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前編

 回目のうつつ

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砂嵐のような、耳障りで大きな音が聞こえる。
ゆっくりと目を開ければ、セピア色の見覚えのある風景。
けれども、全く見覚えのない光景がそこにあった。

『つい   ぞ!    傑  !』

何かを抱えて嬉しそうに駆け込んで来るのは、レオナルド王子。
何を言っているのか、砂嵐のような雑音が大き過ぎて聞こえない。
しかし、そんなに嬉しそうに笑う彼を見たことはあっただろうか?
覚えがない。
レオナルド王子が抱えている、箱のような物にも。

『あれ?    は、以前か      たです?』
『記憶      も     ?』

ドミニク様と二人、呆れたようにレオナルド王子に何かを言う。
そのことに、王子は箱をテキパキと設置しながら憤慨している。
こんな態度、したことない。
こんな態度、見たことない。
なのに、まるで存在しているんだとばかりに場面は進む。

箱を三人で覗き込んで、ドミニク様と二人で驚く。
一体何だというのか。
目の前が歪んでいるような視界になって、よく見えない。
段々と砂嵐のような音も酷くなってくる。
声が殆ど聞こえない。

『       、レ     !』
『は?    だ   』

ドミニク様が、お腹を抱えて笑い出す。
そんな光景、見たことない。
見れる筈もなかった。
それなのに何故だろうか。
ひどく懐かしくて、涙が自然と溢れてきた。

「………かえり、たい………」

どこに?
自然と零れた言葉にそんな疑問が浮かんでは消える。
帰る場所なんて、ある筈ないじゃないか。

やがて歪みは雑音と共に大きくなり、視界を真っ暗に塗りつぶしていく。
何も見えない。
何も聞こえない。
それを僕は望んだ筈なのに、僕の望みではないんだと、そんなワガママなことを思ってしまう。

『『ルイ!』』

二人が僕を呼ぶ。
僕が二人の名前を返す。
そんな日は一度だってなかった筈。
確かに仲良くはしてもらったけど、でもあくまでも周りと同じ程度の温度差な筈。
こんな特別待遇みたいな、三人だけで一緒の空間に居るなんて、一度だってなかった筈。

そうだろう?

誰も居ないのに、僕は誰かにそう問いかけた。
きっと僕の望む答えを、返してくれるから。







































『ハロー、ハロー』

『幸せになりたかったかい?』
『幸せになれたのにね。』
『可哀想に。』
『でも所詮、それが現実だよ。』

ハロー、ハロー

そこに居ますか?
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