2 / 7
②
しおりを挟む
さて、ここで改めてと稔と言う男を紹介しよう。
会社では平凡で地味な男を貫いている彼であったが、私生活ではその地味な見た目に似合わずなかなかに派手な男であった。
長く続く恋よりも一夜限りの愛を好み、理解力があって楽しめる女性を一番に好んだが、包容力があって甘やかしてくれる年上のイケメン男性にも滅法弱かった。
恋人に関しては片手で数えれる程であったが、一夜限りの相手ならば女性だけカウントしようか、男性だけカウントしようが、両手両足使っても数え切れない程に節操がない男。
それが稔と言う男であった。
では次いでウィルフレッドと言う男についてだが、容姿は先にも述べた通りの男らしい美しさな上に、まるで絵本に出て来る騎士様か王子様かと言わんばかりのその言動で多くの契約を引っ張ってくる営業課のトップ様。
………なのだが、その私生活もまた、密かに派手な男であった。
一見するとフェミニストっぽく優しそうで、恋人になりたいと強請る女は引く手数多である。
だがしかし、彼こそ無節操も無節操。
女は勿論、男相手だろうが勃ったらヤるし、勃たないならヤらない。
そんな倫理観も程々にぶっ飛んだ男であった。
そんな二人が知り合った切欠は、とあるゲイバーでウィルフレッドがナンパした事が始まりである。
正直部署が違えば接点が無いのが当たり前な程の規模の会社内で良い意味で目立つウィルフレッドとは違い、地味な見た目も相俟って意図的に目立たない様に務めている稔。
当然、同じ会社の人間だと気付いたのは稔だけであった。
ウィルフレッドにしても稔にしても、後々面倒を引き起こしては堪らないからと同僚には手を出さない様に気を付けていた。
そもそも稔は十歳以上の年上の男性以外は好みではないのだ。
だからこそ、初めは断ろうと思った。
しかしそれ以上に、興味が沸いたのだ。営業課の騎士だの何だの騒がれている彼の夜の営業力は如何程のものかと。
上手くても笑い話だし、下手ならばもっと笑い話だ。
だから受け入れた。
どうせ稔の方から同僚だと言い出さなければ、バレることはない。
実際、今の今まで社内ですれ違ったことすらないし、そもそも稔レベルの顔はどこにだって居る。
そんな余裕と共に好奇心の赴くままに、そう言う目的ではない、ちょっと高級なホテルで。
果たして、営業課トップ様は、夜の営業力もトップクラスであった。
煙草を吸う余裕すらない程に朝まで燃え上がったのは、一体いつぶりか。
おっとこれはいけない。
一夜限りでは勿体無い等と、栓の無い事を考えてしまう。
その思考そのものに柄にもなく焦った稔は、取り敢えず同僚である事を告げた。
会社ではもしすれ違ってもけして関わってくれるなと釘を刺すつもりで。
しかし、一夜限りの愛で終わらせるのは勿体無いと思ったのは、残念なことに向こうも同じだったらしい。
『会社で、ではなく退勤した社外なら良いんだよな。』
ウィルフレッドはあっさりとそう言うと、自然な手付きで床に脱ぎ捨てていたスキニージーンズのポケットにアドレスと番号を書いた紙を捩じ込むと、ついでと言わんばかりに稔の頬にキスをして、部屋から出て行ったのだった。
―――何だ?何だ、今の?
稔はウィルフレッドのあまりの鮮やかな流れに呆然としながらも、もたもたと着替えてホテルを出た。
因みに、当然の様に支払いは終わっていた。
―――営業課トップ様、超こえぇ………。
理想を絵に描いた様なスマートさに思わず震え上がった稔であったが、この経験はウィルフレッドの宣言通り一度で終わる事もなく。
その次の日から営業課トップ様の、高級ホテルや一流ディナー等の財力に物を言わせたアプローチが始まった。
金持ちのアプローチとなれば、そうなるのだろう。
しかし、相手が悪かった。
稔はケチとまではいかないが貧乏性だし、その上、根がネガティブだ。
金で殴るようなアプローチに終ぞ根を上げ、こんなに金をかけるなら会うのを控えたいと言い出した事が原因で、今度は揉めに揉め。
そこかあれやこれやと………気が付けば何故か同居する事となったその時まで続いた。
とは言え、二人は別に恋人と言う訳ではなく、あくまでセフレ。
だからこそウィルフレッドは他の女や男を抱いたし、稔もまた他の女を抱き他の男に抱かれた。
その事は話題には出すけれど、他のプライベートな事は互いに話題にも出さず聞く事もない。
ウィルフレッドも稔もそれで良いと思っていたし、それが心地良い距離感だとも、そしてどこか穏やかだとも感じていた。
されど、そんな日々程長く続かないものはない。
会社では平凡で地味な男を貫いている彼であったが、私生活ではその地味な見た目に似合わずなかなかに派手な男であった。
長く続く恋よりも一夜限りの愛を好み、理解力があって楽しめる女性を一番に好んだが、包容力があって甘やかしてくれる年上のイケメン男性にも滅法弱かった。
恋人に関しては片手で数えれる程であったが、一夜限りの相手ならば女性だけカウントしようか、男性だけカウントしようが、両手両足使っても数え切れない程に節操がない男。
それが稔と言う男であった。
では次いでウィルフレッドと言う男についてだが、容姿は先にも述べた通りの男らしい美しさな上に、まるで絵本に出て来る騎士様か王子様かと言わんばかりのその言動で多くの契約を引っ張ってくる営業課のトップ様。
