上 下
6 / 11
序章

6

しおりを挟む
「あ!そうだね!ごめんね、ずっと立たせててごめんね!」

僕の言葉にルイスは慌ててそう言うと、僕をお家の中に招待してくれた。
急かしたみたいになって図々しいなと我ながら思うけど、ルイスが騎士様みたいなことしだした辺りから街の人達が何事かとチラチラ見てて恥ずかしかったから、仕方ないと思って欲しい。
ごめんね………。

「ううん、大丈夫!おじゃまします!」
「うん、いらっしゃい。」

ルイスのお家は薬草屋さんだけど、居住スペースはお店の奥にあって裏口が玄関みたいになってる。
本当はちゃんと表から入ってご両親にご挨拶すべきなんだろうけど、ルイスのご両親は元々お父さんとお母さんと一緒に働いていたらしくとっても仲が良い。
養子とはいえ、お父さんとお母さんの子供だから、遊ぶときは裏から入って勝手に遊んでて良いよと言われてるので、お言葉に甘えてる感じだ。

「あ!ウィリアムだ!いらっしゃい!」

ちょっぴり恥ずかしいけどルイスにエスコートしてもらいながら家の中に入ると、まさに鈴を転がすようなという表現がふさわしい程に可愛い声が聞こえた。
声の方を見るとふわふわのウェーブかかったツインテールと、まるでお姫様みたいにフリルがふんだんに使われたワンピースを愛らしく揺らしながらこっちに駆け寄って来る一人の人物。
ルイスによく似た、でもルイスよりも目が大きくて丸っこいから可愛らしい印象を与えるその人物は―――

「キャロル!久しぶり!」
「久しぶり!兄貴もおかえり!」

ルイスの双子の弟の、キャロルだ。
キャロルはルイスと同じくらいの身長だけど、ルイスよりも細いから似合わないし可愛いのが着たいという理由でいつもふわふわひらひらしたお姫様みたいな服を着ている。
かと言って女の子になりたいかと言われるとそうじゃないらしく、単純により似合う服を着たいといいう考えらしい。
だから大きくなってもし似合わなくなったら着ないしより似合う服を着ると言ってた。

「あれ?そっちも可愛いけど、朝着てた服と違うね。」
「兄貴………すっごく良いこと言ってるけど、朝着てたの寝間着だからね。」

僕の手を取りながら、マイナスポイントって呟いてたけど何の話なんだろう。
ところで僕の家はお母さんの故郷での風習に合わせて靴をぬぐ文化だから、よそのお家に行くと毎回手間取ってしまう。
ついついクセで靴をぬいでしまいそうになるんだ。
毎回毎回あわあわとしてしまう僕に、それでもルイスもキャロルもゆっくり待ってくれるから助かる。
いつもありがとう。

「待って、キャロル。ウィリアムの左側は俺だから。」
「は?ここに来るまでの間、兄貴が居たんでしょ?じゃあ俺にゆずってよ。」

さっきまで仲良かった筈なのに、何故か急にケンカ………とまではいかないけどなんだか嫌な雰囲気になるのか………僕の左側なんて、なんなら壁でも良いのよ?
そう思うけど、なんだか言えない雰囲気。

「ウィリアムと約束したから。俺が居たら俺優先なの。」
「へぇ、じゃあ遊び行ってくれば?兄貴、そもそも今日イザベラ達と約束してたんじゃないの?」
「えっ!?本当!?」

イザベラはこの街でキャロルの次に可愛いと有名な女の子だ。
多分、ルイスのことが好きみたいで、僕とルイスが一緒に居るとにらみつけてくるから、僕は正直イザベラのことがあんまり好きじゃない………。
一番可愛いはキャロルだからか、キャロルのこともにらんでくるし。

「約束してない。誘われたけど、イザベラと遊ぶのは疲れるから嫌ってちゃんと言って断った。」
「うーん、マイナスポイント。分かるけどさ、言い方考えよう?」

またマイナスポイントされちゃった。
何のポイントがマイナスされたんだろう?
そこからもう少し言い合いしてたけど、最終的にルイスが左でキャロルが右に居るってことで落ち着いていた。
だから、僕の左側は壁でも良いんだよ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

こいつの思いは重すぎる!!

ちろこ
BL
俺が少し誰かと話すだけであいつはキレる…。 いつか監禁されそうで本当に怖いからやめてほしい。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

会社を辞めて騎士団長を拾う

あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。 その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか? 女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

恋が死に愛が生まれた日

かかし
BL
―――または、恋を殺した男の話。 或いは意図せずイケメン二人を手玉に取ってしまった平凡な男の話。 一方的な別れ話から始まる喜劇 相変わらずの【いつもの】 新鮮味はありませんが、安定感はあります(願望) 名前だけ「ウソツキは利権だけは欲す」の子達が出て来ますが、大きな関わりは無いです

処理中です...