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7歳の夏
キラキラ
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「「「ただいまー!」」」
「お邪魔しまーす。うわっ!ひろっ!この家こんなに広かったの?」
《広いし天井も高いわね………下手なお貴族様のお屋敷より大きいんじゃない?》
牧場主だった以前の家主が草食の大型モンスターと契約していたのは知っていたが、一室一室がこんなにも広々としているのは知らなかった。
あまりの大きさと広さにセドリックとファフナーは唖然としながら天井を見上げる。
「セドリック兄ちゃん!手をあらわなきゃ!」
「あ、そうだな。手洗い場どこ?」
カイルに促され、セドリックはハッと我に返り辺りを見渡した。
まるで自分が縮んだかのような錯覚を覚える程に大きな扉が幾つか見えるが、当然初めての家なので勝手が分からない。
まだ牧場が瘴気に侵される前は牧場のモンスター達と戯れていたし、瘴気に侵されて環境が悪くなってからは不気味な庭が遊び場だったから家に入ったことはなかったのだ。
ちなみに泥だらけになって牧場で遊んでいた頃に何度か使わせてもらったので、外の洗い場なら知っている。
「こっちだよ!おみずまわりにあったしょうきをキレイにしてもらったら、すっごくつめたくてキラキラしたおみずがでるようになったの!」
「キラキラ?」
「オレらみえないから、まりょくじゃないかって!セドリック兄ちゃんみえる?」
「クィルしんかんサマはみえるんだって!」
ワクワクとした表情の子供達に背中を押されるままセドリックは洗面所へと向かう。
水が一番大事だからと、瘴気の浄化は池や水路を中心に行われた。
今は牧場内だけだとしても、村全体に影響しないとも限らないからだ。
不幸中の幸い、牧場に流れる水路だけが影響していたので今はもう問題はないが、一時は騒然としたものだった。
「へぇ。魔力があるような水とか気になるな。見たことない。」
子供の頃からこの村の水で飲食をしたり遊んだりしたが、そんなの感じたことはセドリックの記憶の中では一度もなかった。
なんなら例の外の洗い場を使っていた時も、魔力を感じたこともキラキラして見えたこともなかった。
瘴気を浄化した際の聖なる魔力の名残か、それとも別の原因が。
「気になるな。」
「じゃあはやくあらいに行こう!」
「こっちだよ!」
グイグイと手を引かれるままに入った部屋は、大きく広い洗面所。
磨りガラスの扉の向こう側は風呂場のようだしタンスもあるので脱衣場も兼ねているのだろう。
引っ越しの際に置いて行かれたらしい立派で大きなタンスは、ますます縮尺を混乱させるがそれもまた面白いなとセドリックは思った。
慣れたようにタオルを用意しているシグルドですら、少し小さく見えてしまう。
《なんだか小人にでもなった気分。メルヘンね。》
「そうだな。洗面所は普通サイズだから、本当に童話の世界に迷い込んだみたいだ。使っていい?」
「どーぞ!」
ワクワクと言った感じでセドリックを見つめる、計6つの幼い瞳。
たかだか手を洗うだけなのに、なんだか責任重大な気分だなと思わず苦笑してしまう。
変なプレッシャーを感じつつ蛇口を捻り、問題なく流れる水を少し見つめてからセドリックは手を流水に差し入れる。
………うん。
「なーんにも見えん。」
「「えー!」」
双子は不満そうに声を上げるし、ニールもちょっと悲しそうな顔で小首を傾げた。
とはいえ見えないものは見えないから仕方ない。
《あら。私は見えるわよ。》
「ほんと!?」
《ええ。水の流れに沿って輝いて、キレイね。》
「へぇ。俺には見えんわ。」
「ファフナーは見えるの?」
「すごい!すごい!ヘルギも見える?」
ファフナーが何を言ってるのかは分からないが、話の流れからきっと見えているのだろうと察した双子はパチパチと音を鳴らして拍手をした。
モンスターなら見えるのかとヘルギに聞いてみるけれど、ヘルギは不思議そうにボディを傾げるだけだ。
人でもモンスターでも、見える見えないはあるらしい。
ちょっぴりがっかりする双子を横目で見ながら、セドリックは手を洗いながら考える。
じゃあそのキラキラは一体何だというのか。
クィル神官が特に何も言わないのであれば人間やモンスターに害は無いのだろうけれど。
「(気になる、な………)」
ファフナーも何も悪いモノを感じてはいないようだが、一度気になってしまうとどうにも気にしないでいることができなくなる。
