君の好きなものを、全部

かかし

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俺の心臓が叫んでる!

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とはいえ、一番の問題が食事時のマナーだ。
カトラリーは実践して覚えるのが一番良いのだけれど、如何せんまだソフィアはまだ柔く胃に優しいものしか食べられない。
そうなってくると使えるカトラリーなんてスプーンオンリーだ。
食事前後のマナーとか、スープ系飲む時のマナーは教えてあげれるけど………。

「こればかりは仕方ないね。」
「申し訳ございません………」
「いいえ、貴女は何も悪くないわ。悪いのは貴女をそこまで追い詰めた貴女の【元】ご家族の責任よ。」

ディナーの準備をしながらソフィアの勉強をどう進めるか家族全員で話し合っていると、母上がそうぷりぷりと怒り始めた。
母上は貴族らしからぬ感情豊かな人で、それを隠すために普段は扇を使っているんだが今はその相棒もテーブルの上でお留守番。
つまり、美人の鬼の形相が見えちゃってるんだよなぁ。

「そうそう。今は身体を成長させることが先決だ。家族が健やかであることが、なによりも幸せだからね。」
「家族………」

父上の言葉に、ソフィアが予想外のことを言われたとばかりに口を開ける。
おや、マナーが宜しくないぞ。
思わず笑ってしまいそうになるけど、彼女は真剣な訳だし今はまだ厳しくしなくても良いだろう。

「そうだよ、ソフィア。俺のお嫁さんになるんだから、俺達は家族だ。」

まだ骨が目立つ頬を撫でてそう言えば、じんわりとソフィアの眦に涙が浮かぶ。
それがどういう意味の涙なのかはちょっと………嘘、かなり気になる。
え?今更だけどソフィアって俺との結婚嫌だったりする?
もう手放す気ないけど?

「私、家族と名乗って良いのですか?」

―――ソフィアのその言葉を聞いて、湧き上がって来たのは紛れもない怒りだった。
彼女はどれ程蔑ろにされてきたのだろう。
それでもきっと、家族の情に憧れ続けていたのだろう。
アイツら………金を毟り取るだけ毟り取って嬲り殺しにしてやろうか。

「ソフィアは誰がなんと言おうと私の娘よ!いざとなったらユージーンを捨てます!!」
「待って。待って母上待って。」

いや別に俺は捨てられても強かに生きれる自信あるけど、あるけどね?
だからって捨てられるとソフィアが別の男のお嫁さんになる可能性があるから全力で却下だ。
俺の可愛い可愛いお嫁さんなんだ、ソフィアは。
そう思っていたら、ソフィアがキュッと俺の服の袖を掴んだ。
はっ????かわっ!!!!!?????

「ユージーン様を捨てるのは、嫌です。」
「ん"ん"ん"っ!!!!!!可愛い!!!!!!!!」
「声が大きい。下品ですし、ソフィアが怯えているわ。」

だって、可愛いんだもん。
こんな可愛い生き物に対して可愛いって言わない方が失礼。
そっちの方がマナー違反まであるだろ。

「さて、ご飯食べようか。」

父上が手を二回鳴らし、わちゃわちゃと貴族らしからぬ騒がしさをみせていた俺達に合図をする。
正直、問題は山積みだ。
けれどもまぁ、取り敢えず今はディナーだディナー。
腹が減っては戦ができぬって言うしな。
この世界でも言うかは知らんけど。
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