………なのだが、その私生活もまた、密かに派手な男であった。
一見するとフェミニストっぽく優しそうで、恋人になりたいと強請る女は引く手数多である。
だがしかし、彼こそ無節操も無節操。
女は勿論、男相手だろうが勃ったらヤるし、勃たないならヤらない。
そんな倫理観も程々にぶっ飛んだ男であった。
そんな二人が知り合った切欠は、とあるゲイバーでウィルフレッドがナンパした事が始まりである。
正直部署が違えば接点が無いのが当たり前な程の規模の会社内で良い意味で目立つウィルフレッドとは違い、地味な見た目も相俟って意図的に目立たない様に務めている稔。
当然、同じ会社の人間だと気付いたのは稔だけであった。
ウィルフレッドにしても稔にしても、後々面倒を引き起こしては堪らないからと同僚には手を出さない様に気を付けていた。
そもそも稔は十歳以上の年上の男性以外は好みではないのだ。
だからこそ、初めは断ろうと思った。
しかしそれ以上に、興味が沸いたのだ。営業課の騎士だの何だの騒がれている彼の夜の営業力は如何程のものかと。
上手くても笑い話だし、下手ならばもっと笑い話だ。
だから受け入れた。
どうせ稔の方から同僚だと言い出さなければ、バレることはない。
実際、今の今まで社内ですれ違ったことすらないし、そもそも稔レベルの顔はどこにだって居る。
そんな余裕と共に好奇心の赴くままに、そう言う目的ではない、ちょっと高級なホテルで。
果たして、営業課トップ様は、夜の営業力もトップクラスであった。
煙草を吸う余裕すらない程に朝まで燃え上がったのは、一体いつぶりか。
おっとこれはいけない。
一夜限りでは勿体無い等と、栓の無い事を考えてしまう。
その思考そのものに柄にもなく焦った稔は、取り敢えず同僚である事を告げた。
会社ではもしすれ違ってもけして関わってくれるなと釘を刺すつもりで。
しかし、一夜限りの愛で終わらせるのは勿体無いと思ったのは、残念なことに向こうも同じだったらしい。
『会社で、ではなく退勤した社外なら良いんだよな。』
ウィルフレッドはあっさりとそう言うと、自然な手付きで床に脱ぎ捨てていたスキニージーンズのポケットにアドレスと番号を書いた紙を捩じ込むと、ついでと言わんばかりに稔の頬にキスをして、部屋から出て行ったのだった。
―――何だ?何だ、今の?
稔はウィルフレッドのあまりの鮮やかな流れに呆然としながらも、もたもたと着替えてホテルを出た。
因みに、当然の様に支払いは終わっていた。
―――営業課トップ様、超こえぇ………。
理想を絵に描いた様なスマートさに思わず震え上がった稔であったが、この経験はウィルフレッドの宣言通り一度で終わる事もなく。
その次の日から営業課トップ様の、高級ホテルや一流ディナー等の財力に物を言わせたアプローチが始まった。
金持ちのアプローチとなれば、そうなるのだろう。
しかし、相手が悪かった。
稔はケチとまではいかないが貧乏性だし、その上、根がネガティブだ。
金で殴るようなアプローチに終ぞ根を上げ、こんなに金をかけるなら会うのを控えたいと言い出した事が原因で、今度は揉めに揉め。
そこかあれやこれやと………気が付けば何故か同居する事となったその時まで続いた。
とは言え、二人は別に恋人と言う訳ではなく、あくまでセフレ。
だからこそウィルフレッドは他の女や男を抱いたし、稔もまた他の女を抱き他の男に抱かれた。
その事は話題には出すけれど、他のプライベートな事は互いに話題にも出さず聞く事もない。
ウィルフレッドも稔もそれで良いと思っていたし、それが心地良い距離感だとも、そしてどこか穏やかだとも感じていた。
されど、そんな日々程長く続かないものはない。
87
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
火傷の跡と見えない孤独
リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
仮面の兵士と出来損ない王子
天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。
王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。
王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。
美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?
パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」
「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」
カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦
初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました!
その後のお話もあるので良ければ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる