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幕間
②
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―――きっと誠也は脅されている。
俺は誠也を守る為に、毎日誠也をつけた。
朝はどうやらアイツは居ないようだったから、誠也には悪いけど何かあった時にすぐに駆けつけられるように朝の見守りは辞めた。
夕方の体力を万全な状態にする為だ。
アイツは今まで誠也と関わってなかったクセに、何故かあの日から当たり前のように誠也の隣に居た。
誠也も誠也で、駅を出た後は何故かアイツと手を繋いで歩いていた。
時には寄り添うように、楽しそうに笑いながら歩いている。
どうして?
そこは俺の場所だろう?
俺は下心を抱いていたから捨てられたのに、どう見たって誠也に下心を抱いてるソイツは何で傍に居ることを許されているんだ?
手を繋いで、寄り添って歩けるんだ?
時折アイツの家に行って数時間は出て来ない誠也に発狂しそうになる。
何をしてるの?
そんなチャラそうな奴、誠也には相応しくないのに!
『なぁ、コウジ』
『ん?』
『ちょっと、寄り道して帰りたい。』
それなのに、誠也はアイツを誘うようなことを言い出してしまう!
後ろから聞いてるだけだから、二人がどんな表情をしているのかは分からない。
それでも誠也の聞いたことないような甘えたような声で、想像はつく。
思わず駆け寄ろうとして、けれども今出て行くのはまだ得策ではないと我に返る。
その瞬間アイツが振り返ってこちらを見てきたのでバレたかと思ったが、そうではなかったらしい。
また再び誠也の方を向いて、歩き始めた。
気付かれてしまっては見守れない。
俺は仕方なく二人からもう少しだけ距離をとる事にした。
でもそうなると話していることが聞こえない。
アイツが誠也を脅している証拠を取って誠也を守らないといけないのに………。
そう思っていると、アイツは誠也の手をグイグイと引っ張ると歩く速度を早めだした。
急な出来事に、やっぱりアイツは暴力を振るうつもりなんだと確信した。
誠也を守らなくては。
俺は走って二人の後を追った。
二人がどこに行こうとしているのかは分からなかったが、凡その検討はつく。
この辺りで二人きりになれるのは、近所にある公園だ。
そこへ急ぐと案の定、二人はそこに居てそして―――
『好きだよ、誠也。今日はまだ友達として居るけど、明日から本気出すから覚悟して。』
キスを、していた。
誠也はゲイが嫌いで、だから俺は―――
そう信じていたものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
アイツの背中で誠也がどんな表情をしているのかは見えないけれど、それでも縋るように袖を掴む指で分かってしまう。
誠也は、アイツを受け入れていると!
なんで!?どうして!?
立ち上がったと思ったら、今度は指を絡ませ合って手を繋ぐ。
さっきまでとは違う。
恋人繋ぎで!
『誠也!お前何してるんだ!』
なんで俺はダメで、ソイツは良いんだ!?
男も大丈夫なら、俺で良かった筈だろう!?
俺はそんな思いで誠也に詰め寄ろうとしたが、アイツが庇うように抱き締めて俺を誠也の視線から隠した。
そこは俺の場所なのに!
『お前が何してんだ………駅からずっと尾行してたろ………』
アイツは今日だけではなく今までの見守りも気付いていたらしい。
ストーカーだと鼻で笑いやがった。
お前みたいなのが誠也に襲いかかる可能性があるから、否、そもそもお前が誠也を奪うから!
『幼馴染だからって誠也を束縛して良いわけじゃないし、そもそもお前誠也の好意に胡座かいてただけで何の努力もしてねぇだろ。』
『………で?誠也は俺の恋人だけど。』
いちいち癪に障る言い方でアイツは俺を煽ってくる。
俺は努力した。
誠也に離れて欲しくなくて、誠也の傍に居たくて。
誠也の恋人に、なりたくて。
それなのにどうして!
どうしてお前みたいなのが誠也の恋人になれるんだ!?
『ごめんな、俺、お前のことをもう好きじゃない。俺に親友が居るならそれはコウジだし、これから先関係が進むとしてもコウジが良い。』
アイツの背中に腕を回して、誠也はそう言った。
どうして?
どうして俺はお前に好かれなくて、アイツはお前に愛される?
俺は努力した。
そうだろう?
それなのに、誠也が俺を捨てたのに!
『笠原は確かに何もしてない。俺に暴力を振るったわけでも、罵詈雑言を浴びせた訳でもない。でも逆に、何もしてくれなかった。』
『だから俺は、お前の事が名前も呼びたくない程に嫌いなんだ。』
何もしてないって、なんだそれ。
なにかして欲しいって言ってくれたら、俺だってやった。
俺は誠也の願いを何だって叶えられるのに!
それなのにどうして俺ばかりが!
俺ばかりが嫌われなくてはならない?
俺ばかりが会いたくないと拒絶されなければならない!?
俺はこんなにも愛してるのに!
きっと、お前と初めて会った時からずっと!
アイツが憎い!
誠也と手を繋いでるだけでも許されないことなのに誠也の唇に無断で触れて、誠也を抱き締めて。
その許されざる全てを、誠也に受け入れてもらって!
許さない、絶対に………絶対に誠也を、取り返してみせる!
