5 / 24
第5話 弟は完璧超人だけど正体は魔王
しおりを挟む「……お前、普通の兄弟はこんなことしないぞ」
「母さんは僕が兄さんにキスするの見て可愛いわねって言ってたよ?」
「それはガキの頃だけだろ!」
「兄さんだって嫌がっていないし」
「とっさのことで反応できなかっただけだ!」
くそ。幼い時に甘やかしすぎた。
俺は冷静になろうと家の外に出た。そう言えば俺、急に記憶を思い出したせいで忘れてたけど親に頼まれて薪割りをしないといけないんだった。
なんでリビングでお茶飲んでるときに思い出したんだろう。特にキッカケになるような出来事があったわけでもないのに。
「手伝うよ、兄さん」
「あ、ああ……」
エイリは俺の後ろを付いてきた。こうしていれば普通の弟なんだけどな。
頭も良くて、容量も良くて、自慢の弟。勉強も運動もなんでもそつなくこなせる完璧な奴だ。そういえばコイツは昔からそうだったな。前世のときから何でも出来る奴だった。だからよく宿題とか見せてもらってたな。
大学に入ってからも色々と頼ってた。まさか俺に気が合ったとは知らなかったけど。しかも彼女も取られてたし。
「……そういえば。お前、前に中央の学園《アカデミー》から招待受けてたよな。断ったのって、やっぱり魔王だから?」
ふと思い出し、俺は薪を運んでるエイリに問いかけた。
学園《アカデミー》はずっと遠くの大陸、中央大陸《セントラル》にあるミルディア国が世界中から優秀な魔導士や騎士を育てるために運営している教育機関のこと。
俺たちの父親は元々中央の騎士団長で俺らが生まれた時に子育てに集中したいとかで現役引退したんだ。そんで戦争とかが少ない山奥の田舎に引っ越した。おかげで俺は仕事に行くにもいちいち山を下りなきゃいけなくて面倒くさい。
エイリが生まれたばかりのとき、父の知り合いの魔導士がコイツの魔力値が凄いって言ってたのは覚えてる。大きくなってから何度か学園に来ないかって推薦状が毎月来てたけど、僕は興味ないって断り続けてたんだよな。当時の俺は勿体ないってずっと言ってたけど、今なら納得する。
「その通りだよ。今は魔力を隠してるけど、勘の良い人には気づかれちゃうし、魔法なんて使ったら一発でバレちゃうよ。この世界で混沌の魔力を持っているのは魔王だけだもんね」
「だよな。でも、小さい頃はよくバレなかったな」
「一応生まれてくる直前に隠ぺいの魔法をかけておいたからね。いくら僕でも赤ん坊の時に高度な魔力操作は出来ないから。ただ魔力資質は隠せても魔力量までは抑えられなかったね」
なるほどな。俺も一度だけ誘われたけど、あれは単純に父の子供ってだけのコネ入学だったから断った。俺は軍人になるつもりも魔法を学ぶつもりもない。勉強嫌いだし。そこはアルトも俺も一緒だな。
てゆうか、やっぱりアルトとして生きてきた時間を思い出しても、ほぼ俺なんだよな。名前が違うだけ。魂が同じだからだろうか。それとも。
「なぁ、エイリ」
「なぁに?」
「俺とアルトの性格が同じなのってお前が何かしたの?」
「何かって? 魂を弄ったとかそう言いたいの?」
「別にそんな嫌な言い方するつもりはねーよ」
「ふふ。残念ながら、僕は何もしてないよ。てゆうか、何もしていないからこそ、君は君のままなんだよ。育った環境が違うってだけで、基本的な性格は魂に刻まれる。僕は寸分の狂いもなく君の魂を修復したからね」
「ふーん」
「だって、僕は君のことが好きだから。少しでも変わっちゃたら困るもの」
「ふ、ふぅーん」
いちいち好きとか言うのやめてくれないかな。もう兄弟としての好きって意味に聞こえないから困る。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
食欲と快楽に流される僕が毎夜幼馴染くんによしよし甘やかされる
八
BL
食べ物やインキュバスの誘惑に釣られるお馬鹿がなんやかんや学園の事件に巻き込まれながら結局優しい幼馴染によしよし甘やかされる話。
□食い意地お馬鹿主人公受け、溺愛甘やかし幼馴染攻め(メイン)
□一途健気不良受け、執着先輩攻め(脇カプ)
pixivにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる