僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

無敵の人

19

「アンタが………アンタが何もしなかったから！」

しかし遺体を家に運び込み、契約通りあの子だと偽って説明した途端、私は一番上の息子から殴り飛ばされた。
あの女との子ではあったが、奇跡的に私に似た愛しい子供。
そして最愛の妻との間に出来たとても愛らしいもう一人の息子は、言葉もなくただ泣き崩れている。
どうして………

「何でこの子がこんな目に遭わなきゃいけない！？間違っていたのは、俺達の方なのに！」

悲痛な叫び声を上げながら、長男は蹲って泣いた。
妻は引いていた。
二人だって蔑んでいたじゃないか。
妻だって、あの子を存在しないものとして扱っていたじゃないか！

「あの時………あの時ちゃんと捜していれば！警察に通報していれば！！」

確かに現状そう思われるだろう。
だが、結果的にあの子は五体満足で生きてるじゃないか。
この死体は偽物だ………私・が・責・め・ら・れ・る・謂・れ・は・な・い・！

「貴方があの子を殺したんだ！人殺し！」
「ち、父親に向かってその口のきき方はなんだ！そもそもの話、アイツを追い出しのはお前らだろう！？」

私はカッとなって叫び返してしまうだけではなく、息子の頬を叩いてしまった。
妻の息を呑む音が聞こえる。
怯えたような、どこか他人事のような反応に苛々する。
悲劇ぶって泣いている次男にも、また。

「私・は・何・も・し・な・か・っ・た・だ・け・だ！お前達が、アイツを追い詰めて追い出したんだろう！？殺したのはお前らだ！」

そう。
私・は・何・も・し・て・い・な・い・。
何・も・し・な・か・っ・た・こ・と・こ・そ・が・、何・よ・り・も・罪・深・い・こ・と・な・の・だ・け・れ・ど・。