俺から背中を向けて去っていくアイツを睨み付けながら、俺はそう誓った。
俺は誠也を守る為に、毎日誠也をつけた。
朝はどうやらアイツは居ないようだったから、誠也には悪いけど何かあった時にすぐに駆けつけられるように朝の見守りは辞めた。
夕方の体力を万全な状態にする為だ。
アイツは今まで誠也と関わってなかったクセに、何故かあの日から当たり前のように誠也の隣に居た。
誠也も誠也で、駅を出た後は何故かアイツと手を繋いで歩いていた。
時には寄り添うように、楽しそうに笑いながら歩いている。
どうして?
そこは俺の場所だろう?
俺は下心を抱いていたから捨てられたのに、どう見たって誠也に下心を抱いてるソイツは何で傍に居ることを許されているんだ?
手を繋いで、寄り添って歩けるんだ?
時折アイツの家に行って数時間は出て来ない誠也に発狂しそうになる。
何をしてるの?
そんなチャラそうな奴、誠也には相応しくないのに!
『なぁ、コウジ』
『ん?』
『ちょっと、寄り道して帰りたい。』
それなのに、誠也はアイツを誘うようなことを言い出してしまう!
後ろから聞いてるだけだから、二人がどんな表情をしているのかは分からない。
それでも誠也の聞いたことないような甘えたような声で、想像はつく。
思わず駆け寄ろうとして、けれども今出て行くのはまだ得策ではないと我に返る。
その瞬間アイツが振り返ってこちらを見てきたのでバレたかと思ったが、そうではなかったらしい。
また再び誠也の方を向いて、歩き始めた。
気付かれてしまっては見守れない。
俺は仕方なく二人からもう少しだけ距離をとる事にした。
でもそうなると話していることが聞こえない。
アイツが誠也を脅している証拠を取って誠也を守らないといけないのに………。
そう思っていると、アイツは誠也の手をグイグイと引っ張ると歩く速度を早めだした。
急な出来事に、やっぱりアイツは暴力を振るうつもりなんだと確信した。
誠也を守らなくては。
俺は走って二人の後を追った。
二人がどこに行こうとしているのかは分からなかったが、凡その検討はつく。
この辺りで二人きりになれるのは、近所にある公園だ。
そこへ急ぐと案の定、二人はそこに居てそして―――
『好きだよ、誠也。今日はまだ友達として居るけど、明日から本気出すから覚悟して。』
キスを、していた。
誠也はゲイが嫌いで、だから俺は―――
そう信じていたものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
アイツの背中で誠也がどんな表情をしているのかは見えないけれど、それでも縋るように袖を掴む指で分かってしまう。
誠也は、アイツを受け入れていると!
なんで!?どうして!?
立ち上がったと思ったら、今度は指を絡ませ合って手を繋ぐ。
さっきまでとは違う。
恋人繋ぎで!
『誠也!お前何してるんだ!』
なんで俺はダメで、ソイツは良いんだ!?
男も大丈夫なら、俺で良かった筈だろう!?
俺はそんな思いで誠也に詰め寄ろうとしたが、アイツが庇うように抱き締めて俺を誠也の視線から隠した。
そこは俺の場所なのに!
『お前が何してんだ………駅からずっと尾行してたろ………』
アイツは今日だけではなく今までの見守りも気付いていたらしい。
ストーカーだと鼻で笑いやがった。
お前みたいなのが誠也に襲いかかる可能性があるから、否、そもそもお前が誠也を奪うから!
『幼馴染だからって誠也を束縛して良いわけじゃないし、そもそもお前誠也の好意に胡座かいてただけで何の努力もしてねぇだろ。』
『………で?誠也は俺の恋人だけど。』
いちいち癪に障る言い方でアイツは俺を煽ってくる。
俺は努力した。
誠也に離れて欲しくなくて、誠也の傍に居たくて。
誠也の恋人に、なりたくて。
それなのにどうして!
どうしてお前みたいなのが誠也の恋人になれるんだ!?
『ごめんな、俺、お前のことをもう好きじゃない。俺に親友が居るならそれはコウジだし、これから先関係が進むとしてもコウジが良い。』
アイツの背中に腕を回して、誠也はそう言った。
どうして?
どうして俺はお前に好かれなくて、アイツはお前に愛される?
俺は努力した。
そうだろう?
それなのに、誠也が俺を捨てたのに!
『笠原は確かに何もしてない。俺に暴力を振るったわけでも、罵詈雑言を浴びせた訳でもない。でも逆に、何もしてくれなかった。』
『だから俺は、お前の事が名前も呼びたくない程に嫌いなんだ。』
何もしてないって、なんだそれ。
なにかして欲しいって言ってくれたら、俺だってやった。
俺は誠也の願いを何だって叶えられるのに!
それなのにどうして俺ばかりが!
俺ばかりが嫌われなくてはならない?
俺ばかりが会いたくないと拒絶されなければならない!?
俺はこんなにも愛してるのに!
きっと、お前と初めて会った時からずっと!
アイツが憎い!
誠也と手を繋いでるだけでも許されないことなのに誠也の唇に無断で触れて、誠也を抱き締めて。
その許されざる全てを、誠也に受け入れてもらって!
許さない、絶対に………絶対に誠也を、取り返してみせる!
俺から背中を向けて去っていくアイツを睨み付けながら、俺はそう誓った。
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