貴方に幸せの花束を

かかし

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中編

会話を膨らませるってすごく難しい

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王宮への道は馬車だ。
理由は単純、荷物が多いから。
学園では寮生活で、ご学友候補だった以前の僕は一人部屋だったけど今回は多分、二人部屋だ。
だから必要最小限の荷物にしたけど、それでもやっぱり多くなってしまう。
魔道車は人を乗せることが出来るけど、まだ多くの荷物を載せたりは出来ない。
だから馬車で王宮に行くのが基本になる。

うん日単位の、超長旅。

仕事とはいえ付き合わせてしまうお付きの人には申し訳ない。
ましてや持病持ちだから、兄さまを送迎する時よりも気にしないといけないし………
気にしないでいいよと言われたからって、気にしないのは違うと思う。
確かに仕事だけど、臨時ボーナス貰わないとやってけないよね………。

「坊ちゃん、体調悪いんですかい?」

御者にそう言われ、僕は慌てて顔を上げる。
今はお昼ご飯も兼ねた休憩中。
僕がちゃんと薬を飲むかという監視も含めて一緒にご飯を食べていると、ぼんやり考え事しているのを体調不良と勘違いしたみたいだ。

「ううん、大丈夫。」
「じゃあ、学園生活が不安ですかい?」
「それは………ちょっと、ある、かも………」

同室の子と仲良くなれるかなとか、友達できるかなとか。
不安要素はいっぱいだ。
以前の僕に友達は居なかったし。

「友達って、どう作るの………?」
「うーん、難しい話ですねぇ………あ、いや、友達って基準の話ですよ!」

友達作るのって、そんなに難しい話なのか。
思わずしょんぼりとしていると、御者があわあわとフォローにならないフォローを入れる。
難易度上がってるよォ………

「ほら、友達の基準って人それぞれでしょ?仲良くなり方も人それぞれ。マニュアルなんてないんですよ。」

御者の言葉に、お昼ご飯のパンを一口齧りながら頷く。
それは分かるけど、難しい………
むぅっと唇を尖らせれば、御者は微笑ましそうな顔をして言った。

「それでもキチンと挨拶して、会話してたら、自然と友達になってるもんなんですよ。」

友達居る人の言葉だ。
そう簡単に言ってくれるなよと思っちゃう。
挨拶は大事。
そこは出来る。
けど、会話を膨らませるってすごく難しい。

「できるかな………」
「出来ますよ。少なくとも、俺とこうして会話してるじゃないですか。」

御者が笑う。
果たしてこれが【会話】なのか微妙だ。
そういえば、これも十分会話だと言う。

「まだまだ道程は長いですし、俺でよかったら自然な会話の練習しましょうか。」
「いいの?」
「ええ。あとね、無理に自分から話し続けなくても良いんですよ。時には聞き手に回るのも、一種の才能です。」

そうして学園に着くまでの道中、僕との会話に付き合ってくれた。
時にはアドバイスもくれるからすごく勉強になったんだけど、正直学園までの道のりだけじゃ足りない………。

「大丈夫ですよ、自信を持って。」

グダグダと思っていたら、笑いながら御者は言った。
本当に大丈夫かな?と思うけど、でもまぁ、いつまでも時間外労働させるのは申し訳ない。
荷物運びもあるしね。

「さぁ、前を向いて。大丈夫。坊ちゃんなら、友達ではなく親友が出来ますよ。」
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