49 / 51
後編
1回目のうつつ、そして―――
しおりを挟む
―――幸せだと気付くのは、いつだってその幸せが無くなってからだった。
「ついに出来たぞ!俺の最高傑作だ!」
まだ私が俺だった頃。
まだ画素数も安定していない、小型といってもそう小さくないコンピューターを胸張って掲げる。
そんな俺に二人は、何が言いたいのか分からないといった表情で首を傾げた。
「あれ?そのコンピューターは、以前からお持ちじゃなかったです?」
「記憶違いではなければ、それは昨日も持って来ていたろう?」
「違う!中身だ中身!ほら、挨拶しろ。」
音声認識だって安定してなかったのに、私もよくこんな自信満々に言えたものだと今なら思う。
けれど二人ならば褒めてくれる。
そんな確証が、確かにあったのだ。
「ハジメマシテ。」
「「おおっ!凄い!喋った!」」
固い、面白味のない標準の機械音声。
今思えば何も褒める所なんて何一つなかったのにそれでも二人は絶対に褒めてくれるという確信があったし、そして案の定二人は盛大に褒めてくれた。
私はそれが嬉しくなって、ますます大きく胸を張る。
「これ何?」
「AI。人工知能だ。まだ何も知らないが、これからインターネットを使ってどんどん自己学習していく。」
「だがインターネットの妄言や、真実とは違う解釈も学習するんじゃないのか?」
「それは俺達が訂正していくんだ。まだネットが普及してない今だからこそ、修正と条件付けが出来る。」
自信満々に、それでいて掻い摘んで説明していく。
この頃、まだAIはおろかインターネットすら一般的ではなかった。
正直私自身が育てていくには危険性もあったし、オーバーテクノロジーと言っても過言じゃなかった。
でも若さ故の勢いと愚かさで、後に最高峰と呼ばれることになる【Hector】を創り上げてしまった。
「………子育てみたいですね。」
「ふはっ!」
私の説明を聞いてルイがしみじみとそう言い、それを聞いてドムが笑う。
一応腹を抱えるのは耐えているようだが、口元を抑えて震えてるんだからバレてるんだよ。
後、お前の笑い方、特徴的過ぎ。
「つまりこの子、レオが作ったんならレオの子ですね!」
「は?俺が生んだのか?」
「ふはーっ!あながち間違いではないかもですよ!」
そして閃いたと言わんばかりにルイが言った言葉に、そして思わずツッコんでしまった私に、ドムがとうとう変な悲鳴を上げながら吹き出し腹を抱え出した。
普段はクールなクセに、俺達三人で居るとドムは笑い上戸になる。
特に、ルイの言動に関してはかなりのツボらしい。
こうしてドタバタとした空間で、俺達はヘクターを育てた。
ルイが名前を決め、そして私を基準に性格を決めた。
そしてドムが自分の音声を使って、機械音声をよりリアルになるようにとカスタマイズした。
あの頃が、一番幸せだった。
あの三人だけの秘密の時間が、ずっと続くと思っていたんだ。
三人で居る時間が、本当に幸せだったんだ。
もう戻れないって、分かっていても、それでも私は―――
ハロー、ハロー
ハロー、ハロー
ハロー、ハロー
そこに居ますか?
ふわりと、風が舞う。
俺の不安や悲しみを、吹き飛ばすように。
やがて風が強くなり、帆をいっぱいに膨らませる。
三人で眠る、幸せな眠りへと旅立つ為の小舟の帆を。
「ついに出来たぞ!俺の最高傑作だ!」
まだ私が俺だった頃。
まだ画素数も安定していない、小型といってもそう小さくないコンピューターを胸張って掲げる。
そんな俺に二人は、何が言いたいのか分からないといった表情で首を傾げた。
「あれ?そのコンピューターは、以前からお持ちじゃなかったです?」
「記憶違いではなければ、それは昨日も持って来ていたろう?」
「違う!中身だ中身!ほら、挨拶しろ。」
音声認識だって安定してなかったのに、私もよくこんな自信満々に言えたものだと今なら思う。
けれど二人ならば褒めてくれる。
そんな確証が、確かにあったのだ。
「ハジメマシテ。」
「「おおっ!凄い!喋った!」」
固い、面白味のない標準の機械音声。
今思えば何も褒める所なんて何一つなかったのにそれでも二人は絶対に褒めてくれるという確信があったし、そして案の定二人は盛大に褒めてくれた。
私はそれが嬉しくなって、ますます大きく胸を張る。
「これ何?」
「AI。人工知能だ。まだ何も知らないが、これからインターネットを使ってどんどん自己学習していく。」
「だがインターネットの妄言や、真実とは違う解釈も学習するんじゃないのか?」
「それは俺達が訂正していくんだ。まだネットが普及してない今だからこそ、修正と条件付けが出来る。」
自信満々に、それでいて掻い摘んで説明していく。
この頃、まだAIはおろかインターネットすら一般的ではなかった。
正直私自身が育てていくには危険性もあったし、オーバーテクノロジーと言っても過言じゃなかった。
でも若さ故の勢いと愚かさで、後に最高峰と呼ばれることになる【Hector】を創り上げてしまった。
「………子育てみたいですね。」
「ふはっ!」
私の説明を聞いてルイがしみじみとそう言い、それを聞いてドムが笑う。
一応腹を抱えるのは耐えているようだが、口元を抑えて震えてるんだからバレてるんだよ。
後、お前の笑い方、特徴的過ぎ。
「つまりこの子、レオが作ったんならレオの子ですね!」
「は?俺が生んだのか?」
「ふはーっ!あながち間違いではないかもですよ!」
そして閃いたと言わんばかりにルイが言った言葉に、そして思わずツッコんでしまった私に、ドムがとうとう変な悲鳴を上げながら吹き出し腹を抱え出した。
普段はクールなクセに、俺達三人で居るとドムは笑い上戸になる。
特に、ルイの言動に関してはかなりのツボらしい。
こうしてドタバタとした空間で、俺達はヘクターを育てた。
ルイが名前を決め、そして私を基準に性格を決めた。
そしてドムが自分の音声を使って、機械音声をよりリアルになるようにとカスタマイズした。
あの頃が、一番幸せだった。
あの三人だけの秘密の時間が、ずっと続くと思っていたんだ。
三人で居る時間が、本当に幸せだったんだ。
もう戻れないって、分かっていても、それでも私は―――
ハロー、ハロー
ハロー、ハロー
ハロー、ハロー
そこに居ますか?
ふわりと、風が舞う。
俺の不安や悲しみを、吹き飛ばすように。
やがて風が強くなり、帆をいっぱいに膨らませる。
三人で眠る、幸せな眠りへと旅立つ為の小舟の帆を。
39
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる