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僕よりも可哀想な人はいっぱい居る
EX
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そんなつもりじゃなかった。
俺は半年前、その言葉はとっても軽くて、そしてとっても重いんだと身を以て思い知った。
羨ましかったんだ。
どこにでも居るような顔をしているクセに、あんなにも美しい兄と父を持っているアイツが。
だから奪おうと思った。
今思えば、俺だって再婚相手の連れ子ではあるものの【家族】なんだから、アイツに嫉妬する必要もなかったし、アイツを陥れる意味なんて勿論無かったんだ。
でも、あの時はアレが最適だと思ってた。
何しても無反応なアイツ自身も気に食わなかった。
なのに―――
『ごめんなさい………おかあさん、ごめんなさい………』
割れたマグカップの破片で傷だらけになりながらも、そう言って涙を流すアイツに一気に頭が冷えた。
俺は、何をやっていたんだろうか。
彼を孤立させて、何をしたかったんだろうか。
彼が父や兄に何故か疎まれていることは知っていたし、分かってた。
理由は分からなくても、ちゃんと理解していたのに。
彼は迷子のような表情で破片を抱き締めたまま、ふらふらと部屋を出て行った。
でも俺も兄も、てっきり自分の部屋に帰ってるんだと思ったんだ。
だからちゃんと片づけたら謝ろうと思って、掃除をしながら兄に今まで騙していたことも含めて謝罪して、兄と一緒に彼の部屋に行った。
許してもらえるとは思ってないけど、罪滅ぼしをしたいんだと思って。
けれども部屋は、もぬけの殻だった。
一体どこに?
呆然とする俺の横で、兄が何かに気付いたような仕草をして玄関へと走った。
靴はある。
でも、彼の姿は家中を探してもどこにも居なかった。
俺と兄は父が戻ってから、正直に告白して彼が居なくなったことを報告した。
しかし父は眉根を寄せるだけで、何も言わなかった。
寧ろ外を探そうとする俺と兄を止める始末で………
俺のせいだと、思った。
もしも彼が殺されていたら。
もしも彼が危険な目に遭っていたら。
それは全部、調子に乗った俺のせいだと思った。
俺と兄はこの半年間毎日、新聞やニュースで彼位の年頃の男の子のニュースが流れてないか確認し続けた。
もう近くには居ないかもしれないけれど、それでも学校から帰って近所中を、休みの日は市外も駆けずり回って探した。
子供の俺達には、それしかできなかった。
『世界には、貧困に苦しみ死んでいく子供達がいます』
ニュースをチェックしていたTVが、もう何度も目にしているCMを流し始める。
でも俺にとっても、多分兄にとっても、どうでも良い話だった。
俺と兄にとって、彼以上に可哀想な子なんて居ないんだから。
俺は半年前、その言葉はとっても軽くて、そしてとっても重いんだと身を以て思い知った。
羨ましかったんだ。
どこにでも居るような顔をしているクセに、あんなにも美しい兄と父を持っているアイツが。
だから奪おうと思った。
今思えば、俺だって再婚相手の連れ子ではあるものの【家族】なんだから、アイツに嫉妬する必要もなかったし、アイツを陥れる意味なんて勿論無かったんだ。
でも、あの時はアレが最適だと思ってた。
何しても無反応なアイツ自身も気に食わなかった。
なのに―――
『ごめんなさい………おかあさん、ごめんなさい………』
割れたマグカップの破片で傷だらけになりながらも、そう言って涙を流すアイツに一気に頭が冷えた。
俺は、何をやっていたんだろうか。
彼を孤立させて、何をしたかったんだろうか。
彼が父や兄に何故か疎まれていることは知っていたし、分かってた。
理由は分からなくても、ちゃんと理解していたのに。
彼は迷子のような表情で破片を抱き締めたまま、ふらふらと部屋を出て行った。
でも俺も兄も、てっきり自分の部屋に帰ってるんだと思ったんだ。
だからちゃんと片づけたら謝ろうと思って、掃除をしながら兄に今まで騙していたことも含めて謝罪して、兄と一緒に彼の部屋に行った。
許してもらえるとは思ってないけど、罪滅ぼしをしたいんだと思って。
けれども部屋は、もぬけの殻だった。
一体どこに?
呆然とする俺の横で、兄が何かに気付いたような仕草をして玄関へと走った。
靴はある。
でも、彼の姿は家中を探してもどこにも居なかった。
俺と兄は父が戻ってから、正直に告白して彼が居なくなったことを報告した。
しかし父は眉根を寄せるだけで、何も言わなかった。
寧ろ外を探そうとする俺と兄を止める始末で………
俺のせいだと、思った。
もしも彼が殺されていたら。
もしも彼が危険な目に遭っていたら。
それは全部、調子に乗った俺のせいだと思った。
俺と兄はこの半年間毎日、新聞やニュースで彼位の年頃の男の子のニュースが流れてないか確認し続けた。
もう近くには居ないかもしれないけれど、それでも学校から帰って近所中を、休みの日は市外も駆けずり回って探した。
子供の俺達には、それしかできなかった。
『世界には、貧困に苦しみ死んでいく子供達がいます』
ニュースをチェックしていたTVが、もう何度も目にしているCMを流し始める。
でも俺にとっても、多分兄にとっても、どうでも良い話だった。
俺と兄にとって、彼以上に可哀想な子なんて居ないんだから。
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