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無敵の人
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「貴方があの子をネグレクトしてくれて。」
俺が続けて言った言葉に、男は小さく肩を震わせた。
ビビんなよ。
この位でビビんなよ。
あの子を拾った時、あの子はとても怯えていた。
「貴方があの子を不幸にしてくれて。」
母親との想い出の欠片を持ち出す程に、そうして心が壊れてしまう程にあの子は不幸だった。
多分、俺がどれだけ心を尽くしても、もうサツキの心は本当の意味では戻らない。
歪んだまま、なんとかそれとなく形になる程度だろう。
それだけが、唯一の悔しさだ。
「貴方があの子を捨ててくれて。」
それでも、俺はあの子を愛してる。
きっと、サツキにとって救ってくれる人なら誰でも良かったのかもしれない。
たまたまあの子が捨てられたあの日、否、あの子が家族を捨てたあの日に俺が拾っただけ。
だからこそ、俺はその幸運に感謝している。
「じゃないと俺は、サツキに会えなかったから。」
そう言葉を締めると、まるで化け物を見るような目で見ながら手を離した。
離してもらえたのはありがたいけど、その目は失礼じゃね?
大袈裟に咳き込んで苦しかったアピールは忘れずに、俺は鞄から一枚の書類を取り出す。
百瀬さんが作った、契約書だ。
「あの子を殺す為の契約書です。」
口約束だけだと、プライド高くそれでいて卑劣な人間は勝手に疑いを募らせていく。
明確に書類に残すことでその疑い減らし、暴走するリスクを抑えることができる………らしい。
最低限に減らすだけかよと思ったけど、まぁ確かに、疑うやつは勝手に疑うしな。
「貴方は今日のこのやり取りを墓場の中に持って行けば良いだけの、本当に簡単なものですよ。」
中身は俺も簡単に説明されている。
葬儀代と埋葬や火葬の費用はこっち持ち。
あと死体もこっちで用意するとかそんな感じ。
ただお前は黙ってろ。
ここまで費用負担したから、口止め料は別に払わないけどそれは納得しろみたいな。
「サツキを早く、サツキにしてあげたいんですよ。」
書類をひったくるように手にし、まじまじと見る男に声を掛ける。
男にとっては魅力的な書類だ。
サツキになる前の男の子が邪魔で、いっそ知らない場所で野垂れ死にして欲しいと思ってたんだろうから。
「貴方達家族があの子を邪魔だと思っていたように、俺達にとって貴方達家族が邪魔で邪魔で仕方ない。」
足を組み、胸を張り煽る。
正常な判断を鈍らせるように、ゆっくりとした口調で染み込ませるように告げる。
身体の中からふつふつとした怒りは、敢えてゆっくり呼吸することでコントロールしていく。
「見詰めてた所で、透かしも何もありませんよ。」
疑り深い男だとは思うが、あまり急かすと考えを変えてくるかもしれない。
それは困る。
「サインを。それだけで、戸籍上では貴方の息子だった存在は死ぬ。貴方達は素知らぬ顔で、見知らぬ死体を息子の死体として埋葬すれば良いだけ。簡単な話でしょう?」
ふと、もしかしたらサツキのお母さんもこんな感じで離婚するように詰められたことがあるのかもしれないと思った。
私、あの人の子供妊娠してるんですよみたいな。
ドラマの見過ぎかもしれないけど、そう思えばもっと追い詰めても良いような気持ちになるから不思議。
「金の心配ですか?記載がある通り葬儀代と火葬代は俺が出しますよ。仏壇も必要なら費用を。嗚呼、でも仏教徒じゃないんですっけ?なんでもいいけど。」
カトリックかプロテスタントか。
新興宗教かもしれない。
えー、ならますます縁切りたい。
サツキに要らん勧誘とかしないで欲しい………優しいから、話だけでも聞いちゃうかもしれない。
悪質なやつだとそのままズボッと引きずり込まれるかも。
「葬儀場等も、こっちで手配します。何も心配しなくていいんです。家族葬だ。誰も知らない。会社には近しい親戚の葬儀と言えばいい。なにもバカ正直に息子の葬儀なんて言わなきゃ良いんですよ。会葬礼状くらい、幾らでも偽装してあげますよ。」
………役員って、会葬礼状の提出要るのかしらん?
