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第81話
しおりを挟む何か今日は色々ありすぎて気疲れしちゃったわ。
グランがいなくなった後、暫く隣の様子を盗み聞いていたけど、二人の間に進展もなさそうなので誰かに気付かれる前に帰ることにした。
ゲームでの印象も込みだけど、グランは自分で誰にも言わないと言ったんだからその言葉を違えることはない。
そこは心配していないけど、センが仮面の男に対してどう思っただろう。シャルが変な男に惚れてる変な姫って印象付いちゃったらどうしよう。フラグ立てるどころじゃないわ。
ササッと着替えを済ませ、外に待たせてあるノヴァと合流した。ついでにツヴェルのところに寄っておこうかな。お礼もしておきたいし、グランのことも聞いておきたい。
「ノヴァ、ツヴェルは今どこ?」
「がうがう」
「本当? じゃあ、お願い」
どうやらさっきと同じ場所にいるみたい。それなら人もいないだろうし丁度いいわ。
裏の森の方へ行くと、目を閉じて耳を澄ませているツヴェルがいた。
なんというか、絵になるわね。ゲームなら一枚絵が出てきてもおかしくない。彼は目で見るよりも耳で聞いた方が色んな情報を得られるんだろうな。
「もう用事は済んだのですか?」
「あ、やっぱり気付いてた」
その状態だと私の魔法特性も無意味ね。私は人の目を欺くものだから、音だけは誤魔化せない。やっぱり彼を味方にしてよかった。
「一応帰る前にお礼を言っておこうと思って。服、ありがとうね」
「いいえ、どういたしまして。それで、センテッド王子はどうでした?」
「まぁ、普通に良い人だったわね。だからこそシャルがああなっちゃって申し訳ないというか……」
「え?」
「いや、こっちの話。それより、一緒にもう一人王子が来ていたのね?」
「ああ、グラン王子ですか。最近は社会勉強ということで行動を共にすることが多いそうですね」
「そうだったんだ……実は、盗み聞きしてるときに彼と会っちゃって……」
「え!?」
そのときの状況を説明すると、ツヴェルは少し驚いたような呆れたような、とにかく複雑そうな表情を浮かべた。
私だって驚いたんだから。全く気配感じなかったし。
「そ、そう、ですか……僕もグラン王子とは今回初めてお会いしたので、彼がどういう人なのか分かっていないのですが……とりあえず貴女がヴァネッサベルだということがバレていないのなら、大丈夫でしょう」
「変な人扱いされちゃったけどね」
「そりゃあメイドが盗み聞きしていたら誰でもそう思うでしょうね。向こうから追及されない限りは僕は貴女のこと……そのメイドのことは全く知らないことにしておきます。一応ナイトには報告しますよ」
「お願いします。それと、警備の方はどう?」
「特に問題はないですね。何もなさ過ぎて、怖いくらいです」
結界を張ったことで向こうも攻撃しにくくなってるのかしら。
そうなると、次に考えられるのは直接攻撃。魔術師の方から来てくれるんだったら探す手間も省けるし、逃がさずに捕まえられそうなんだけど。
でも、なんかそれってシャルを囮にするみたいでちょっと嫌だな。城かハドレー国に入ってきた時点で捕まえることが出来ればいいけど、そんな簡単にはいかないわよね。
「…………子供、か」
「なに?」
「いえ。ナイトが言っていた言葉を思い出して……もし本当に相手が子供なら、今頃は上手くいかなくてイライラしてるのかもしれないな、と」
「……そのうち、キレて暴走するかも?」
「あり得ない話ではないと思います。どうか、貴女も気を付けてくださいね」
「ええ、そうね」
何をしてきてもおかしくない。
そう思って行動した方が良いわね。
私はツヴェルに別れを告げて帰宅した。
相手がイライラしてる。キレて暴走する可能性か。何だか、嫌な予感がして仕方ないわね。
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