僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

かかし

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僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

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「お兄さんの好きに呼んで。」

あの子はそう言ったから、俺は遠慮なくあの子のことを【サツキ】と呼ぶことにした。
俺が犬を飼ったときに絶対に付けたかった名前だ。
由来を言えば、サツキは特に不快に思うこともなくじゃあお兄さんのわんこだねと笑った。

サツキが持っていた破片の理由を聞いたら、流石に捨てられなかったから、隠すというていで実家から送られたせんべいが入っていた缶に入れた。
ただ入れるだけだと味気なかったから、ずっと前に粗品で貰って一度も使ってなかったキッチンペーパーを開けて、底に敷いてその上に置くことにした。

「いいの?」
「良いよ。お母さんも、ふかふかのベッドで寝た方が嬉しいだろうし。」

俺がそう言えば、サツキは嬉しそうに笑った。
サツキ自身気付いてないみたいだけど、破片と鏡に映る自分を【お母さん】と同一視している節があった。
だから俺も、そこに合わせることにした。
本当は正すのが【普通】で【常識的】なんだろうけど、そもそも俺達は【誘拐犯】と【被害者】だ。
今更常識がなんだの言われても、どうしようもない。

「俺達も寝ようか。」
「うん。お母さん、おやすみなさい。」

缶の中の破片に向かって、サツキは手を振った。
サツキのお母さんは、一体どういう人なのだろうか。
誰に許されなくても良いけど、サツキのお母さんには許されたいなと思いながら布団に入る。
勿論、サツキも一緒に。
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