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第11話 「わからないこと」
しおりを挟む変だ。この気持ちは、何て名前なんだろう。
昨日、けーごからめーるが来なかった。それだけで凄く寂しかった。寂しくて、寂しくて、涙が出そうだった。このけーたいが壊れちゃったんじゃないかって。でも自分からめーる送るのは何でか出来なかった。
何だか怖くて、もしかしたら忙しいだけかもしれないし邪魔したらいけないと思った。
この寂しいとは違う気持ちはなんだろう。分からない。胸の奥がモヤモヤして、何か落ち着かない。
『昨日はメール送れなくてごめんね。バイト終わるのが遅くなっちゃって』
だけど、お昼になってけーごからめーる来た瞬間は本当に泣くかと思った。ちょっと目がうるっとしたもの。
こんな風になるの初めて。心がドキドキして体を動かしてないと全身の違和感でどうにかなっちゃいそう。
この気持ち、どうしたらいい? どうしたら治る?
『ねぇ、圭吾。私、なんか変』
『変? 何があったの?』
今日はけーごが休みだから、ずっとめーるしてる。
色んなこといっぱい話して、気付けば夕暮れ。沢山質問してばかりだけど、けーごは迷惑に思ってないかな。大丈夫かな。
『あのね。私、圭吾とお話してると楽しい。でも、昨日は寂しかった』
『うん、ゴメンね。バイト終わったらメールするって言ったのに』
『ううん。それはいいの。圭吾いそがしい。私、忙しくない。だけどね、なんだか怖いと思ったの』
『こわい?』
『そう。なんでかな。待ってるだけなのに、もう終わっちゃうような感じがしたの』
『俺は終わらせるつもりないよ? 呉羽とのメールは楽しいからね』
『でも、きっとずっとは無理』
『どうして?』
だって、私は鬼だから。
ずっとは無理。いつかは終わりにしなきゃいけない。
私もいつか大人になったら人間界に行けると思う。でも、そうなってもけーごには会えない。だって、鬼は人間に対して特別な感情を持っちゃいけないんだもん。
多分、けーごに直接会ったら特別になる。初めてのお友達だから。もっと大切になる。
それは、ダメ。今の距離感が良いんだ。だって私は嘘が下手だって苓祁兄が言ってたから、鬼だってことを隠し通せないかもしれない。
このめーるだって、きっとずっとはダメだと思う。分からないけど、そんな気がする。
でも、だけど、大人になっても続けられるのかな。私がもっと大人になれば、もっと色んなこと知れば、嘘も上手になるのかな。
そうしたら、鬼だってことバレないようにめーるも続けられる?
『わかんない。大人にならなきゃ、わかんない』
『そう? でも、そうだね。俺も大人になってみないと分からないかも』
『大人って、むずかしい。わかんない』
『俺も分からないよ』
けーごにも分からないんだ。
大人って難しいな。どうしたら大人なんだろう。鬼の世界では自分の力を制御できれば大人ってことになるんだけど、私にはまだそれは出来ない。
外の世界に出ていいのかって迷いもある。そういう気持ちが、いけないのかな。
『じゃあ、圭吾と一緒だね』
『そうだね。俺達、まだまだ子供だね。まぁ俺はそれじゃあダメなんだけど』
『ダメなの?』
『年齢的にね』
『圭吾、私より先に大人になる?』
『そうなるかな』
『そっか。私、追いつけるかな』
『呉羽は俺なんかよりしっかりしてるから、すぐに大人になるよ』
『だといいなぁ』
大人。
大人って、なんだろう。子供と大人の差って何だろう。分からないことがいっぱい。
けーごと話してると色んなことを知れるけど、分からないこともいっぱい出てくる。今まで考えようともしなかったこと。
人間界のこととか、大人になるってこととか。いっぱい、分からなくなった。
『圭吾は、大人と子供どっちがいい?』
『それも難しいな。子供の方が自由でいいなって思うけど、大人じゃないと出来ないことも沢山あるし』
『大人じゃないと出来ないこと?』
『うん。沢山あるでしょ? 子供だと色々制限かかるし』
それが大人と子供の差、なのかな。
なんだか余計に分からなくなってきた。
『大人の方が自由?』
『そうでもないよ。責任とか色々出てくるし』
『責任、自由じゃない』
『まぁ、そうだね。責任は重たいものだから』
『むずかしい』
『そうだね。俺もうまく説明できないや』
苓祁兄に聞けば分かるかな。
教えてくれるかな。
『私、大人になっても子供のままでも圭吾とはずっとお友達でいたいな』
『うん、俺も』
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