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二十話 【将来】
しおりを挟む「結局ラーメンかよ」
「服買って金ねーんだよ……」
そんなことだろうと思ってたよ。
まぁ腹に溜まれば何でもいいか。ラーメンは嫌いじゃないし、人気のある店だからそれなりに美味い。
やっぱ豚骨だな。油そばと悩んだけど、今日は普通にラーメンの気分。
「餃子追加」
「まだ食うのかよ!?」
「朝から食ってないんだぞ。誰のせいだと思ってんだ」
「……すみませーん! 追加良いですかー!!」
透把は店員を呼んで追加の注文をした。
ついでにレバニラと炒飯も頼んだら、透把がグッと息を呑んだ。文句言いたいけど言えないんだろうな。
「お前、本当によく食うな……」
「腹減ってるからな」
「そんだけ食ってよく太らないな」
「その分動いてる」
主にセックスだけどな。
たまに一日に数人相手にすることもあるし。結構体力消耗するんだよな。
まぁ偏ってるから完全に不健康ではあるだろうけど。
多分俺、早死にする。酒飲みまくって、煙草吸いまくってるから。
「もうちょっと健康的に生きようとか」
「思わない」
「……即答かよ」
それはもう人生をやり直さないと無理だ。
今の俺は、もう根っからのクズ。これは一生かかっても治らないんだよ。
てゆうか、別にそれで構わない。良いことだとは思わないけど、悪いとも思ってない。
これで誰かに迷惑なんて掛けてない。いや、親は困らせてるけど。
まぁ、でも他人様に迷惑は掛かってない。
俺は基本受け身だ。向こうが俺を買ってるだけで、こっちから誘ってる訳じゃない。
たまに客の彼氏とかが出てきて、浮気だ何だってそいつらのいざこざに巻き込まれることもある。でも俺には関係ない。
だって俺は仕事してるだけだから。
そこに何の感情もない。浮気にもならない。
喧嘩になっても負けない自信があるから平気だし。
「まぁ、俺みたいな奴はさっさとくたばった方が喜ばれるだろ」
「んな訳ないだろ」
お前も即答か。
単に親友が死んだら悲しいって意味なんだろうけど、素直に嬉しい。
俺が生きていられるのは、お前がいるからだな。
もしお前に俺の気持ち知られたりして嫌われでもしたら、そしたら死んでもいいや。
「お前が死んだら俺だけじゃなくて、お前のお母さんも悲しむぞ」
「……そうだな」
あ、そこがあったか。
確かに母さんを泣かせることになるな。それは最大の親不孝だ。
仕方ない。せめて母さんよりは長生きしておこう。
そっから先のことはどうでもいいや。
てゆうか、そこまで生きていられるか分かんないけど。絶対に早死にするから。
「俺、何だかんだで志貴は長生きするかもって思ってる」
「はぁ?」
「なんていうか、図太いし」
「……そんなんで長生き出来たら誰も苦労しないだろ」
あれか、病は気からってことか?
確かに気持ちも大事かもしれないけど、それと寿命は関係ないだろ。
「まぁ、生きれたらいいなってことで」
「軽いな、相変わらず」
「そんなもんだよ」
「そうか?」
「お前はどうなんだよ」
「俺? 俺はそりゃあ……」
そう言って、透把は顔を赤らめた。
はい、察し。どうせ、あの女のこと考えてるんだろ。幸せ家族計画しちゃってるんだろ。ウゼーな。
良いよな、そうやって良い未来を簡単に想像できるって。
まぁ、これ言ったら僻みにしかならないけど。と言っても、幸せになりたいとかそんなこと考えたことないんだけど。
「……そうだな、子供は二人が理想かな」
「そこまで聞いてねーし」
「と、とにかく俺は自分の子供が自立して孫を見せるまでは死ねない!」
「はいはい」
大体想像ついてたし聞かなきゃよかった。
ラーメン、もう一杯追加してやろうか。
まぁ、これ以上食ったら払えなくなりそうだからやめておくか。俺が立て替えなきゃいけなくなる。
「なぁ志貴」
「あ?」
「俺の子供、見るまで死ぬなよ?」
何だよ急に、そんなガチトーンで言わなくても。まさか本気で俺が死ぬと思ってんのか?
「お前いわく、俺は図太いからそう簡単に死なないらしい。良かったな、もし女が生まれたら嫁にしても良いぞ」
「お前にだけはやれない」
「親友に向かって随分な言い草だな」
「お前と親友やれてんのは俺くらいなものだぞ」
その通りだ、否定しない。
でも、お前の血を継いでんなら女でもイケる自信ある。歳の差半端ないけど、俺なら落とせる。
良かったな。お前のおかげで俺は孤独死せずに済むかもしれないぞ。
まぁ、お前がいつ結婚するかも分からないけどな。どうせあの女にはフラれるし。
「可愛い子産めよ」
「産むのは俺じゃないけどな……」
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