僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

かかし

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無敵の人

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「ただいまー!」
「………!」

まだかな、まだかな。
お洗濯を干したり、お母さんとおままごとをしたりしながら指折り数えて待っていると、玄関からお兄さんの声がした。
お兄さんが帰って来たんだ!
僕は急いでおままごとセットを片付けて、玄関にお兄さんを迎えに行った。

「おかえりなさいお兄さん!………あっ。」
「こんにちはー。」

寂しかったよ。
お母さんと一緒に遊んでたけど、でもお兄さんにギュってしてもらえなくて寂しかった。
だからギュってしてと言おうとしたのに、お兄さんの横に知らない人が居て声が出なくなった。
………しかもすっごく、キレイな人。
誰だろう、この人。

「こ、こんにちは………サツキです………。」
「ふふっ。サツキくん、挨拶ちゃんと出来て偉いねー。俺は百瀬忠恒ですー。よろしくー。」

それでもちゃんとご挨拶しなきゃと思って勇気をだしてご挨拶すれば、キレイな人はにっこりと笑って僕を褒めてくれた。
でもなんでだろう………すごく、モヤモヤする………。
特徴的な喋り方が嫌な訳じゃなくて、子供扱いされてるのが嫌な訳じゃなくて。
ただ、お兄さんの隣にこの人が居るっていうことがすごくモヤモヤする………

「でしょう!サツキ、サツキただいま!ギュってして!」

でもそんなモヤモヤも、得意げな顔をしたお兄さんが腕を広げて僕を呼んでくれた瞬間にどこかに飛んで行った。
あと、玄関前がすごく渋滞してる現実にも気付けた。
いけない。
迷惑になっちゃう。

「おかえりなさい、お兄さん。ももせさんもいらっしゃい。お家の中に入ろ?」
「サツキ!?サツキ、ギュッてして!!」
「お家入ったらね。」

ひんひんと泣きそうな声を出すお兄さんには申し訳ないけど、中に入らないともしもお隣さんが帰って来たら迷惑になっちゃう。
まぁ、まだお隣さんが帰って来る時間じゃないけど、具合が悪くなったりで急に帰って来るかもしれないしね。
僕が通せんぼしてるみたいになってたから少し身体をズラして、まずはももせさんをお家の中にお招きする。

「うわっ。予想以上にせまーい!よくこんな所で二人で住めるね!」
「ピッタリくっつかないとなんで、最高ですよ。引越し予定ですけど。」

ワンルームのこのお家に廊下らしい廊下はない。
玄関入ったらすぐにおトイレとお風呂があるから少し廊下っぽくなってるだけで、そこからすぐ冷蔵庫とちゃぶ台でいっぱいになっちゃうお部屋がある。
お兄さんは背が高くて筋肉質?ってやつだからお兄さん一人居るだけでもいっぱいだなぁってなるのに、ももせさんもお兄さんくらい大きいから結構………せまい………。

「お邪魔しまーす。うわーっ!せっまーい!」
「はいはい。サツキ、狭いから俺の膝の上おいで。サツキに関係する話でもあるし。」

ちゃぶ台出してるから俺の居場所無いな、どうしようって思ってたらお兄さんが僕を抱っこして膝の上に乗せてくれた。
すごく嬉しいけど、いいのかな?
僕に関係する話っていうのも気になるけど、そもそも真剣な話じゃないのかな?

「サツキくん、いくつか質問してもいーい?」
「は、はい!」

ももせさんがそう言って、僕に何個か質問をした。
思い出せる範囲で答えたけど、それ、何か意味あるのかな?って思ってしまう。
だってその殆どが、だから。
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