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◇常盤一臣の場合《BL》
第2話
しおりを挟む触れたくて、触れてみたくて。
それが、いつしか好奇心から欲望へと変わっていた。
気付けば俺は俺はお前を抱いていた。
———
——
出逢いは小学校の入学式。アイツは物静かで、友達とかも作ろうとしないで、いつも一人でいたんだ。だけど勉強も運動も人一倍出来て目立っていた。
何故か俺はそれが気に入らなくって、対抗するように勉強や運動を必死に頑張った。元々頭も悪くなかったし、運動神経も良い方だったから簡単に追いついた。そうしたら今度はアイツが俺に対抗心を持つようになった。
それからだ。俺らはライバルみたいな仲になったのは。かといって敵対心とか持っていた訳でもなく、一緒に勉強したりしたこともあったし夏休みにお互いの家に泊まりに行ったりしたこともあった。親友だと言ってもいい。
そう、思っていたんだけどな。
中学に入って、俺は女子に告白された。初めての告白だったし、ちょっと気になっていた子だったから付き合った。そしたら瑛太は悔しがっていた。お前に出来て俺に出来ないことなんてない。
アイツ、クールに見えて意外と根は熱い奴なんだよな。でもアイツに好きな人もいなくて、告白は何度かされていたけど付き合ったりはしなかった。俺は、どこかでそれを安心していた。
きっと、そのことから心のどこかでアイツに友情とは別の感情を抱いていたんだ。
でも、高校に入ってすぐにアイツには彼女が出来た。中学の時の同級生で、生徒会のメンバーだった。俺と瑛太も生徒会で、その子とは結構仲が良かった。
俺の知らないところで、二人は恋心を抱いて、同じ高校に受かったのをキッカケに付き合うようになったそうだ。このとき、俺は瑛太と同じ高校を受けたことを後悔した。
俺はそのショックのせいか、そのとき付き合っていた子と別れてしまった。その子を好きだと思えなくなったんだ。
丁度高校も別だったし、後腐れもなく別れられたけど、それからの俺は少し、いやかなりダメな奴だった。告白されれば付き合って、一ヶ月もしないで別れてしまったり。
やっぱり好きでもない子と付き合っても長続きはしなかった。それを高校の三年間繰り返していた。だから凜が言った来る者拒まずっていうのは間違っていないんだよな。
そういう付き合い方を繰り返していて、よく瑛太から怒られていたっけ。不誠実だって。
でも、それを承知でみんな付き合っていたようだし、友達に自慢するためだけに俺と付き合おうとした子だっていた。ある意味、お互い様だったんだから良いだろ。むしろ、真面目な子は俺なんかに告白してこない。
まぁ、そういうのは高校卒業して止めた。虚しくなるから。
ただただ悲しさだけが残るから。
その頃にはもう、俺はアイツへの気持ちから逃げることが出来なかった。
だから半年前、俺はその時にいた彼女とも別れて瑛太に声を掛けた。彼女がいて、幸せそうに見えたアイツの心の陰りに、俺は喰らい付いた。
付き合って九年。そろそろ結婚を考えてもおかしくない年齢で、アイツも不安を感じだしたんだろう。このままでいいのか。彼女との未来が、見えなくなったんだ。
元々アイツらは友人だった。その延長で恋人同士になった。いつかは、来ると思っていた限界。それが、今だったんだ。
ずっと見てきたから分かる。二人は確かに互いを慕っていた。でも、あくまで恋。憧れ、友愛の延長。それを俺は知ってる。
いや、それはあくまで瑛太のことで彼女がどうなのかは俺は知らない。俺がずっと見てきたのは瑛太だけ。それ以外のことなんて知ったことじゃない。
彼女とは俺も仲良くしてし、本当に良い子だった。でも、俺は瑛太にしか興味なかった。だから、彼女が瑛太に対してどれくらいの気持ちを抱いてるのかなんて解らないし、知りたいとも思わない。
友達に対してかなり失礼だと思う。でも仕方ない。それが俺なんだ。
そして、アイツに触れてからの俺は今まで以上に瑛太を求めるようになってしまった。自分でも信じられないくらい、アイツにハマってる。
尋常じゃないくらいに。
どうして瑛太なのか、それは俺にも解らない。どうしてアイツにここまで惚れこんでるのか、全然わかんない。
それでも俺は、瑛太を愛してる。
凜と別れ、自宅に帰った俺はベッドに倒れるように寝転がって瑛太のことを想う。
俺は、アイツとこういう関係になったときに言った。大丈夫、俺らはお互いを好きになったりはしない。だから彼女に対して後ろめたさなど感じることはない。
絶対に俺は、お前を好きになったりしないって。だから俺達は、ただただ昂った感情をぶつけあうことが出来る。
でも、俺は今まで以上にアイツに依存するようになってしまった。築いてきた友情も、崩壊寸前のところで保ってるようなもの。
もう、友達には戻れない。俺らの関係は、いつまで続くんだろうか。
「……はぁ」
瑛太に触れたい。あの華奢な腰を抱いて、白い肌に噛みつきたい。必死に声を押し殺してるアイツの顔を思い出すだけで、俺の身体は熱を持つ。
いつもクールで表情を崩さないアイツが眉間に皺を寄せて、快楽に耐える姿は俺だけが知ってる姿。
やめろと言いながら俺を受け入れて、もっともっとと求める素直な身体。
ただ、アイツはキスだけはさせてくれない。
キスだけは、彼女以外としたくないんだろう。セックスは出来てもキスは出来ない。微妙な線引きがアイツの中であるんだろうな。
キス、したいな。
アイツの唇に、触れたい。噛みついて、舐めまわして、離れても俺を思い出してしまうくらいあの口に俺の味を染み込ませたい。この煙草の味を、アイツに覚えさせたい。
触れたい。
瑛太に、キスがしたい。
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