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第60話 ネガティブ勇者、地下墓地を見つける
しおりを挟む砂漠中に響き渡るほど大きな声で、リオが言い放った。
いっそ清々しい。ここまで自信に満ち溢れていたら否定する気も起きない。
「まぁ、これで本当に勘がいいから困るのよね」
「そうなんですよね。強運というか、引きが良いというか……」
「アッハッハ! 運も実力って言うじゃねーか! 運も含めて俺の強さだ! 俺は自分の強さを信じてるだけだ!」
これくらい自信が持てたら人生変わるんだろうなとナイは思った。
ただ砂漠のことに関しては全く詳しくない。現地の人の言葉を信じるのが一番いいだろう。ナイは素直にリオの提案に従うことにした。
「それじゃあ、移動しましょうか。ナイ、立てます?」
「大丈夫、ちゃんと休めたから……」
ナイはレインズの手を借りながら立ち上がった。
一人だけ足を引っ張るわけにはいかない。弱音を吐く訳にはいかない。
震える足に力を入れて、再び歩き出した。
ーーー
ーー
「うーし。この辺で調べるか」
西に進んで数十分が経った頃、もう一度周辺を察知しようと足を止めた。
景色がほぼ変わらないせいで本当に前に進めているのか分からないが、リオの勘を信じるならこっちの道で間違いはない。
ナイは目を閉じて魔法陣を展開させ、周辺を調べた。
一面の砂。たまに頭上を横切る鳥たち。遠くにある動かない生物。形からしてサボテンだろうか。
やはり、何もない。そう思い、目を開けようとした。
「……ん?」
足元から、何かの気配を感じた。
ナイは目を閉じたままその場に膝を付き、地面に手を当てた。
泉と言うから地上にあるものだと思っていたが、違ったようだ。
地下から不思議な力を感じる。
鉱山の地下水脈もそうだった。この世界の魔力のある水は、地下に流れるのかもしれない。
「下にある」
「下、ですか? それは掘れってことになるんでしょうか?」
「なんだ、穴開けりゃいいのか?」
「……ううん。何か、光ってるのがある……」
ナイはさらに意識を集中させた。
地下でキラキラと光る何か。魔力をそこへと伸ばし、触れてみる。
「えっ!?」
すると、その光る何かは強い輝きを放ち、地面がグラグラと揺れ動いた。
突然の地震にナイは魔法陣を消し、座ったまま揺れに耐える。
ゴゴゴと地響きのような鈍い音に皆が周囲を警戒する。
何が起きているのか分からない。各々がいつ何が現れてもいいように構えておく。
だが敵が現れるようなこともなく、代わりに地面が割れて地下に続く階段が出現した。
「う、うっそー。こんなのが隠されてたなんて知らないんだけど」
驚く声とは裏腹に、テオの目は好奇心たっぷりに輝いていた。
階段はいつからそこに存在したのか分からないが、美しい光沢のある白い石で出来ており、いかにも地下に何か隠されてますという雰囲気が溢れ出ていた。
「おいガキ。この地下に、何かあるのか?」
「た、たぶん」
「んじゃ、降りてみっか……しかし、まぁ……見た目の綺麗さには似つかわしくない嫌な空気がすんな……」
「族長様には何が見えているのですか?」
レインズの問に、リオは少し嫌そうな顔をして答える。
「……この辺には霊脈があるって話はしたな。その昔、この辺りの地下には墓地があったんだよ。いや、今も俺たちが知らないだけでどこかにまだ眠っているのかもしれないけどな」
「それって、地下墓地《カタコンベ》……? 古い言い伝えでしか聞いたことないけど、本当にあったのね……」
「おうよ。そういう死者の念が染み付いて、この地の霊脈を築いてる。この地下にも、きっといるぜ? 遠い遠い御先祖様の幽霊がな」
その言葉に、皆の背筋が凍った。
ナイら幽霊やオバケなんて信じてはいないが、ここは魔法の存在する国。そういったものが出てきても不思議ではない。
「お前ら、呪われるなよ」
さらに追い討ちをかけるようにリオは言う。
得体の知れない分、魔物より怖いかもしれない。ナイは泣きそうになってしまった。
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