分かんないけどまぁ、そういうことも出来ますよってアピールはしておく。
甘い言葉は、幾ら並べても構わない。
俺が続けて言った言葉に、男は小さく肩を震わせた。
ビビんなよ。
この位でビビんなよ。
あの子を拾った時、あの子はとても怯えていた。
「貴方があの子を不幸にしてくれて。」
母親との想い出の欠片を持ち出す程に、そうして心が壊れてしまう程にあの子は不幸だった。
多分、俺がどれだけ心を尽くしても、もうサツキの心は本当の意味では戻らない。
歪んだまま、なんとかそれとなく形になる程度だろう。
それだけが、唯一の悔しさだ。
「貴方があの子を捨ててくれて。」
それでも、俺はあの子を愛してる。
きっと、サツキにとって救ってくれる人なら誰でも良かったのかもしれない。
たまたまあの子が捨てられたあの日、否、あの子が家族を捨てたあの日に俺が拾っただけ。
だからこそ、俺はその幸運に感謝している。
「じゃないと俺は、サツキに会えなかったから。」
そう言葉を締めると、まるで化け物を見るような目で見ながら手を離した。
離してもらえたのはありがたいけど、その目は失礼じゃね?
大袈裟に咳き込んで苦しかったアピールは忘れずに、俺は鞄から一枚の書類を取り出す。
百瀬さんが作った、契約書だ。
「あの子を殺す為の契約書です。」
口約束だけだと、プライド高くそれでいて卑劣な人間は勝手に疑いを募らせていく。
明確に書類に残すことでその疑い減らし、暴走するリスクを抑えることができる………らしい。
最低限に減らすだけかよと思ったけど、まぁ確かに、疑うやつは勝手に疑うしな。
「貴方は今日のこのやり取りを墓場の中に持って行けば良いだけの、本当に簡単なものですよ。」
中身は俺も簡単に説明されている。
葬儀代と埋葬や火葬の費用はこっち持ち。
あと死体もこっちで用意するとかそんな感じ。
ただお前は黙ってろ。
ここまで費用負担したから、口止め料は別に払わないけどそれは納得しろみたいな。
「サツキを早く、サツキにしてあげたいんですよ。」
書類をひったくるように手にし、まじまじと見る男に声を掛ける。
男にとっては魅力的な書類だ。
サツキになる前の男の子が邪魔で、いっそ知らない場所で野垂れ死にして欲しいと思ってたんだろうから。
「貴方達家族があの子を邪魔だと思っていたように、俺達にとって貴方達家族が邪魔で邪魔で仕方ない。」
足を組み、胸を張り煽る。
正常な判断を鈍らせるように、ゆっくりとした口調で染み込ませるように告げる。
身体の中からふつふつとした怒りは、敢えてゆっくり呼吸することでコントロールしていく。
「見詰めてた所で、透かしも何もありませんよ。」
疑り深い男だとは思うが、あまり急かすと考えを変えてくるかもしれない。
それは困る。
「サインを。それだけで、戸籍上では貴方の息子だった存在は死ぬ。貴方達は素知らぬ顔で、見知らぬ死体を息子の死体として埋葬すれば良いだけ。簡単な話でしょう?」
ふと、もしかしたらサツキのお母さんもこんな感じで離婚するように詰められたことがあるのかもしれないと思った。
私、あの人の子供妊娠してるんですよみたいな。
ドラマの見過ぎかもしれないけど、そう思えばもっと追い詰めても良いような気持ちになるから不思議。
「金の心配ですか?記載がある通り葬儀代と火葬代は俺が出しますよ。仏壇も必要なら費用を。嗚呼、でも仏教徒じゃないんですっけ?なんでもいいけど。」
カトリックかプロテスタントか。
新興宗教かもしれない。
えー、ならますます縁切りたい。
サツキに要らん勧誘とかしないで欲しい………優しいから、話だけでも聞いちゃうかもしれない。
悪質なやつだとそのままズボッと引きずり込まれるかも。
「葬儀場等も、こっちで手配します。何も心配しなくていいんです。家族葬だ。誰も知らない。会社には近しい親戚の葬儀と言えばいい。なにもバカ正直に息子の葬儀なんて言わなきゃ良いんですよ。会葬礼状くらい、幾らでも偽装してあげますよ。」
………役員って、会葬礼状の提出要るのかしらん?
分かんないけどまぁ、そういうことも出来ますよってアピールはしておく。
甘い言葉は、幾ら並べても構わない。
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