、誠也の傍に居たくて。
誠也の恋人に、なりたくて。
それなのにどうして!
どうしてお前みたいなのが誠也の恋人になれるんだ!?

『ごめんな、俺、お前のことをもう好きじゃない。俺に親友が居るならそれはコウジだし、これから先関係が進むとしてもコウジが良い。』

アイツの背中に腕を回して、誠也はそう言った。
どうして?
どうして俺はお前に好かれなくて、アイツはお前に愛される?
俺は努力した。
そうだろう?
それなのに、誠也が俺を捨てたのに!

『笠原は確かに何もしてない。俺に暴力を振るったわけでも、罵詈雑言を浴びせた訳でもない。でも逆に、何もしてくれなかった。』
『だから俺は、お前の事が名前も呼びたくない程に嫌いなんだ。』

何もしてないって、なんだそれ。
なにかして欲しいって言ってくれたら、俺だってやった。
俺は誠也の願いを何だって叶えられるのに!
それなのにどうして俺ばかりが!
俺ばかりが嫌われなくてはならない?
俺ばかりが会いたくないと拒絶されなければならない!?
俺はこんなにも愛してるのに!
きっと、お前と初めて会った時からずっと!

アイツが憎い!
誠也と手を繋いでるだけでも許されないことなのに誠也の唇に無断で触れて、誠也を抱き締めて。
その許されざる全てを、誠也に受け入れてもらって!
許さない、絶対に………絶対に誠也を、取り返してみせる!

俺から背中を向けて去っていくアイツを睨み付けながら、俺はそう誓った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

世界の中心は可愛い君♡

なお
BL
本編完結済 平凡な主人公が、恋したいな!!と思って別のクラスの美形くんに恋していくお話です🫶 番外編をちょこちょこ出そうと思っています! pixivの方で公開させて頂いてました!

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

ガラス玉のように

イケのタコ
BL
クール美形×平凡 成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。 親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。 とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。 圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。 スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。 ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。 三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。 しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。 三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

なぜか大好きな親友に告白されました

結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。 ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。

処理中です...