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前編
それでもしっかり前を見て歩かなきゃ
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会場は、とても煌びやかだった。
王子様のお祝いのパーティーなんだから当たり前なんだけど、でも以前の僕も含めて王宮の中は久しぶりだから、その煌びやかさに思わず腰が引けてしまう。
それでもしっかり前を見て歩かなきゃ。
僕、お兄ちゃんだもの。
「ルイ、苦しかったら我慢しないで言いなさい。いいね?」
「はい。」
「おとうさまがいらっしゃらないときは、わたしでもいいのよ?」
おやおやおや?
父様の言葉に便乗するように、妹は胸を張ってそう言った。
これはどっちが歳上なのか分かんないね。
思わず撫で回したくなるが、折角綺麗にセットされた髪が崩れちゃうから我慢我慢。
「うん!ありがとう、カノンノ!」
でもその代わり、小さくなった僕よりも小さい妹の手を握り、安心させるように笑う。
思えば以前の僕は、この小さな手をどれだけ握ってきたのだろうか。
気が付けばお互い大人になって、そして喪って―――
「さぁ、行こうか。」
父様に背を押される。
ご学友候補の子供達の挨拶が終われば、僕のようなご学友候補にもなれない子供達の挨拶になる。
ご学友候補の子達は軽く雑談をするんだけど、そうじゃない子達は本当にご挨拶しただけでおしまいだ。
だって、王子様に覚えて頂く必要無いからね。
一応パーティーが終わるまでは居ることもできるけど、子供はそんなに長い時間起きていられない。
そのことに配慮した短い時間のパーティーだけど、普通にご学友にもなれない子達は終わり次第とっとと帰る。
殆どが僕みたいに田舎貴族だから長旅でここまで来て疲れてるしね。
「およばれするのはまだですよね?」
「うん。」
「じゃあ、すこしおそとですわってていいですか?」
「辛いかい?」
父様の心配そうな問いに、無言で頷く。
いや、本当に申し訳ないんだけど普通に長い。
心臓云々関係なく、僕達の番が来るまでまだまだ続きそうだ。
以前はご学友候補だったから割と早くご挨拶出来たけど、後ろになればなる程こんなに長くなるのかと思うとなんだかすごく申し訳なってくる………。
まぁ、僕は平気だけど妹は辛いだろう………
「じゃあ少しの間座ってなさい。但し、あのベンチから動いてはいけないよ。お手洗いに行きたい時は父様に言うこと、いいね。」
「はい。いこう、カノンノ。」
「はい、ちいにいさま!」
お手洗いは王宮に入る前に行ったし、多分大丈夫だろう。
ジュース飲んだら、分かんないけど。
そう思いながら、僕達と同じように順番を待ってる親子達も多くいる庭に行き、近くにあったベンチに二人で座る。
王都にある学園に通われてる方ももうすぐ着く頃だろうから、もうちょい待ってたら兄様に会えるかもしれない。
「………どうして………」
それまで時間を潰そうとカノンノと手遊びして遊んでいたら、驚愕の色に染まったキレイなボーイソプラノが聞こえてきて思わず手を止める。
なんだか不穏な雰囲気だっていうのもあったけど、それよりもその声に聞き覚えがあったからだ。
そんな筈はない。
そう思いながら、恐る恐る振り返る。
そこに居たのは、漆黒の尾と同じく漆黒のピンと立った耳を持つ、涙が出る程に美しい人。
僕がかつて愛した、ドミニク様その人だったのだから。
王子様のお祝いのパーティーなんだから当たり前なんだけど、でも以前の僕も含めて王宮の中は久しぶりだから、その煌びやかさに思わず腰が引けてしまう。
それでもしっかり前を見て歩かなきゃ。
僕、お兄ちゃんだもの。
「ルイ、苦しかったら我慢しないで言いなさい。いいね?」
「はい。」
「おとうさまがいらっしゃらないときは、わたしでもいいのよ?」
おやおやおや?
父様の言葉に便乗するように、妹は胸を張ってそう言った。
これはどっちが歳上なのか分かんないね。
思わず撫で回したくなるが、折角綺麗にセットされた髪が崩れちゃうから我慢我慢。
「うん!ありがとう、カノンノ!」
でもその代わり、小さくなった僕よりも小さい妹の手を握り、安心させるように笑う。
思えば以前の僕は、この小さな手をどれだけ握ってきたのだろうか。
気が付けばお互い大人になって、そして喪って―――
「さぁ、行こうか。」
父様に背を押される。
ご学友候補の子供達の挨拶が終われば、僕のようなご学友候補にもなれない子供達の挨拶になる。
ご学友候補の子達は軽く雑談をするんだけど、そうじゃない子達は本当にご挨拶しただけでおしまいだ。
だって、王子様に覚えて頂く必要無いからね。
一応パーティーが終わるまでは居ることもできるけど、子供はそんなに長い時間起きていられない。
そのことに配慮した短い時間のパーティーだけど、普通にご学友にもなれない子達は終わり次第とっとと帰る。
殆どが僕みたいに田舎貴族だから長旅でここまで来て疲れてるしね。
「およばれするのはまだですよね?」
「うん。」
「じゃあ、すこしおそとですわってていいですか?」
「辛いかい?」
父様の心配そうな問いに、無言で頷く。
いや、本当に申し訳ないんだけど普通に長い。
心臓云々関係なく、僕達の番が来るまでまだまだ続きそうだ。
以前はご学友候補だったから割と早くご挨拶出来たけど、後ろになればなる程こんなに長くなるのかと思うとなんだかすごく申し訳なってくる………。
まぁ、僕は平気だけど妹は辛いだろう………
「じゃあ少しの間座ってなさい。但し、あのベンチから動いてはいけないよ。お手洗いに行きたい時は父様に言うこと、いいね。」
「はい。いこう、カノンノ。」
「はい、ちいにいさま!」
お手洗いは王宮に入る前に行ったし、多分大丈夫だろう。
ジュース飲んだら、分かんないけど。
そう思いながら、僕達と同じように順番を待ってる親子達も多くいる庭に行き、近くにあったベンチに二人で座る。
王都にある学園に通われてる方ももうすぐ着く頃だろうから、もうちょい待ってたら兄様に会えるかもしれない。
「………どうして………」
それまで時間を潰そうとカノンノと手遊びして遊んでいたら、驚愕の色に染まったキレイなボーイソプラノが聞こえてきて思わず手を止める。
なんだか不穏な雰囲気だっていうのもあったけど、それよりもその声に聞き覚えがあったからだ。
そんな筈はない。
そう思いながら、恐る恐る振り返る。
そこに居たのは、漆黒の尾と同じく漆黒のピンと立った耳を持つ、涙が出る程に美しい人。
僕がかつて愛した、ドミニク様その人だったのだから。
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