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第64話「パーティ」
しおりを挟む翌日になり、午前中は学園で終業式を済ませ、夕方からはパーティ。
アンジュは制服の上に黒いローブを羽織って、講堂へと向かった。
「……わぁ」
初めて入る講堂。普段は集会などに使われるが、今日は違う。
広い部屋は美しく装飾され、楽しげな音楽が流れている。中央には様々な料理が並んでいて、見た目や香りが食欲を誘う。
「よ、クロード」
「イクさん」
「どうよ、初めてのパーティは」
「凄いですね、とても楽しそうです」
いつも通りのイディックに安心し、アンジュは笑顔を浮かべる。
フローガは離れたところから様子を伺っている。今のところ怪しげな魔力も感じられないので、自分が参加してたら楽しい雰囲気を壊してしまうと空気を読んだ。
アンジュとしては一緒に参加したい気持ちもあったが、無理はさせられない。
「まぁパーティつっても男しかいないし、ほぼ飯食いに来てるようなもんだけどな」
「確かに、皆さん食べるか喋るか、って感じですね」
アンジュは周囲を見渡し、クスクスと笑みを零す。
気が緩んでしまいそうなくらい、和気あいあいとした空気で包まれている。
「クロード、ホントに帰らねーの?」
「はい。みんなが帰ってくるのを待ってますね」
「そっかぁ、じゃあお土産買ってきてやるよ」
「ふふ、ありがとうございます」
歯を見せてニカッと笑うイディックに、アンジュも笑顔を返した。
その、瞬間。
空気が一気に変わった。
「っ!?」
一瞬で空気が氷のように冷たくなり、講堂にいた人達が全員動きを止めた。
イディックも凍り付いたように瞬きひとつしない。
「な、なにが……」
アンジュが一歩足を引くと、それに反応したかのようにイディックが腕を伸ばした。
腕を掴まれたアンジュは彼を見る。血の気が全く感じられない、青ざめた顔。まるで、死人のようにしか見えない。
「そんな……イクさん!」
アンジュが叫ぶのと同時に、イディックはガクンと気を失ったように倒れた。
何が起きたのか分からず困惑していると、背後から温かな腕に抱きしめられた。
「大丈夫か」
「フローガさん! イ、イクさんが……」
「大丈夫、ちょっと気絶させただけだ。それより……」
フローガは周囲を見渡す。
ここにいる全員が完全に操られている。それも今までの暗示とは比べ物にならない、強い洗脳だ。
彼らはゆっくりと、こちらへ歩み寄ってきている。無傷でやり過ごすのは、ほぼ不可能。
かと言って、アンジュの前で彼らを手にかけるわけにもいかないし、出来ればそんなことはしたくない。
フローガは不意に足元で倒れているイディックに目をやる。
「……?」
おかしい。フローガはイディックから不穏な気配が感じられないことに気付いた。
気を失ってても、操られている間は異質な魔力を体に纏っているはず。しかし、彼からそれを感じない。
そして、もう一つ。アンジュの体からも魔力が溢れてあることに気付いた。
フローガと番になったことで魔力が増えたアンジュ。そしてこの異様な空間に彼女の聖女としての力が反応しているのかもしれない。
「…………いけるかもしれない」
「え?」
「アンジュ。お前なら、ここにいる全員を助けられるかもしれない」
「本当ですか!?」
アンジュの問いに、フローガは頷く。
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