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第23話 おはよう。夢から覚めました。

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「……う、ん」
「兄さん!」
「……エイ、リ」
「よかった……よかった、目を覚まして……」

 目を覚ますと、見慣れた天井があった。
 涙目で俺に抱きついてきたエイリの頭を撫でながら、小さく息を吐く。
 そうか、夢か。懐かしい、白瀬俊介だった頃の思い出。俺が調子に乗ったせいで、今こうなってるんだよな。

「……ゴメン」
「何が?」
「昔のこと。俺、お前の言う事聞かずに突っ走って、死んじまっただろ」
「そんな昔のこと……確かに無茶だとは思ったけど、僕としては結果オーライだし、気にしないよ」
「……そこはむしろ気にしてほしかった」

 なんか申し訳なく思ってた俺がアホみたいだな。
 そういえばコイツ、元の世界に戻りたくなかったとか言ってたし。
 俺の反省、もう終わり。むしろ昔の自分を責めたいね。俺の勝手な行動のせいで元の世界に戻るチャンスを失ったんだから。俺のバカ。バカバカ。

「……そういや、俺どれくらい寝てたんだ?」
「三日だよ」
「三日!?」
「全然起きる気配がなくて、心配したよ……お父さんとお母さんも心配してたけど、今日はどうしても抜けられない会議があるって朝から出掛けたよ」
「そ、そうか……俺の怪我のこと、なんて言ったんだ?」
「……言ってない。どう説明していいか分からなくて、黙ったまま」
「そうか。そうだよな……」

 さすがに天族に殺されかけたなんて言えないよな。かと言って、こんな腹に穴開けられた理由なんて思いつかないし、黙ってるのが正解なのかな。

「それより、これからどうするの? 召喚が出来ないと分かったら、また天族がここに来るよ」
「だろうな……」

 両親に迷惑もかけられない。ただでさえ今は魔物のことで忙しくしているんだ。
 魔物退治か。昔の、前世の俺だったら迷わず行くんだけどな。今の俺はどこまで戦えるんだろう。

「……もしかして、魔物退治に行きたいとか考えてない?」
「分かるか?」
「長い付き合いだからね。君が兄さんになる前からずっと一緒だったんだから……」
「なぁ。勇者の力がない俺で、どこまで戦える?」
「……はぁ。本当はこういう話をしたくないんだけど、仕方ないか」

 エイリがため息を零しながら、ベッドに腰を下ろした。

「兄さんは城の一般兵より強いよ。家族の中では確かに一番弱いけど、それは単純に両親が強すぎるせい。それから、今の君の体は何の経験も積んでいないからレベルが低いだけ。君の魂自体は勇者のときと何も変わらないんだ、魔物を何体か倒していればすぐに強くなれるよ」
「本当か!?」
「うん。これを言ったら君は戦いに行こうとするから黙ってたけど……魔物をどうにかしないとまた天族が何かしてくるだろうし、しょうがないね」
「よし、そうと決まればまた魔物退治の旅だな! あーでも親になんて言えば……」

 さすがに素直に言ったら止められるよな。
 でも城の兵や騎士達だけに任せておけない。俺にだってやれることがあるなら、やりたい。

「……わかった。その理由は僕が考える。その代わり、僕も一緒に行くからね」
「は!? お前が出てきたらバレるかもしれないだろ?」
「暴れてる魔物を制圧するなら僕がいた方が早いでしょ。凶暴化してる理由も気になるし、勇者様にはサポートの魔術師が必要だろ?」

 エイリが魔王だってバレるリスクがあるから俺一人で行こうと思ってたけど、正直助かる。
 コイツの気持ちを知った上での二人旅ってなんか怖いけど、仕方ないよな。


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