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二話目
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見たかった映画は、俺が生まれた年くらいに公開されていた映画だ。
古典的なSF小説が原作で、全く知らなかったのだがこの間ネットでその話題が出ていて面白そうだと思っていた映画。
今度レンタルDVDを借りようかと思ってると少し話題に出しただけだけど、コウジはコレだったよねとウキウキとした声色でその映画の画面を出した。
「そうそれ!SFだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。字幕と吹き替えどっちで観る?」
「字幕で!」
洋画は字幕で観たい派だ。
俳優さん達の生の声を聴きながら、演技を観る。
本当は字幕も消せるようになったら良いんだろうけど、そこまでのリスニング力も英語力も無い悲しみ。
でも良いんだ。
字幕でも十分映画は楽しめるもんね。
「ポップコーン開けようぜ。」
「なぁ、ポップコーンもカップに入れてみない?映画館のポップコーンって容器に入ってるじゃん。」
コウジの言葉に確かにと頷く。
その発想は無かったなー。
Sサイズ位のポップコーンになるけど、それでも映画館気分はバッチリだ。
後は再生を押すだけの状態の画面はそのままに、カップにコーラとポップコーンを注ぎ分ける。
「いつものポップコーンなのに、なんかうまそー!」
「ね!早く再生しよう!」
いけないとは分かっていながらも、気分を出すために部屋を暗くして再生する。
テレビから気持ち離して並べて置いた座椅子に腰掛けて、ウキウキとした気持ちで流れる映像に釘付けになった。
製作途中で亡くなるまでは原作者が脚本として携わっていた程に拘っていたのだろう映画は、原作そのもののSF小説を知らない俺でも十分に楽しめた。
時々ポップコーンを継ぎ足しながらも、先の読めないコメディな展開に胸を高鳴らせる。
もっともっとと強請っても時間とは有限で、キラキラとした気持ちのまま映画はスタッフロールを迎えた。
「面白かった………!」
「そうだな。俺SFってシリアスでドロドロとしたのばっかりって思ってたけど、これめちゃくちゃ面白かった!」
俺もコウジもスタッフロールは全部終わるまで観る派なのでじっくりと楽しんだ後、ゴミを片付けながら会話を楽しむ。
映画が面白かったおかげかポップコーンもドリンクもあまり進んでなかったので、そのまま机を出して映画の後に寄ったカフェな気分でツマミながら感想を語り、次は何を観ようかと話し合う。
「今日は俺の観たかったやつ観たから、次はコウジの観たいやつがいい。」
「んー、俺あんまり映画詳しい訳じゃないから、誠也が観たことあるやつかもしれないけど大丈夫?」
「いいよ。俺だって詳しい訳じゃないし。」
今回のだって、たまたまネットで話題になってたのを見たから気になったってだけだし。
俺がそう言うと、コウジはホッと息を吐いてタイトルを教えてくれた。
でもそのタイトル、俺知らない。
「なに、それ」
「これも結構前の映画なんだけどさ、何か実話が元らしくって………不倫物ってやつなのかな?」
キョトンと首を傾げながら、コウジはそう言った。
不倫物って………さっきSFがシリアスでドロドロしたのばっかりって言い方してたのに、お前そんなもうあらすじ聞かなくても分かるくらいシリアスでドロドロした映画観たいのかよ。
「十五禁でさ、存在知った時にはまだ観れないし、だからと言って一人で観るのもなーみたいな。」
十五禁な不倫物の時点でお察し。
はいはいそういう事ねって思うけど、お前どうせ十八禁な経験してんだろ?と、童貞の僻みが喉まで込み上げてくる。
まあ口にはしないけど。
しかも俺だって健全な男子。
気にならない訳じゃないのだ。
「不倫とか浮気とか、したいって思うの?」
サクサクとポップコーンを頬張りながら、そんな事を口にしてみる。
簡単に頷いたら、がっついてる童貞みたいで嫌だなって思ったから。
まあがっついてる童貞だけどな。
「いや?寧ろ好きじゃない。意外と一途よ、俺って」
コウジがふんわりと笑う。
頭に浮かんだのは、例の【コウジの好きな人】。
どんな子なんだろうかと思いながらポップコーンを摘もうとすると、コウジが手を伸ばして俺の口の端に着いてたフレーバーの塊を指で拭った。
………美味しいから後で舐めようと思ってたのに。
「好きな子には尽くしたくなっちゃうタイプ。」
「なのに観たいの?」
「気になるじゃん。エッチなのも、浮気する奴の思考も。」
そうだろうか?
