23 / 24
第23話 おはよう。夢から覚めました。
しおりを挟む「……う、ん」
「兄さん!」
「……エイ、リ」
「よかった……よかった、目を覚まして……」
目を覚ますと、見慣れた天井があった。
涙目で俺に抱きついてきたエイリの頭を撫でながら、小さく息を吐く。
そうか、夢か。懐かしい、白瀬俊介だった頃の思い出。俺が調子に乗ったせいで、今こうなってるんだよな。
「……ゴメン」
「何が?」
「昔のこと。俺、お前の言う事聞かずに突っ走って、死んじまっただろ」
「そんな昔のこと……確かに無茶だとは思ったけど、僕としては結果オーライだし、気にしないよ」
「……そこはむしろ気にしてほしかった」
なんか申し訳なく思ってた俺がアホみたいだな。
そういえばコイツ、元の世界に戻りたくなかったとか言ってたし。
俺の反省、もう終わり。むしろ昔の自分を責めたいね。俺の勝手な行動のせいで元の世界に戻るチャンスを失ったんだから。俺のバカ。バカバカ。
「……そういや、俺どれくらい寝てたんだ?」
「三日だよ」
「三日!?」
「全然起きる気配がなくて、心配したよ……お父さんとお母さんも心配してたけど、今日はどうしても抜けられない会議があるって朝から出掛けたよ」
「そ、そうか……俺の怪我のこと、なんて言ったんだ?」
「……言ってない。どう説明していいか分からなくて、黙ったまま」
「そうか。そうだよな……」
さすがに天族に殺されかけたなんて言えないよな。かと言って、こんな腹に穴開けられた理由なんて思いつかないし、黙ってるのが正解なのかな。
「それより、これからどうするの? 召喚が出来ないと分かったら、また天族がここに来るよ」
「だろうな……」
両親に迷惑もかけられない。ただでさえ今は魔物のことで忙しくしているんだ。
魔物退治か。昔の、前世の俺だったら迷わず行くんだけどな。今の俺はどこまで戦えるんだろう。
「……もしかして、魔物退治に行きたいとか考えてない?」
「分かるか?」
「長い付き合いだからね。君が兄さんになる前からずっと一緒だったんだから……」
「なぁ。勇者の力がない俺で、どこまで戦える?」
「……はぁ。本当はこういう話をしたくないんだけど、仕方ないか」
エイリがため息を零しながら、ベッドに腰を下ろした。
「兄さんは城の一般兵より強いよ。家族の中では確かに一番弱いけど、それは単純に両親が強すぎるせい。それから、今の君の体は何の経験も積んでいないからレベルが低いだけ。君の魂自体は勇者のときと何も変わらないんだ、魔物を何体か倒していればすぐに強くなれるよ」
「本当か!?」
「うん。これを言ったら君は戦いに行こうとするから黙ってたけど……魔物をどうにかしないとまた天族が何かしてくるだろうし、しょうがないね」
「よし、そうと決まればまた魔物退治の旅だな! あーでも親になんて言えば……」
さすがに素直に言ったら止められるよな。
でも城の兵や騎士達だけに任せておけない。俺にだってやれることがあるなら、やりたい。
「……わかった。その理由は僕が考える。その代わり、僕も一緒に行くからね」
「は!? お前が出てきたらバレるかもしれないだろ?」
「暴れてる魔物を制圧するなら僕がいた方が早いでしょ。凶暴化してる理由も気になるし、勇者様にはサポートの魔術師が必要だろ?」
エイリが魔王だってバレるリスクがあるから俺一人で行こうと思ってたけど、正直助かる。
コイツの気持ちを知った上での二人旅ってなんか怖いけど、仕方ないよな。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
食欲と快楽に流される僕が毎夜幼馴染くんによしよし甘やかされる
八
BL
食べ物やインキュバスの誘惑に釣られるお馬鹿がなんやかんや学園の事件に巻き込まれながら結局優しい幼馴染によしよし甘やかされる話。
□食い意地お馬鹿主人公受け、溺愛甘やかし幼馴染攻め(メイン)
□一途健気不良受け、執着先輩攻め(脇カプ)
pixivにも投稿しています。
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる