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タール村編
遭遇、そして戦闘
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「さて、とりあえずどうすっかなー」
と、彰は周りを見渡しながら考える。しかし辺りあるのはいくら見ても鬱蒼と茂る木ばかりで村どころか人がいる気配すらなかった。
「水もない、食料もない、お金もない。おまけに持ってるのはこのはたきだけ、この状況で俺にどうしろっつーんだよ。
そもそも何でこんなとこにいるのかもわからんし……。
まぁそれについちゃ考えるだけ無駄っぽいし、考えるのやめたが」
彰がこの状況ですぐに混乱から立ち直り、これからどうするかという考えに至れたのは本人のこの良い意味で短絡的な性格によるところが大きい。
『どうしてこうなったかとか考えてもどうせわかんねーし、これからどうするか考えよう』という感じ……要するに単純バカなのだ。“いい意味で”
「……はぁ、しゃーない、ここで立ち止まって考えててもどうしようもないし、とりあえず適当に歩き回ってみるしかないか」
そう考えると彰は暗い森の中を適当に歩き始めた。
本来このような場合暗い森をフラフラうろつく等というのは自殺行為で、最初の場所で救助を待つのが最良なのだが……彰の頭の中にはじっとしているなどという選択肢は存在していない。
彰は当てもなく暗い森を歩き続ける。
しかし、どれだけ歩いても視界に移る景色は変わらず、出口は見えない。
それはまるで出口の無い迷宮のようで少しずつ嫌気がさしてくる。
「にしても変な森だよなぁ~ここ。
木は普通に木だけど偶になんか形容しがたい形した草とか生えてるし、さっきリスみたいな生き物を見つけた気がしたがなんかしっぽが6本くらいあったし、こんな場所地球にあったか?」
世界って広かったんだなー。などと見当はずれのことを考えながら歩いていると突然右側の茂みから何か黒いものが飛び出してきた。
「うわっ! ―――なんだいったい……って、は?」
茂みから飛び出してきた黒いものが何なのかわかったとき、彰の思考は停止してしまった。
それは科学大国である日本に住んでいた彰としては、初めて見るものだったからだ。
飛び出してきたものの正体。
それは鋭く、長い牙を持ち、その全身が漆黒の体毛で覆われた虎だった。
いや、どちらかというと虎というよりサーベルタイガーという感じだろうか。
「虎ッ!? ―――でもそれにしちゃ独特の縞模様もないし、目が赤いし、それに黒いな。
出来れば逃げたいところだが……」
黒虎はどうやら彰を獲物として定めたらしく、
―――――グルルルル……
と低く唸りながら彰を逃がさないとでもいうかのようにその真っ赤な目で彰を睨みつけていた。
これでは逃げたところで背後から攻撃されてしまうだろう。今彰が助かるには結局黒虎をどうにかする以外、道は無い。
「そうもいかないみたいだな……ならいい、やってやろうじゃんか、お前は今晩の夕食決定だ」
心を決める。そうと決めたのならば迷ってはいけない。
彰は黒虎のどんな動きにも対応できるように構えをとった。
―――睨みあう両者。
人と黒虎の奇妙な膠着状態の中、最初に動いたのは黒虎だ。
黒虎は矢のような速さで彰との距離を一気に詰めるとそのまま彰に飛びかかってきた。
「うわ、速っ! ちょっと待てって!!」
それに対し、彰は慌てて自分に≪高速化≫をかける。
直後、上がる。彰の身体能力が上がるのではない。
ただ単純にその速度そのものが一段階上に上がる。
彰は自分の体に術がかかっていることを確認すると、素早い動きで飛びかかってくる黒虎を転がって回避して見せた。
しかし、黒虎は避けられたのを確認すると着地、反転して即座に彰の死角から噛みつこうとする。
回避した直後の無防備な瞬間、そこを突いたのだ。
絶妙のタイミング、黒虎は自身の今までの狩りの経験から獲物を捕らえたと確信した。
だが、黒虎は知らない。この男がそんな経験に当てはまらない人物だということを……。
(特性付与―――≪硬質化≫)
彰は自らの左腕に付与術を掛け、左腕で黒虎の噛みつきを受ける。
――――ガキンッ!