いや、エッチなのは気になるけど、浮気する奴の思考は全く以て気にならない。
でもコウジはもしかしたら、自分には抱きそうにない思考が気になるのかもしれない。
「映画は人生の覗き見なんだって。」
「誰の言葉?」
「俺の親戚。金払って、他人の人生覗き見して共感したり批判したり疑似体験したり………そう言うのが映画鑑賞って思えば楽よ?って昔言われた事ある。」
楽、の意味が分からないけれど、なるほど確かにそういうものなのかもしれない。
主人公という自分とは全く関係無い人物の人生を通して、自分ではとても出来ない体験をしたり、思考をしたりする。
「浮気とかしてみたいとも思えないけど、浮気する奴の思考ってどうなってんだろうなって気になるんだよ。ほら、三年の有栖川先輩とかそうじゃん」
「有栖川先輩イズ誰」
「あー、あの先輩めっちゃイケメンだもんな。三年の女とっかえひっかえしてる先輩だよ。委員会同じでちょくちょく顔合わせるんだけど、だからって聞く訳にもいかないしさ。」
なるほど?
確かに先輩に浮気するのどんな気持ち?とか聞こうものなら大乱闘間違いなしだもんな。
気になったからといって経験する訳にもいかないし。
そうなると人生の覗き見がイイ感じに知的好奇心を満たしてくれるのだろう。
「でも誠也が嫌なら観ない。どうする?」
むにっと、コウジの指が俺の唇を撫でる。
よっぽどポップコーンのフレーバーを付けていたらしい。
言ったらちゃんと拭くのに。
「エッチなの観たい」
「素直だなぁ!じゃあ次は観ようぜ。」
AVじゃないけどなと笑われるも、マジモンのAVを
コウジと観るのは気まずさ大爆発なのでちょっと遠慮したい。
ストーリー重視な映画にちょっとエッチなシーン位が丁度いい。
古典的なSF小説が原作で、全く知らなかったのだがこの間ネットでその話題が出ていて面白そうだと思っていた映画。
今度レンタルDVDを借りようかと思ってると少し話題に出しただけだけど、コウジはコレだったよねとウキウキとした声色でその映画の画面を出した。
「そうそれ!SFだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。字幕と吹き替えどっちで観る?」
「字幕で!」
洋画は字幕で観たい派だ。
俳優さん達の生の声を聴きながら、演技を観る。
本当は字幕も消せるようになったら良いんだろうけど、そこまでのリスニング力も英語力も無い悲しみ。
でも良いんだ。
字幕でも十分映画は楽しめるもんね。
「ポップコーン開けようぜ。」
「なぁ、ポップコーンもカップに入れてみない?映画館のポップコーンって容器に入ってるじゃん。」
コウジの言葉に確かにと頷く。
その発想は無かったなー。
Sサイズ位のポップコーンになるけど、それでも映画館気分はバッチリだ。
後は再生を押すだけの状態の画面はそのままに、カップにコーラとポップコーンを注ぎ分ける。
「いつものポップコーンなのに、なんかうまそー!」
「ね!早く再生しよう!」
いけないとは分かっていながらも、気分を出すために部屋を暗くして再生する。
テレビから気持ち離して並べて置いた座椅子に腰掛けて、ウキウキとした気持ちで流れる映像に釘付けになった。
製作途中で亡くなるまでは原作者が脚本として携わっていた程に拘っていたのだろう映画は、原作そのもののSF小説を知らない俺でも十分に楽しめた。
時々ポップコーンを継ぎ足しながらも、先の読めないコメディな展開に胸を高鳴らせる。
もっともっとと強請っても時間とは有限で、キラキラとした気持ちのまま映画はスタッフロールを迎えた。
「面白かった………!」
「そうだな。俺SFってシリアスでドロドロとしたのばっかりって思ってたけど、これめちゃくちゃ面白かった!」
俺もコウジもスタッフロールは全部終わるまで観る派なのでじっくりと楽しんだ後、ゴミを片付けながら会話を楽しむ。