子供達には気取られぬようにそっと溜息を吐いて、常に懐に忍ばせているサンプリング用の小瓶にこっそりと水を入れた。
「お邪魔しまーす。うわっ!ひろっ!この家こんなに広かったの?」
《広いし天井も高いわね………下手なお貴族様のお屋敷より大きいんじゃない?》
牧場主だった以前の家主が草食の大型モンスターと契約していたのは知っていたが、一室一室がこんなにも広々としているのは知らなかった。
あまりの大きさと広さにセドリックとファフナーは唖然としながら天井を見上げる。
「セドリック兄ちゃん!手をあらわなきゃ!」
「あ、そうだな。手洗い場どこ?」
カイルに促され、セドリックはハッと我に返り辺りを見渡した。
まるで自分が縮んだかのような錯覚を覚える程に大きな扉が幾つか見えるが、当然初めての家なので勝手が分からない。
まだ牧場が瘴気に侵される前は牧場のモンスター達と戯れていたし、瘴気に侵されて環境が悪くなってからは不気味な庭が遊び場だったから家に入ったことはなかったのだ。
ちなみに泥だらけになって牧場で遊んでいた頃に何度か使わせてもらったので、外の洗い場なら知っている。
「こっちだよ!おみずまわりにあったしょうきをキレイにしてもらったら、すっごくつめたくてキラキラしたおみずがでるようになったの!」
「キラキラ?」
「オレらみえないから、まりょくじゃないかって!セドリック兄ちゃんみえる?」
「クィルしんかんサマはみえるんだって!」
ワクワクとした表情の子供達に背中を押されるままセドリックは洗面所へと向かう。
水が一番大事だからと、瘴気の浄化は池や水路を中心に行われた。
今は牧場内だけだとしても、村全体に影響しないとも限らないからだ。
不幸中の幸い、牧場に流れる水路だけが影響していたので今はもう問題はないが、一時は騒然としたものだった。
「へぇ。魔力があるような水とか気になるな。見たことない。」
子供の頃からこの村の水で飲食をしたり遊んだりしたが、そんなの感じたことはセドリックの記憶の中では一度もなかった。
なんなら例の外の洗い場を使っていた時も、魔力を感じたこともキラキラして見えたこともなかった。
瘴気を浄化した際の聖なる魔力の名残か、それとも別の原因が。
「気になるな。」
「じゃあはやくあらいに行こう!」
「こっちだよ!」
グイグイと手を引かれるままに入った部屋は、大きく広い洗面所。
磨りガラスの扉の向こう側は風呂場のようだしタンスもあるので脱衣場も兼ねているのだろう。
引っ越しの際に置いて行かれたらしい立派で大きなタンスは、ますます縮尺を混乱させるがそれもまた面白いなとセドリックは思った。
慣れたようにタオルを用意しているシグルドですら、少し小さく見えてしまう。
《なんだか小人にでもなった気分。メルヘンね。》
「そうだな。洗面所は普通サイズだから、本当に童話の世界に迷い込んだみたいだ。使っていい?」
「どーぞ!」
ワクワクと言った感じでセドリックを見つめる、計6つの幼い瞳。
たかだか手を洗うだけなのに、なんだか責任重大な気分だなと思わず苦笑してしまう。
変なプレッシャーを感じつつ蛇口を捻り、問題なく流れる水を少し見つめてからセドリックは手を流水に差し入れる。
………うん。
「なーんにも見えん。」
「「えー!」」
双子は不満そうに声を上げるし、ニールもちょっと悲しそうな顔で小首を傾げた。
とはいえ見えないものは見えないから仕方ない。
《あら。私は見えるわよ。》
「ほんと!?」
《ええ。水の流れに沿って輝いて、キレイね。》
「へぇ。俺には見えんわ。」
「ファフナーは見えるの?」
「すごい!すごい!ヘルギも見える?」
ファフナーが何を言ってるのかは分からないが、話の流れからきっと見えているのだろうと察した双子はパチパチと音を鳴らして拍手をした。
モンスターなら見えるのかとヘルギに聞いてみるけれど、ヘルギは不思議そうにボディを傾げるだけだ。
人でもモンスターでも、見える見えないはあるらしい。
ちょっぴりがっかりする双子を横目で見ながら、セドリックは手を洗いながら考える。
じゃあそのキラキラは一体何だというのか。
クィル神官が特に何も言わないのであれば人間やモンスターに害は無いのだろうけれど。
「(気になる、な………)」
ファフナーも何も悪いモノを感じてはいないようだが、一度気になってしまうとどうにも気にしないでいることができなくなる。
子供達には気取られぬようにそっと溜息を吐いて、常に懐に忍ばせているサンプリング用の小瓶にこっそりと水を入れた。
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