僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

かかし

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無敵の人

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「ただいまー!ただいまー!もう疲れた!家の中から一歩も出ない!」
「おかえりなさい、お兄さん!」

お兄さんは、思ったよりも早く帰って来てくれた。
会社勤めをしていた時よりは元気に見えるけど、それでも明らかに疲れている顔だったのでしっかりギュッとしてお出迎えをする。
………やっと顔色良くなってきたのに。

「お風呂、先に入ってきて。ご飯の準備するね。」

お風呂っていうかシャワーだけど。
ご飯も今日お兄さんが持ち帰ってくれたホットサンドと冷凍のパスタを温めるだけだけど。
それでも少しでもお兄さんの疲れを癒せたら。

「うーん………俺さ、すっごく疲れててェ。」
「うん、そうだよね。本当にありがとう、お疲れ様。」

お兄さん、すっごく頑張ってくれたんだよね。
靴を脱ごうとしているお兄さんからジャケットを受け取りながら、お礼を言う。
俺の為に、こんなにいっぱい頑張ってくれた。
本当に優しくて、素敵な俺のお兄さん。

「でね、俺さ、お腹も空いてるんだけどさ。」
「うん。そうだよね。」
「どっちも欲しいんだ。」

………?
どっちも欲しいって、どういう事なんだろう。
お風呂入りながらご飯を食べるのは出来ないよ?
まぁ、湯舟があれば出来ないこともないかもしれないけど、うちにある湯舟はシャワーブースみたいなもんだ。
そう思って首を傾げると、そっとお腹を撫でられた。
この撫で方、えっちなことする時の―――

「ね?サツキ、一緒にお風呂に入ろ?」
「ぁっ、んっ」

ギュッと抱き締められて、べろっと厚い舌で舐め上げられる。
ゾクゾクとした感覚が背中を駆け抜けて、口から出て来たみたいに甲高い声が出る。
そっと、お兄さんを見上げる。
熱の籠った目で、俺を、俺だけを見てる。

「………うん、良いよ。」

この瞬間が、すごく好き。
動画で時々流れるアイドルや人気の配信者よりも端正で美しい顔をしたお兄さんが、俺みたいな何の取り柄もないどこにでも居るような男に欲情しているこの瞬間が。
すっごく好き。

「俺を食べて?」

頭からバリバリと。
合わせた唇から伝わる熱が、しっかりと身体の中で混ざり合うように。
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