2 / 6
本編
1
しおりを挟む
これは不幸な結婚だ。
誰も彼もが不幸にしかならない結婚。
誰にも望まれていないと分かっていながらも娘を差し出さないといけない両親も。
家の為とは言え、容姿も器量も悪いフィメールΩを嫁として迎えなければいけない彼の両親も。
そして、そんな私と結婚しなければいけない、数多のΩやフィメールβやフィメールαすらも虜にする程に才能も将来性にも溢れる美しい彼も。
今から執り行われる挙式に参列する参列者も皆。
初恋の人と、例えままごと以下とはいえ結婚することが出来た私を除き、誰も彼もが不幸にしかならない結婚だ。
「新郎義之、貴方はここに居る汐里を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います。」
そんなこと、嘘でも誓いたくないだろうに。
可哀想に。
本当に、申し訳ないと思う。
更に言うなら嘘でも誓ってくれて嬉しいと思ってしまうのが本当に申し訳ない。
「新婦汐里、貴方はここに居る義之を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「………誓います。」
それは、本当だ。
でもきっと、三年も経てば彼は私の夫ではなくなるだろう。
だってこの後の初夜は訪れないし、それどころかきっと、発情期に抱いてすらもらえないのだろうから。
番ってももらえないだろう。
Ωにとって屈辱でしかない事実。
けれども仕方ない話だ。
だって、彼には愛するフィメールαが居るのだから。
でも私の結婚はどうしても必要だからと諦めざるを得なかったと聞いている。
誰からって?
そのお相手らしいフィメールαからだ。
泣きながら彼を返して欲しいと言われた時に、私はこの人も可哀想だなと思った。
本当に、私以外が不幸な結婚だ。
私には同じフィメールΩの妹が居る。
私とは違い、とても可愛らしく両親も愛している妹だ。
そんな妹でなく何故私なのかと思ったが、フィメールαの存在でなるほど納得。
妹が不幸になるのは想像に容易かったからだろう。
『大丈夫ですよ。だって、結婚した所で一緒に住む訳じゃないんですから。』
だから私はそう言ってその人を慰めた。
初夜が訪れないと言ったのはそういう意味だ。
私はこの式が終わった直後、α厳禁のΩ専用マンションに住まいを移るように両親から言われている。
彼と彼の両親に、これ以上は不快な思いをさせないようにと。
『だから、大丈夫ですよ。』
安心して欲しくて、私は笑った。
彼女の顔が引きつったように見えたのは、きっと私の顔が見るに堪えなかったからだろうと思った。
いつも両親は私にそう言っていたから、きっと彼女もそう思ったのだろうと思った。
きっと今、このウエディングドレスを着て彼の隣に並びたかったのはあの美しいフィメールαだった筈だ。
その光景を思い浮かべて、まるでジグソーパズルがぴったりとハマったような美しさに私は思わず涙を浮かべた。
彼だって、そうあって欲しかったのは彼女だった筈だ。
嗚呼、本当に私以外、誰も得しない結婚式だ。
誰も彼もが不幸にしかならない結婚。
誰にも望まれていないと分かっていながらも娘を差し出さないといけない両親も。
家の為とは言え、容姿も器量も悪いフィメールΩを嫁として迎えなければいけない彼の両親も。
そして、そんな私と結婚しなければいけない、数多のΩやフィメールβやフィメールαすらも虜にする程に才能も将来性にも溢れる美しい彼も。
今から執り行われる挙式に参列する参列者も皆。
初恋の人と、例えままごと以下とはいえ結婚することが出来た私を除き、誰も彼もが不幸にしかならない結婚だ。
「新郎義之、貴方はここに居る汐里を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います。」
そんなこと、嘘でも誓いたくないだろうに。
可哀想に。
本当に、申し訳ないと思う。
更に言うなら嘘でも誓ってくれて嬉しいと思ってしまうのが本当に申し訳ない。
「新婦汐里、貴方はここに居る義之を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「………誓います。」
それは、本当だ。
でもきっと、三年も経てば彼は私の夫ではなくなるだろう。
だってこの後の初夜は訪れないし、それどころかきっと、発情期に抱いてすらもらえないのだろうから。
番ってももらえないだろう。
Ωにとって屈辱でしかない事実。
けれども仕方ない話だ。
だって、彼には愛するフィメールαが居るのだから。
でも私の結婚はどうしても必要だからと諦めざるを得なかったと聞いている。
誰からって?
そのお相手らしいフィメールαからだ。
泣きながら彼を返して欲しいと言われた時に、私はこの人も可哀想だなと思った。
本当に、私以外が不幸な結婚だ。
私には同じフィメールΩの妹が居る。
私とは違い、とても可愛らしく両親も愛している妹だ。
そんな妹でなく何故私なのかと思ったが、フィメールαの存在でなるほど納得。
妹が不幸になるのは想像に容易かったからだろう。
『大丈夫ですよ。だって、結婚した所で一緒に住む訳じゃないんですから。』
だから私はそう言ってその人を慰めた。
初夜が訪れないと言ったのはそういう意味だ。
私はこの式が終わった直後、α厳禁のΩ専用マンションに住まいを移るように両親から言われている。
彼と彼の両親に、これ以上は不快な思いをさせないようにと。
『だから、大丈夫ですよ。』
安心して欲しくて、私は笑った。
彼女の顔が引きつったように見えたのは、きっと私の顔が見るに堪えなかったからだろうと思った。
いつも両親は私にそう言っていたから、きっと彼女もそう思ったのだろうと思った。
きっと今、このウエディングドレスを着て彼の隣に並びたかったのはあの美しいフィメールαだった筈だ。
その光景を思い浮かべて、まるでジグソーパズルがぴったりとハマったような美しさに私は思わず涙を浮かべた。
彼だって、そうあって欲しかったのは彼女だった筈だ。
嗚呼、本当に私以外、誰も得しない結婚式だ。
10
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています


そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

たのしい わたしの おそうしき
syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。
彩りあざやかな花をたくさん。
髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。
きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。
辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。
けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。
だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。
沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。
ーーーーーーーーーーーー
物語が始まらなかった物語。
ざまぁもハッピーエンドも無いです。
唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*)
こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄)
19日13時に最終話です。
ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる