【BL】超絶ネガティブな僕が異世界で勇者召喚されました。

のがみさんちのはろさん

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第34話 ネガティブ勇者、初めての戦闘

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 朝食を済まし、ナイ達は城の入口近くに設置された転送魔法陣でリーディ鉱山に一番近い国、ロデルニア国へと向かう。
 白い光を放つ魔法陣の前に立ち、ナイはごくりと息を飲んだ。

「では、行きましょうか」
「う、うん……」

 ビクビクしてるナイに、レインズはいつもの優しい笑みを浮かべて手を差し出した。
 現代科学でワープは不可能。これは魔法のある国だからこその移動方法だ。どういう仕組みで転移出来るのか、その原理が理解できないだけに多少の恐怖がある。

 一歩前に出て、レインズの手を取る。
 魔法陣の上に立つと白い光が強くなり、周囲を包み込む。
 目も開けてられないほどの光にナイは腕で顔を覆い、ギュッと目を閉じた。


―――

――


「ナイ、着きましたよ」

 ほんの数秒。レインズの声に、ナイは恐る恐る目を開けた。
 さっきまでダナンエディア国の城の中にいたはずなのに、見知らぬ部屋の中にいた。

 白い石造りのダナンエディア城と違い、この部屋は灰色のコンクリートのような冷たい印象を受ける部屋だった。

「ここ、が……?」
「ええ。ロデルニア国の入国室です」
「入国室?」
「はい。我が国では城の中に魔法陣を設置してますが、ロデルニアでは関所のそばに魔法陣を設置しているのです」
「へぇ……」

 部屋を出て、レインズが関所の門番に軽く話をしてそのまま国には入らず北を目指して街道を歩き始めた。
 少し離れてから、ナイは後ろを振り返ってロデルニア国を見る。
 国というより、要塞のような作りだった。鉄で出来た門が国を囲い、部外者の侵入を防いでいるようだ。

「物凄い、護りだね」
「えぇ。この周囲はこれから行くリーディ鉱山もそうですが、他にも様々な山々や森など魔物も出る場所が多いので、厳重な作りになっているのですよ。それにここは吹雪になることも多いので、その対策も兼ねているんです」
「そう、なんだ」

 レインズの説明に納得し、ナイは再び前を向いて歩きだす。
 暫くは舗装された街道を歩いていくが、途中から道を反れて森の中を入っていく。

「気を付けてください。まだこの森は比較的安全ではありますが、奥の方に魔物が巣くっているという情報があります」
「は、はい」

 ナイは周りをキョロキョロと見渡しながら歩いていく。
 僅かな音にも警戒するナイに対して、レインズとアインは慣れている様子で足を進めている。魔物なんて存在しない世界から来たナイにはそんな度胸などない。
 心を落ち着けないと、と思いながらも手が震える。ナイの歩幅がだんだん小さくなっていく。

「っ! レインズ様」
「あぁ」

 先頭を歩いていたアインが足を止めた。
 少し離れた場所にある覆い茂った草木がガサガサと音を立てている。奥の方から禍々しい雰囲気を感じ、ナイはビクッと肩に力が入った。

「来ます」

 まるでレインズの声に応えるように、草むらから豹のような見た目をした黒い魔物が何匹もこちらへと飛び掛かってきた。

 アインは冷静に魔法陣を展開し、炎の弾丸を敵に向かって放つ。炎の魔法を連続で撃ち込まれた魔物は力なく地面に落ちる。
 レインズも光の剣を出現させ、魔物に斬りかかる。暗闇を裂くように、真っ二つに斬られた魔物はサーッと砂のようになって消えていった。

 二人とも手慣れた様子で魔物と対峙してる。
 その様子を見ていたナイは、ただただ溜息を零すことしか出来なかった。さすがと言うべきか、ちっとも魔物に臆することがない。
 自分も立ち向かわないといけない。ナイは深呼吸して、気持ちを落ち着けた。

「……がんばれ。やれる。やらなきゃ、いけない」

 魔法陣を展開し、教わったことを実践する。
 大事なのはイメージ。今朝見た刀を思い出し、術式を組み上げていく。
 鋭く、美しい刀身。魔力をイメージ通りの形に構築する。

「っ、ナイ!!」

 魔物の一匹がナイへと襲い掛かる。
 助けが間に合わない。レインズは大きな声でナイに危険を知らせた。

「……斬れる。斬れる。斬れ、る……!」

 魔法陣が強く輝き、黒い光が形となる。
 ナイはその光を掴み、魔物に向かって斬りかかった。

「っああああああ!」

 叫び声と共に、斬り付けられた地面に落ちて魔物は消えていった。
 ナイの手には漆黒の刀があり、美しい刀身が太陽の光を反射している。

「その刀は……」
「っ、はぁ、はぁ……で、できた」

 倒せたのは一匹だけだったが、確かな手ごたえを感じたナイは肩で息をしながらニヤけそうな口元をぎゅっと嚙み締めた。

 他の魔物も討伐し終えたアインが周囲に何の気配もないのを確認してからレインズの元へと歩み寄る。
 まだ安心はできないが、ナイの魔法も無事に発動できた。このまま先に進もうと、レインズがナイの肩を支えながら歩み出した。


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