まるで金属に噛みついたかのような、硬質な音が森に響く。
彰の左腕に噛みついたはずの黒虎の歯は彰の左腕に食い込んですらいなかった。
噛みついた腕に自慢の歯が通らず、未だかつてない事態に困惑する黒虎。
こんなことは今までなかった、彼はこの森において捕食者の立場だったのだ。
自分が噛みついたものを確実に仕留め、この森で生き延びてきた黒虎にとって、彰は道の塊であり、困惑し、隙ができるのも当然であった。
その隙を彰は逃さない。
彰はがら空きとなった黒虎の腹部に前蹴りを入れ、黒虎を上空に蹴り上げた。
黒虎は何とか空中で体制を立て直し、着地と同時に距離をとろうとするが……しかし、彰はそれすらも許さない。
(属性付与―――≪炎≫)
その瞬間、彰の右腕に業炎が立ち上がり、すぐに収まる。気がつけば彼の右腕は揺らめく焔を纏っていた。
そこに落下して来る黒虎。彰はその腹を容赦なく炎を纏った右腕で貫く。
ジュウッという肉の焼かれるような音と共に、黒虎はその身を内側から焼かれ、絶命した。
「よし、これで食料ゲット! まぁちょっと焦げちゃったが気にしない気にしない!」
このままどこにもたどりつけなければ食料をどうしようかと思っていたのだが、どうやら杞憂に終わったらしい。
しかし、持ち運ぶのは大変そうなので彰は仕方なくその場で付与術を使ってたき火を作り、黒虎の肉を焼いて食べる。
黒虎の肉は何というかところどころ焦げているのこともあり、すごく硬い。
しかし、味はそれなり美味かったので彰はなんなく黒虎の肉を食べきってしまった。
そしてそこからまた歩き続けた彰だったが、すぐに日が落ちてきて、あっという間に辺りが暗くなってきてしまう。
彰はこのままでは進むのは流石に厳しいと判断すると、その場でたき火を作って動物が来ないようにし、その場で眠りについた。
こうして彰の異世界生活、その初日は何事もなく過ぎていった。
◆◆◆◆◆
あれから歩き続けること日本時間で約5日程、それだけ立つというのに彰はまだ森の中を歩き続けていた。
どれだけ歩いても人が一人も見つからないのである。
また、その道中で今度は目が真っ赤で腕が4本ある黒い熊のようなものに襲われたり、奇妙な巨大植物に襲われたりし、それを修業で身に着けた持ち前の体術と付与術でねじ伏せたりした。
しかし、そのためにかなりの体力を使ってしまった挙句、途中で見つけた木の実? などは毒があるかさっぱりわからないので食べられない。
こんな状態でもしも毒のあるものを食べてしまえば、下手をすればそれだけでジ・エンドだからだ。
まぁとは言っても、ある程度妥協して食べなければ本当に食糧難で死んでしまう。
なので黒虎の時と同じように倒した獣? の肉を付与術で無理やり焼き、半焦げ状態のそれを無理やり胃に突っ込んだりして過ごしていた。
しかし、それでも問題はまだある。それは如何せん水がないのだ。
こればっかりはどうしようもなく、いくら異常な体力を持つ彰でも体力がそこを突くのは時間の問題だった。
「な、なんなんだよ…ここは……。
いくら歩いても町すら…見つからないし…変な獣?は…出て来るし……。
挙句の果てには…植物にまで襲われるわ……本当散々だな。
というか…そもそも…ここは地球…なのか?
もしかして…異世界って…やつか」
そんなことを考えながらふらふらのまま彰はまだ歩き続ける。
しかし蔵の掃除途中に飛ばされた? ため、履いてるのは靴ではなくサンダルである。
そのため歩きにくく余計に疲れるのだ。
「み、水……オイラに水を分けてくれぇ……っていうか…もう…げんか…い……」
それを最後に彰は倒れてしまうのであった。
―――――実はもう森の出口がすぐそこなのにも気づかずに。
◆◆◆◆◆
「木の実♪キノコ♪さ・ん・さ・い!おいしいものがいっぱいだぁー♪」
そんな愉快な歌を歌いながら彼女―――エマは森の方へと向かう。
エマは森を出たところにある小さな村、タール村で暮らす12歳の女の子だ。
彼女はいつものように両親の手伝いで森に木の実などを歌を歌いながら取りに向かっていたのだった。
「さぁーて今日もいっぱいとるぞー! って、ん? なんだろうあれ……」
エマは意気揚々と入ってきた森の入り口で何かを見つける。
しかし遠くてよく見えない。
何か確認するためにゆっくりとそれに近ずいていくと、徐々にその輪郭がはっきりと見えてくる。
そうして、それが何なのか確認できた段階で、エマは思わず声を上げた。
