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無敵の人
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―――結局、俺達が起きたのは昼だった。
起きたっていうか、正確に言えば文字通り叩き起こされた。
誰にって?
華麗にピッキングして入って来た百瀬さんにだよ。
勿論、叩き起こされたのは俺だけだ。
「おそよー。昨日渡した書類、貰っていーい?」
「おそよーございます………ちょっと待ってくださいね。鞄の中にあるんで。」
「お、おはようございます、ももせさん。」
「おはよー、サツキくん。今日も良い子だねー。」
もちもちとほっぺを触られて殴り飛ばしたい程の嫉妬に駆られたが、グッと我慢する。
一応、恩人は恩人だ。
さっさと書類を取って渡すだけに留めた俺、偉い。
「………うん、ちゃんと自署でサインしてるねー。」
「そういえば、結局プレゼントは調達出来たんですか?」
「うん、なんとかー。今日その処理するけど、来るー?」
「サツキとイチャイチャするので、行かないです。」
本当はちょっぴり気になるけれど、それよりもサツキ不足の方が深刻だ。
たった一日、されど一日。
めくるめく自堕落ニートイチャイチャ生活を満喫している真っ只中で丸一日会えなかったのは思った以上にしんどかった。
「それに、新居決めたいですし。」
「それは大事だー。こんなクソみたいな部屋で、イチャついて近所迷惑じゃないのー?」
「今ん所文句言われたことないですね。俺らのでマスかいてんのかな?は?殺すぞ。」
「情緒ヤバー。」
百瀬さんが腹を抱えて笑っているが、それ所じゃない。
エッチで小悪魔なサツキのエッチな声を聞かれてる所か、それをオカズにマスかいてるとかふざけんな。
対価寄越せ。
お前の命な。
「きょーぼーな顔になってるよー。引っ越すならうちの地区に来ないー?なんと、パートナー制度がありますー。」
ケラケラと笑いながらそんな謳い文句と共に付箋付きの住宅情報誌を出してきた。
えー、この危ない人とまだ関わらなきゃいけねぇの?と思ったが、パートナー制度………魅力的過ぎる。
むむっ、悩むな………。
「ま、候補にでも入れといてよー。職もいっぱいあるよー。」
「でも貴方の息が掛かってるんでしょう?」
「もっちろーん!」
元気の良い返事にイラッとする。
ただまぁ、コネは大事だ。
ましてや俺みたいな、職歴が浅い奴には………。
「まぁ、検討しときます。」
「よろしくねー!じゃ、今日はもう帰るからー、ゆっくり休んでねー!」
じわっとネガティブな感情が戻って来そうになったから、溜息を一つ。
ついでと言わんばかりに渡された、これまた付箋付きの求人情報誌はありがたく受け取っておくとしよう。
………受けるかどうかは、別にして。
「あ、葬式の日取りはまた連絡するからー!」
じゃあねー!という挨拶が聞こえるか否かのタイミングで、玄関扉が閉まる。
少なくとも戸籍を受けるまでの付き合いとはいえ、全体的に嵐のような人だな………。
否、ハリケーンとも言えるかもしれない。
こっちの常識や倫理観もぐっちゃぐちゃにするだけして、去って行くのだから………。
「………お兄さん………」
「ん?」
「今日は、ずっとお家に居る?」
俺のシャツの袖を小さく引いたかと思えば、不安そうな顔でサツキはそう言った。
昨日の予定になかったお出掛けは、サツキにとってもしんどかったらしい。
ごめんねっていう気持ちを込めて、ギュッとまだまだ細っこい身体を抱き締める。
「今日はずっとずっと一緒だよ。何して遊ぼうか?」
「やった!お母さんと三人でおままごとしよう!」
俺の言葉に、サツキはふにゃりと笑った。
サツキは三人一緒が大好きだ。
この家は狭くて、小さなおままごとセットしか置けないけど、引越しが終わったらドールハウスを買うのも良いかもしれない。
否、いっそ一軒家でも買って、俺達三人のドールハウスにしても良いかもしれない。
金には限りがあるが、夢は無制限に見ても良い。
そうだろう?
