男装オメガと獣人アルファ~純白の聖女と漆黒の暗殺者は何色の花を咲かす~

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
69 / 78

第69話「呪い」

しおりを挟む



 その後、リーヴェは結婚し、その翌年には子供を身籠った。
 生まれてきた子供、オリビアにも聖女の力が宿った。このまま、アルクス国は一生聖女として生まれた女性をずっと贄にしていく。
 バレックは元々洗脳魔法に長けていた。
 その魔法を強化して魔物を操れるように修業をし、リーヴェと別れてから七年経った雪の降る日に二人は再会した。

「約束、果たしに来たよ」

 玉座に座るリーヴェの背後から聞こえた声に、彼女は静かに目を閉じた。
 この日を来ないでほしいと思いながら、ずっと待っていたのかもしれない。もう一度、最愛の人に会える日を。

「……ええ、約束ね」

 リーヴェが微笑むと、背後に現れた暗闇から伸びた腕が彼女の胸を貫いた。
 周囲からすれば、突然女王の胸から腕が生えてきたようにしか見えない。
 噴き出す血が彼女の真っ白なドレスを染め上げ、遅れて皆が悲鳴をあげる。それと同時に、城内や国全体に魔物が一気に蔓延り、次々に人が死んでいく。
 生きている人間がいなくなった玉座の間で、バレックは大事にリーヴェの体を抱きしめる。

「……約束、遅くなっちゃった」
「…………もう、忘れた、と、おもって、た……」
「まぁさか。生まれて初めて修行とかしたんだよ。本気でこの国を終わらせるために」
「ふふ……すごい、ね……本当に、アルクス国を終わらせちゃった……」
「凄いでしょー?」
「じゃあ……私も、約束……わたしの、こころ……あげるね」
「うん」
「その瞬間、あなたに、呪いが……かかる……もう、一生、聖女の力を、持つ者には触れられない……」
「何それ、変な呪い」
「私以外の、聖女に近付かないように……」
「…………ああ、逃げたんだ、君の娘。なに、もしかしてこの国を復興させようとか企んじゃう? それはちょっと……嫌だな……俺が七年もかけて頑張ったのにさぁ」
「ふふ……私以外の、子を、みがわりにも、しないでね……あなたのせいじょは、わたしだけ、でしょう?」
「もちろんだよ、俺だけの聖女様。君だけを愛してる」

 バレックはリーヴェに口付け、彼女の心臓を抉り出し、そのまま飲み込んだ。
 その瞬間、バレックの体には呪いが掛かる聖女であるリーヴェの遺体に触れているだけでも全身に激痛が走る。それは彼女の体を放しても続く。聖女の心臓を喰らったことで、常に彼女の魔力が纏わりついているせいだろう。
 激しい痛みに耐えながら、バレックはリーヴェの亡骸を抱きしめたままアルクス国を出た。
 この痛みは、彼女が自分のそばにいる証。それを受け入れ、バレックは一故郷へと戻った。聖女の魔力の影響で見た目も若返り、自分の魔力も変化した。変装魔法を使えば誰にも正体はバレない。
 おまけに洗脳魔法のおかげで簡単に元から住んでいたかのように入り込むことも出来た。
 次の目標は、逃げたオリビアを探すこと。アルクス国を二度と復興させないように、聖女という存在をこの世界から消し去る。
 リーヴェを苦しめた聖女という存在を。

 そして、狼族で過ごすこと十数年。バレックは自身の魔力を強化するために先代頭領である実の兄を殺し、命の石を奪った。
 その足で、バレックは里の住民を洗脳して探させていたオリビアの元へと向かう。
 命の石で魔力を強化しても、呪いの力には勝てず、オリビアに近付いただけでより激痛が体を支配する。動くことも出来なくなったバレックは魔物を洗脳してオリビアを殺し、クロウリーを瀕死に追い込んだ。
 そのときはまだ彼女に娘がいることに気付いていなかったバレックは、前々から住処にしようと狙っていたリヴァリス魔法学園男子校の地下を根城にした。

「そっからはご存じのとおりって感じ? 君のお兄さん唆してぇ、この学園呼んでぇ、みたいな?」

 全てを話し終えたバレックはスッキリしたとでもいうような顔を皆に向けた。
 語られた真実に、もうクルクスは言葉が一つも出てこなかった。膝を付き、俯いたままピクリとも動かない。
 アンジュとフローガも、どう反応知ればいいのか悩んでいる。アルクス国が滅んだのは、もはや女王の望みでもあった。狼族のことに関しては、完全にバレックの望みのために巻き込まれたとしか言いようがない。
 真相がどうであろうと、彼のした行動は許されることじゃない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

処理中です...