「わっ人だ! 人が倒れてる!」
それは正しく人であった。
何か見覚えのない黒い衣を纏い、体はどこもかしこも擦り傷だらけでボロボロ。
とても大丈夫そうには見えない。
因みに、言う間でもなくそれは水が飲めなくてぶっ倒れた彰であり、エプロンなどを着けていないのは途中の戦闘でボロボロになってしまい、捨ててしまったためであった。
「大変! ママぁー、パパぁー!」
エマは慌ててそう叫びながら村に助けを呼びに村へと戻って行った。
と、彰は周りを見渡しながら考える。しかし辺りあるのはいくら見ても鬱蒼と茂る木ばかりで村どころか人がいる気配すらなかった。
「水もない、食料もない、お金もない。おまけに持ってるのはこのはたきだけ、この状況で俺にどうしろっつーんだよ。
そもそも何でこんなとこにいるのかもわからんし……。
まぁそれについちゃ考えるだけ無駄っぽいし、考えるのやめたが」
彰がこの状況ですぐに混乱から立ち直り、これからどうするかという考えに至れたのは本人のこの良い意味で短絡的な性格によるところが大きい。
『どうしてこうなったかとか考えてもどうせわかんねーし、これからどうするか考えよう』という感じ……要するに単純バカなのだ。“いい意味で”
「……はぁ、しゃーない、ここで立ち止まって考えててもどうしようもないし、とりあえず適当に歩き回ってみるしかないか」
そう考えると彰は暗い森の中を適当に歩き始めた。
本来このような場合暗い森をフラフラうろつく等というのは自殺行為で、最初の場所で救助を待つのが最良なのだが……彰の頭の中にはじっとしているなどという選択肢は存在していない。
彰は当てもなく暗い森を歩き続ける。
しかし、どれだけ歩いても視界に移る景色は変わらず、出口は見えない。
それはまるで出口の無い迷宮のようで少しずつ嫌気がさしてくる。
「にしても変な森だよなぁ~ここ。
木は普通に木だけど偶になんか形容しがたい形した草とか生えてるし、さっきリスみたいな生き物を見つけた気がしたがなんかしっぽが6本くらいあったし、こんな場所地球にあったか?」
世界って広かったんだなー。などと見当はずれのことを考えながら歩いていると突然右側の茂みから何か黒いものが飛び出してきた。
「うわっ! ―――なんだいったい……って、は?」
茂みから飛び出してきた黒いものが何なのかわかったとき、彰の思考は停止してしまった。
それは科学大国である日本に住んでいた彰としては、初めて見るものだったからだ。
飛び出してきたものの正体。
それは鋭く、長い牙を持ち、その全身が漆黒の体毛で覆われた虎だった。
いや、どちらかというと虎というよりサーベルタイガーという感じだろうか。
「虎ッ!? ―――でもそれにしちゃ独特の縞模様もないし、目が赤いし、それに黒いな。
出来れば逃げたいところだが……」
黒虎はどうやら彰を獲物として定めたらしく、
―――――グルルルル……
と低く唸りながら彰を逃がさないとでもいうかのようにその真っ赤な目で彰を睨みつけていた。
これでは逃げたところで背後から攻撃されてしまうだろう。今彰が助かるには結局黒虎をどうにかする以外、道は無い。
「そうもいかないみたいだな……ならいい、やってやろうじゃんか、お前は今晩の夕食決定だ」
心を決める。そうと決めたのならば迷ってはいけない。
彰は黒虎のどんな動きにも対応できるように構えをとった。
―――睨みあう両者。
人と黒虎の奇妙な膠着状態の中、最初に動いたのは黒虎だ。
黒虎は矢のような速さで彰との距離を一気に詰めるとそのまま彰に飛びかかってきた。
「うわ、速っ! ちょっと待てって!!」
それに対し、彰は慌てて自分に≪高速化≫をかける。
直後、上がる。彰の身体能力が上がるのではない。
ただ単純にその速度そのものが一段階上に上がる。
彰は自分の体に術がかかっていることを確認すると、素早い動きで飛びかかってくる黒虎を転がって回避して見せた。
しかし、黒虎は避けられたのを確認すると着地、反転して即座に彰の死角から噛みつこうとする。
回避した直後の無防備な瞬間、そこを突いたのだ。
絶妙のタイミング、黒虎は自身の今までの狩りの経験から獲物を捕らえたと確信した。
だが、黒虎は知らない。この男がそんな経験に当てはまらない人物だということを……。
(特性付与―――≪硬質化≫)
彰は自らの左腕に付与術を掛け、左腕で黒虎の噛みつきを受ける。
――――ガキンッ!