起きたっていうか、正確に言えば文字通り叩き起こされた。
誰にって?
華麗にピッキングして入って来た百瀬さんにだよ。
勿論、叩き起こされたのは俺だけだ。
「おそよー。昨日渡した書類、貰っていーい?」
「おそよーございます………ちょっと待ってくださいね。鞄の中にあるんで。」
「お、おはようございます、ももせさん。」
「おはよー、サツキくん。今日も良い子だねー。」
もちもちとほっぺを触られて殴り飛ばしたい程の嫉妬に駆られたが、グッと我慢する。
一応、恩人は恩人だ。
さっさと書類を取って渡すだけに留めた俺、偉い。
「………うん、ちゃんと自署でサインしてるねー。」
「そういえば、結局プレゼントは調達出来たんですか?」
「うん、なんとかー。今日その処理するけど、来るー?」
「サツキとイチャイチャするので、行かないです。」
本当はちょっぴり気になるけれど、それよりもサツキ不足の方が深刻だ。
たった一日、されど一日。
めくるめく自堕落ニートイチャイチャ生活を満喫している真っ只中で丸一日会えなかったのは思った以上にしんどかった。
「それに、新居決めたいですし。」
「それは大事だー。こんなクソみたいな部屋で、イチャついて近所迷惑じゃないのー?」
「今ん所文句言われたことないですね。俺らのでマスかいてんのかな?は?殺すぞ。」
「情緒ヤバー。」
百瀬さんが腹を抱えて笑っているが、それ所じゃない。
エッチで小悪魔なサツキのエッチな声を聞かれてる所か、それをオカズにマスかいてるとかふざけんな。
対価寄越せ。
お前の命な。
「きょーぼーな顔になってるよー。引っ越すならうちの地区に来ないー?なんと、パートナー制度がありますー。」
ケラケラと笑いながらそんな謳い文句と共に付箋付きの住宅情報誌を出してきた。
えー、この危ない人とまだ関わらなきゃいけねぇの?と思ったが、パートナー制度………魅力的過ぎる。
むむっ、悩むな………。
「ま、候補にでも入れといてよー。職もいっぱいあるよー。」
「でも貴方の息が掛かってるんでしょう?」
「もっちろーん!」
元気の良い返事にイラッとする。
ただまぁ、コネは大事だ。
ましてや俺みたいな、職歴が浅い奴には………。
「まぁ、検討しときます。」
「よろしくねー!じゃ、今日はもう帰るからー、ゆっくり休んでねー!」
じわっとネガティブな感情が戻って来そうになったから、溜息を一つ。
ついでと言わんばかりに渡された、これまた付箋付きの求人情報誌はありがたく受け取っておくとしよう。
………受けるかどうかは、別にして。
「あ、葬式の日取りはまた連絡するからー!」
じゃあねー!という挨拶が聞こえるか否かのタイミングで、玄関扉が閉まる。
少なくとも戸籍を受けるまでの付き合いとはいえ、全体的に嵐のような人だな………。
否、ハリケーンとも言えるかもしれない。
こっちの常識や倫理観もぐっちゃぐちゃにするだけして、去って行くのだから………。
「………お兄さん………」
「ん?」
「今日は、ずっとお家に居る?」
俺のシャツの袖を小さく引いたかと思えば、不安そうな顔でサツキはそう言った。
昨日の予定になかったお出掛けは、サツキにとってもしんどかったらしい。
ごめんねっていう気持ちを込めて、ギュッとまだまだ細っこい身体を抱き締める。
「今日はずっとずっと一緒だよ。何して遊ぼうか?」
「やった!お母さんと三人でおままごとしよう!」
俺の言葉に、サツキはふにゃりと笑った。
サツキは三人一緒が大好きだ。
この家は狭くて、小さなおままごとセットしか置けないけど、引越しが終わったらドールハウスを買うのも良いかもしれない。
否、いっそ一軒家でも買って、俺達三人のドールハウスにしても良いかもしれない。
金には限りがあるが、夢は無制限に見ても良い。
そうだろう?
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