悪役令嬢ルートから逃れるために家出をして妹助けたら攻略対象になってました。

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
上 下
79 / 108

第79話

しおりを挟む


「センテッド王子。今回は何故ハドレーに?」
「実は仕事で近くに来ていまして。それでここ最近、ハドレー国の姫君が何度も命を狙われていると聞きまして……チェアドーラだけでなくリカリットやヴィンエッジも協力しているというので、我が国も何か力になれないかと思ったのです」

 まだ顔を合わせたばかりみたいね。くそ、私に透視の力でもあれば中の様子を見れるのに。どうして私は気配を消すことしか出来ないの。ちょっと空気になるだけじゃない。そう考えるとしょぼく思えて悲しいんですけど。

「何、隣の部屋が見たいの?」
「ええ。シャルがどんな顔してセン王子と話してるのか見たいじゃない」
「悪趣味だね、あんた」
「そんなこと…………は?」

 私、今誰と話しているの。ノヴァは外に待たせているし、ツヴェルの声でもない。もちろんナイトでもない。
 じゃあ、誰。私の隣で一緒になって壁に耳を当ててる少年は。

「…………あ、あの」
「何? 話聞かないの?」
「……あ、あなた……」

 あれ。この子、知ってるわ。私の記憶よりも少し幼い感じがするけど、君100に出てくる最年少王子。

「……グ、グラン王子」
「あれ、俺のこと知ってるの?」

 実際のゲームのストーリーより一年前だから若干雰囲気が違うのかしら。
 グラン・デイル・フェルフローデ、十一歳。フロリック国の隣にある小国の王子様。センテッドと幼い頃から仲が良く兄弟のように育ったらしい。センテッドルートだと恋敵として出てくるんだけど、生意気な年下王子が一生懸命背伸びしてる様子が可愛くて人気があったのよね。
 でも、まさかここで出てくるとは。気付かなかったけど、センテッドと一緒にハドレーに来ていたのね。これで君100の王子様は全員出てきたことになる。
 それにしても困ったわ。この状況、どう説明すればいいのかしら。

「ねぇ、変なメイドさん」
「え、あ、私?」

 そうか。今はメイドの格好してるんだった。怪盗スタイルじゃなくて良かった。まだ言い訳もできるわね。どっちにしても怪しい人なのは間違いないんだけど。

「こんなところで何してるの?」
「え、っと……シャルロット姫の様子が、気になって?」
「さっき、シャルって呼び捨てにしてたじゃん。セン兄と話してる様子を見てどうすんの?」
「…………その、他国の王子様に失礼がないか確認、しようかなって……」
「アンタの方が失礼なんじゃないの?」
「ごもっともです……」

 アカーン。どうしたらいいの。上手い言い訳が思いつかないわ。このまま不審者として突き出されたらどうしよう。魔術師を捕まえるどころじゃなくなっちゃうわ。
 どうしよう。どうすればいいの。

「アンタ、本当にここのメイド?」
「ど、どこからどう見ても可愛いメイドさん、じゃないですか」
「メイドは主人の部屋を聞き耳立てたりしないと思うけど」
「…………私のこと、どうします?」
「俺がここで叫んだら、困る?」
「困りますね」
「ふーん。じゃあ、しない」
「は? なんで?」
「怪しいけど、悪い人って感じはしないし。それよりほら、セン兄が話してるよ。聞かないの?」
「…………聞く、けど」

 この子、何を考えてるのかしら。確かグランの魔法特性は水。水を操作して攻撃や防御をする万能キャラ。ツヴェルやナイトみたいに嘘を見抜いたりする力はない。
 子供だから危機感とかないのかしら。とりあえず、予定通り聞き耳立てましょう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...