まるで金属に噛みついたかのような、硬質な音が森に響く。
彰の左腕に噛みついたはずの黒虎の歯は彰の左腕に食い込んですらいなかった。
噛みついた腕に自慢の歯が通らず、未だかつてない事態に困惑する黒虎。
こんなことは今までなかった、彼はこの森において捕食者の立場だったのだ。
自分が噛みついたものを確実に仕留め、この森で生き延びてきた黒虎にとって、彰は道の塊であり、困惑し、隙ができるのも当然であった。
その隙を彰は逃さない。
彰はがら空きとなった黒虎の腹部に前蹴りを入れ、黒虎を上空に蹴り上げた。
黒虎は何とか空中で体制を立て直し、着地と同時に距離をとろうとするが……しかし、彰はそれすらも許さない。
(属性付与―――≪炎≫)
その瞬間、彰の右腕に業炎が立ち上がり、すぐに収まる。気がつけば彼の右腕は揺らめく焔を纏っていた。
そこに落下して来る黒虎。彰はその腹を容赦なく炎を纏った右腕で貫く。
ジュウッという肉の焼かれるような音と共に、黒虎はその身を内側から焼かれ、絶命した。
「よし、これで食料ゲット! まぁちょっと焦げちゃったが気にしない気にしない!」
このままどこにもたどりつけなければ食料をどうしようかと思っていたのだが、どうやら杞憂に終わったらしい。
しかし、持ち運ぶのは大変そうなので彰は仕方なくその場で付与術を使ってたき火を作り、黒虎の肉を焼いて食べる。
黒虎の肉は何というかところどころ焦げているのこともあり、すごく硬い。
しかし、味はそれなり美味かったので彰はなんなく黒虎の肉を食べきってしまった。
そしてそこからまた歩き続けた彰だったが、すぐに日が落ちてきて、あっという間に辺りが暗くなってきてしまう。
彰はこのままでは進むのは流石に厳しいと判断すると、その場でたき火を作って動物が来ないようにし、その場で眠りについた。
こうして彰の異世界生活、その初日は何事もなく過ぎていった。
◆◆◆◆◆
あれから歩き続けること日本時間で約5日程、それだけ立つというのに彰はまだ森の中を歩き続けていた。
どれだけ歩いても人が一人も見つからないのである。
また、その道中で今度は目が真っ赤で腕が4本ある黒い熊のようなものに襲われたり、奇妙な巨大植物に襲われたりし、それを修業で身に着けた持ち前の体術と付与術でねじ伏せたりした。
しかし、そのためにかなりの体力を使ってしまった挙句、途中で見つけた木の実? などは毒があるかさっぱりわからないので食べられない。
こんな状態でもしも毒のあるものを食べてしまえば、下手をすればそれだけでジ・エンドだからだ。
まぁとは言っても、ある程度妥協して食べなければ本当に食糧難で死んでしまう。
なので黒虎の時と同じように倒した獣? の肉を付与術で無理やり焼き、半焦げ状態のそれを無理やり胃に突っ込んだりして過ごしていた。
しかし、それでも問題はまだある。それは如何せん水がないのだ。
こればっかりはどうしようもなく、いくら異常な体力を持つ彰でも体力がそこを突くのは時間の問題だった。
「な、なんなんだよ…ここは……。
いくら歩いても町すら…見つからないし…変な獣?は…出て来るし……。
挙句の果てには…植物にまで襲われるわ……本当散々だな。
というか…そもそも…ここは地球…なのか?
もしかして…異世界って…やつか」
そんなことを考えながらふらふらのまま彰はまだ歩き続ける。
しかし蔵の掃除途中に飛ばされた? ため、履いてるのは靴ではなくサンダルである。
そのため歩きにくく余計に疲れるのだ。
「み、水……オイラに水を分けてくれぇ……っていうか…もう…げんか…い……」
それを最後に彰は倒れてしまうのであった。
―――――実はもう森の出口がすぐそこなのにも気づかずに。
◆◆◆◆◆
「木の実♪キノコ♪さ・ん・さ・い!おいしいものがいっぱいだぁー♪」
そんな愉快な歌を歌いながら彼女―――エマは森の方へと向かう。
エマは森を出たところにある小さな村、タール村で暮らす12歳の女の子だ。
彼女はいつものように両親の手伝いで森に木の実などを歌を歌いながら取りに向かっていたのだった。
「さぁーて今日もいっぱいとるぞー! って、ん? なんだろうあれ……」
エマは意気揚々と入ってきた森の入り口で何かを見つける。
しかし遠くてよく見えない。
何か確認するためにゆっくりとそれに近ずいていくと、徐々にその輪郭がはっきりと見えてくる。
そうして、それが何なのか確認できた段階で、エマは思わず声を上げた。
「わっ人だ! 人が倒れてる!」
それは正しく人であった。
何か見覚えのない黒い衣を纏い、体はどこもかしこも擦り傷だらけでボロボロ。
とても大丈夫そうには見えない。
因みに、言う間でもなくそれは水が飲めなくてぶっ倒れた彰であり、エプロンなどを着けていないのは途中の戦闘でボロボロになってしまい、捨ててしまったためであった。
「大変! ママぁー、パパぁー!」
エマは慌ててそう叫びながら村に助けを呼びに村へと戻って行った。
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