魂なんて要らない

かかし

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いくら僕が頭悪くても、ちゃんと分かってるよ。
僕みたいなのはみんなから嫌われてるから話しかけちゃいけないこと。
僕に話しかけてくれる幼なじみの祐希ゆうきくんは本当は僕なんか嫌だけど、僕のお姉ちゃんと仲良しするために仕方なくしてること。
それから、男の子が男の子を好きになるのはおかしなこと。

まどか、帰ろう。」
「はい!」

ちゃんと分かってるよ。
祐希くんが僕と一緒に帰るのは、僕の家でお姉ちゃんと会うためだってこと。
だからお家に帰ったら、祐希くんに話しかけちゃいけないこと。
僕は僕の部屋から出て行っちゃいけないこと。

「今日こそは望の部屋で遊ぼうか。」

ちゃんと分かってるよ。
祐希くんは僕のお部屋なんて行きたくないから、なんて答えなきゃいけないか。
本当は言いたくないけど、僕はいつも祐希くんにメイワクをかけてるからちゃんと言わないといけない。

「ううん!お姉ちゃんが祐希くんにお話あると思うから、祐希くんはお姉ちゃんの所に行ってください!」

にっこりと、ちゃんと笑っておねがいしないといけない。
僕はちゃんと分かってるよ。
だからちゃんと、おじぎをしてお願いをする。

「………うん、そうか。じゃあ明日海あすみさんの所に行くね。」
「はい!」

祐希くんが帰るまで、僕はお部屋から出ちゃいけない。
ヤクタタズな僕は、それくらいはちゃんとしないといけない。
僕は本当は祐希くんが好きだけど、祐希くんは僕が嫌いだから、僕は近寄っちゃダメなんだ。
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