僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

かかし

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無敵の人

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「あ、もうすぐじゃない?」

引っ越しも昨日無事に終え、今日は少し早く起き出してせっせと荷解きをしていた最中、サツキがふと時計を見て呟いた。
因みに結局パートナーシップのことも考えて、百瀬さんのシマ?に引っ越すことにした。
利便性も高いし、何より不動産料が安い。
引っ越し場所も結構悩んだけど、ファミリー向けじゃなくてカップル向けの、それでいて築年数がそこそこあってなるべく安いマンションに引っ越すことにした。
一軒家ドールハウス計画を、諦めてないからだ。

「ほんとだ。興味ある?行く?」
「興味あるけど、行かない。俺が行ったら意味ないじゃん。」

サツキがそう言って苦笑しながら、テーブルに置いている引っ越し記念に買った新しいサツキ専用のお財布を撫でた。
中には現金は勿論だが、サツキ名義の口座のキャッシュカードと保険証も入っている。
そう。
あの後無事、サツキのサツキとしての戸籍を手に入れた。
苗字は適当に付けたものだが、名前はキチンと【サツキ】。
漢字にするのかひらがなにするのか少し悩んだけど、サツキ自身がカタカナが良いと言ったからカタカナだ。

「俺はもう名実共にサツキだしね。」
「あら可愛い。」

ふんすと鼻息荒く胸を張るサツキに、俺は思わずそう言って胸をきゅんきゅんさせてしまった。
可愛い。
世界一可愛いサツキの可愛い仕草を見ると、寿命が延びるから全人類見ろ。
いや、サツキの可愛さは俺だけのものだから誰も見るな。

「お兄さんとこうして広いお家に引っ越せて、お兄さんと堂々とお出掛けできるようになって嬉しい。」

サツキはにっこりとそう言って笑う。
今まではサツキのかつての家族とすれ違う可能性があったから、どうしても出掛けるのに躊躇してしまった。
でも今は戸籍があって保険証でも本人確認出来るから、仮に鉢合わせしてそうじゃないかと言われても人違いを主張できる。
不要な緊張がなくなり、もういつでもデートし放題だ。

「まだまだ!いずれもっと広いお家に住むことになるから!目指せ一軒家!」
「おおっ!一軒家!赤い屋根の大きなお家!?」
「いいね!そうしようそうしよう!」

荷解きをしながら、理想の一軒家ドールハウスを語り合う。
そもそもあの狭い家にあった荷物なんて本当に少なく、段ボール数箱分だ。
半日あれば片付け終わるから、その後は必需品や家電を買いにデートと洒落込もう。

「サーツキ。」
「んー?」

無防備に振り返ったサツキの唇にキスをして、少しの間その小さな唇を貪る。
多少時間がオーバーするかもしれないけど、イチャイチャ時間の方が大事だ。

「荷物、んっ………片付けないと………」

サツキはそう言って俺を咎めるけど、俺の首に腕を回して身を預けてきたから多分このまま進めて大丈夫なやつ。
キスをしながら抱き上げて、軽い足取りで新しい寝室へと向かう。
昨日は疲れてた上に幼いサツキの番だったからエッチなことは出来なかったけど、今は大人っぽいサツキみたいだから正直このチャンスは逃がせない。

カーテンをまだつけてなくて燦々とした爽やかな朝陽が照らしている室内だけれど、たまには良いだろう?
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