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第50話 ネガティブ勇者、買い物に行く
しおりを挟む城に戻り、砂漠地帯に行くための準備をするナイ達。
砂漠とは無縁の土地で暮らしていたナイは、準備しろと言われても何をすればいいのか分からない。
レインズは王に事情を説明しに行っているので、ナイはアインの部屋を尋ねることにした。
「ア、アイン。いま、平気?」
「……ん? なんだ」
部屋をノックして中に入ると、アインは大きなカバンに衣服を詰めていた。
魔法の国でも旅の支度がいるのかと思いながら、自分は何を準備すればいいのか相談した。
「そうか。お前は着替えもロクに持ってなかったな……」
「あ、うん……」
「砂漠は昼と夜で気温の差が大きく変わる。魔力を使えばその辺はどうとでもなるが……お前の力を他の奴に勘づかれても面倒だし、あまり目立ちたくもない。適当に買い揃えておくか」
「え、でも……お金……」
「ああ、そういえば言ってなかったな。お前はこの前の魔物討伐で報酬が出てる。あとで受け取りに行くぞ」
「う、うん」
そういえば前に報酬の話を聞いていた気がするとナイは思い返す。
敵を倒した数なんてどうやって把握しているのだろう、なんてことを気にしたらキリがない。ナイは素直にアインの意見に従い、街に出向くことにした。
ーーー
ーー
レインズは王と話し合いがあるとかで抜けることが出来ず、買い物にはアインとナイの二人で行くことになった。
「行くぞ」
「うん」
街に赴き、まずは魔物討伐の報酬を受け取りに役所へと向かった。
そこでは専用の水晶を使って相手の魔力を読み取り、倒した魔物の数を判別できるらしい。
どういう原理なのか分からないが、これを作ったのはテオだそうだ。その一言だけで何を出されても納得してしまいそうだとナイは思った。
「ナイ・フルヤ様の魔物討伐数は14。報酬金額は7万F《フィル》となります」
そう言って受付の女性が差し出したのは名刺サイズのカードだった。
この世界ではお金は全てこのカードに入金され、電子マネーのような感覚でやり取りが出来るそうだ。
「それじゃあ、次は服屋だな」
「う、うん」
アインも同じように報酬を受け取り、街で一番大きいという服屋へと向かう。
その道中、様々な人に声をかけられまた土産物を渡されてしまったが、ナイは以前と違ってその厚意を素直に受け止められるようになった。
「お前、よく笑うようになったな」
「え、僕が?」
「気付いてなかったのか? 前はずっと下を向いてばかりだったろ。最近は顔を上げるようになったし、表情も柔らかくなった……と、レインズ様も仰ってた」
「そう、なんだ……自分じゃ分からないけど……」
ナイは照れるように顔を赤らめた。
表情の変化まで自分では気付けない。面と向かって言われると、少しくすぐったい気持ちになる。
「い、いいから早く行くぞ。早く戻らないとレインズ様が心配される」
「う、うん」
二人はどこかぎこちない雰囲気で買い物を続けた。
砂漠に行くための服。
それから足りない日用品などを買い揃えた。
買い物中のアインは普段王子の側近なだけあって、気配りが行き届いている。
そういったことを自然とやれる彼に、ナイは感心した。
素直にカッコイイと、思ってしまった。
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