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僕よりも可哀想な人はいっぱい居る
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『無能のクセに』
『どうせ顔だけだろ?』
『カラダで稼いでるんじゃないのか?』
いつもいつもいつも、俺の評価にこびりつくのはソレだ。
高校生の頃から始まったそれは、大学生になっても社会人になってもこびりつく。
どうしようもない奴ら。
そして、どうしようもない俺。
結局全部から逃げるために、ブラック企業だって分かってて今の職場に飛び込んだ。
分かってて、しかも望んであの会社に入ったんだ。
他の奴らより多少心は楽だったが、それでも毎日、日付が変わっても続く労働は元々そう強くない俺の心を削っていく。
癒されたい。
甘やかされたい。
甘やかしたい。
俺は自分で言うのもなんだが、そこらのアイドルに負けない位には顔が良い。
だけど、だからだろうか。
周りが勝手に牽制しあって告白された覚えすらないし、俺自身も誰かを好きになったことがない。
つまり、恋人が居たことがないのだ、俺は。
でも人肌が恋しくならない訳じゃないし、他人の愛が欲しくない訳じゃない。
寧ろ飢えていた。
誰かを愛したい。
誰かに愛されたい。
でも、俺から何かをするという勇気が無かった。
「ねぇ、君。」
「………?」
「誘拐、して良い?」
だから、だからだろうか―――
帰り道の公園で、割れた何かの破片を抱き締めるように持ちながら虚ろな目をしているあの子を見付けた時、俺は普段思わないことを思ったし、普段なら絶対しないような行動をした。
時刻は午前二時十六分。
そんな時間にこんな所で、幾つか知らないけどどう見ても未成年の男の子が居たら、どんな扱いされたって文句は言えないだろう?
ましてや、頬を殴られたのか醜く腫らして皮膚を変色させた男の子だ。
嬲り殺されるかもしれない。
そういう趣味の男にレイプされてたかもしれない。
そう考えると、誘拐するだけで何も考えてない俺はずっとずっとマシな気がする。
「………誘拐じゃ、ないよ」
「え?」
「お兄さんは落ちてた物を拾っただけ。そうでしょう?」
しかしあの子は、虚ろな目をしたまま俺の暴論を許した。
今思えば、あの子は俺以上にギリギリだったし、俺以上に誰でも良かったんだと思う。
それでも俺は頭が回ってなかったから、割れた破片を持ったままのあの子を抱えて帰った。
人一人、とても重かったけれど、不思議と苦じゃなかった。
『どうせ顔だけだろ?』
『カラダで稼いでるんじゃないのか?』
いつもいつもいつも、俺の評価にこびりつくのはソレだ。
高校生の頃から始まったそれは、大学生になっても社会人になってもこびりつく。
どうしようもない奴ら。
そして、どうしようもない俺。
結局全部から逃げるために、ブラック企業だって分かってて今の職場に飛び込んだ。
分かってて、しかも望んであの会社に入ったんだ。
他の奴らより多少心は楽だったが、それでも毎日、日付が変わっても続く労働は元々そう強くない俺の心を削っていく。
癒されたい。
甘やかされたい。
甘やかしたい。
俺は自分で言うのもなんだが、そこらのアイドルに負けない位には顔が良い。
だけど、だからだろうか。
周りが勝手に牽制しあって告白された覚えすらないし、俺自身も誰かを好きになったことがない。
つまり、恋人が居たことがないのだ、俺は。
でも人肌が恋しくならない訳じゃないし、他人の愛が欲しくない訳じゃない。
寧ろ飢えていた。
誰かを愛したい。
誰かに愛されたい。
でも、俺から何かをするという勇気が無かった。
「ねぇ、君。」
「………?」
「誘拐、して良い?」
だから、だからだろうか―――
帰り道の公園で、割れた何かの破片を抱き締めるように持ちながら虚ろな目をしているあの子を見付けた時、俺は普段思わないことを思ったし、普段なら絶対しないような行動をした。
時刻は午前二時十六分。
そんな時間にこんな所で、幾つか知らないけどどう見ても未成年の男の子が居たら、どんな扱いされたって文句は言えないだろう?
ましてや、頬を殴られたのか醜く腫らして皮膚を変色させた男の子だ。
嬲り殺されるかもしれない。
そういう趣味の男にレイプされてたかもしれない。
そう考えると、誘拐するだけで何も考えてない俺はずっとずっとマシな気がする。
「………誘拐じゃ、ないよ」
「え?」
「お兄さんは落ちてた物を拾っただけ。そうでしょう?」
しかしあの子は、虚ろな目をしたまま俺の暴論を許した。
今思えば、あの子は俺以上にギリギリだったし、俺以上に誰でも良かったんだと思う。
それでも俺は頭が回ってなかったから、割れた破片を持ったままのあの子を抱えて帰った。
人一人、とても重かったけれど、不思議と苦じゃなかった。
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