映画が面白かったおかげかポップコーンもドリンクもあまり進んでなかったので、そのまま机を出して映画の後に寄ったカフェな気分でツマミながら感想を語り、次は何を観ようかと話し合う。
「今日は俺の観たかったやつ観たから、次はコウジの観たいやつがいい。」
「んー、俺あんまり映画詳しい訳じゃないから、誠也が観たことあるやつかもしれないけど大丈夫?」
「いいよ。俺だって詳しい訳じゃないし。」
今回のだって、たまたまネットで話題になってたのを見たから気になったってだけだし。
俺がそう言うと、コウジはホッと息を吐いてタイトルを教えてくれた。
でもそのタイトル、俺知らない。
「なに、それ」
「これも結構前の映画なんだけどさ、何か実話が元らしくって………不倫物ってやつなのかな?」
キョトンと首を傾げながら、コウジはそう言った。
不倫物って………さっきSFがシリアスでドロドロしたのばっかりって言い方してたのに、お前そんなもうあらすじ聞かなくても分かるくらいシリアスでドロドロした映画観たいのかよ。
「十五禁でさ、存在知った時にはまだ観れないし、だからと言って一人で観るのもなーみたいな。」
十五禁な不倫物の時点でお察し。
はいはいそういう事ねって思うけど、お前どうせ十八禁な経験してんだろ?と、童貞の僻みが喉まで込み上げてくる。
まあ口にはしないけど。
しかも俺だって健全な男子。
気にならない訳じゃないのだ。
「不倫とか浮気とか、したいって思うの?」
サクサクとポップコーンを頬張りながら、そんな事を口にしてみる。
簡単に頷いたら、がっついてる童貞みたいで嫌だなって思ったから。
まあがっついてる童貞だけどな。
「いや?寧ろ好きじゃない。意外と一途よ、俺って」
コウジがふんわりと笑う。
頭に浮かんだのは、例の【コウジの好きな人】。
どんな子なんだろうかと思いながらポップコーンを摘もうとすると、コウジが手を伸ばして俺の口の端に着いてたフレーバーの塊を指で拭った。
………美味しいから後で舐めようと思ってたのに。
「好きな子には尽くしたくなっちゃうタイプ。」
「なのに観たいの?」
「気になるじゃん。エッチなのも、浮気する奴の思考も。」
そうだろうか?
いや、エッチなのは気になるけど、浮気する奴の思考は全く以て気にならない。
でもコウジはもしかしたら、自分には抱きそうにない思考が気になるのかもしれない。
「映画は人生の覗き見なんだって。」
「誰の言葉?」
「俺の親戚。金払って、他人の人生覗き見して共感したり批判したり疑似体験したり………そう言うのが映画鑑賞って思えば楽よ?って昔言われた事ある。」
楽、の意味が分からないけれど、なるほど確かにそういうものなのかもしれない。
主人公という自分とは全く関係無い人物の人生を通して、自分ではとても出来ない体験をしたり、思考をしたりする。
「浮気とかしてみたいとも思えないけど、浮気する奴の思考ってどうなってんだろうなって気になるんだよ。ほら、三年の有栖川先輩とかそうじゃん」
「有栖川先輩イズ誰」
「あー、あの先輩めっちゃイケメンだもんな。三年の女とっかえひっかえしてる先輩だよ。委員会同じでちょくちょく顔合わせるんだけど、だからって聞く訳にもいかないしさ。」
なるほど?
確かに先輩に浮気するのどんな気持ち?とか聞こうものなら大乱闘間違いなしだもんな。
気になったからといって経験する訳にもいかないし。
そうなると人生の覗き見がイイ感じに知的好奇心を満たしてくれるのだろう。
「でも誠也が嫌なら観ない。どうする?」
むにっと、コウジの指が俺の唇を撫でる。
よっぽどポップコーンのフレーバーを付けていたらしい。
言ったらちゃんと拭くのに。
「エッチなの観たい」
「素直だなぁ!じゃあ次は観ようぜ。」
AVじゃないけどなと笑われるも、マジモンのAVを
コウジと観るのは気まずさ大爆発なのでちょっと遠慮したい。
ストーリー重視な映画にちょっとエッチなシーン位が丁度いい。
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